開幕1カ月、ここまでの「サプライズ」10選

April 27th, 2025

開幕から約一ヶ月を迎えた2025年のMLB。もちろんまだまだこれから続く長いシーズンの一部でしかないものの、この期間の成績は今後に向けて注目に値する。特に、その活躍が予想されていなかった場合はなおさらだ。

今回は2025シーズン、開幕から1カ月の「サプライズ」を10個紹介する。

※データはすべて現地金曜日終了時点のもの。

1. ホームラン王競争に意外な顔ぶれ

開幕からのホームランランキングには、マイク・トラウトアーロン・ジャッジフェルナンド・タティスJr.といった「おなじみの顔」が並んでいる。しかし、同時に意外とも言えるメンバーも顔を揃えているのがここまでの特徴だ。

コービン・キャロル(Dバックス)、カル・ローリー(マリナーズ)、タイラー・ソーダーストロム(アスレチックス)、そしてトミー・エドマン(ドジャース)が、それぞれ8本以上の本塁打を記録。

特にキャロルは、過去2シーズンでホームランランキング46位以内に入ったことすらなく、ソーダーストロムもメジャー通算12本塁打と実績は乏しかった。エドマンに至っては、キャリアハイがわずか13本だった選手だ。

唯一、カル・ローリーだけは過去2年連続で30本以上を放っており、多少の期待はされていたが、それ以外の名前はまさにサプライズ。この勢いがどこまで続くのかは見ものだ。

2. 隙がなくなったピート・アロンゾの打撃

2019年に新人王を獲得し、53本塁打でリーグを席巻したピート・アロンゾ。これまでは「長打特化型」のイメージが強かったが、2025年はまったく異なる打撃スタイルを披露している。

ここまで開幕から打率.333、OPS1.109という驚異的な成績をマーク。三振率が過去最低で四球率が過去最高、さらに打球の角度や質問キャリアハイの水準を見せており、総合的な打球内容の大きな向上が見られる。

単に一発を放つだけではなく、安打や二塁打も積み重ねる隙のないスラッガーへと進化。エース格のファン・ソトがやや不調(打率.245)なだけに、メッツにとってこれほど心強い存在はない。

メジャー5年間で通算打率.244、OPS.723と平均的な成績にとどまっていたパヴィン・スミス。昇格と降格を繰り返し、完全にレギュラーには定着できずにいた男が、ついに大輪の花を咲かせた。

今季は打率.365、OPS1.186というリーグトップ級の数字を記録。特にBABIP(Batting Average on Balls In Play:インプレー打球がヒットになる確率)が.514という異常なまでに高い値を示しており、運に助けられている面もあるが、それを補って余りある成長も見られる。

スミスは今季、ハードヒット率(打球速度が95マイル=153km/h 以上だった打球)が48.8%と大幅に向上。四球率もキャリア最高の19.2%を記録しており、仮に打率が落ちても高い出塁率と長打力を維持できそうだ。

4. タイラー・マーリー、圧巻の復活

2年でわずか8先発、トミー・ジョン手術も経験したタイラー・マーリーが、見事なカムバック。レンジャーズ移籍後、開幕から5試合で防御率0.68、被打率.112という圧巻の投球を披露している。

特筆すべきはその総合力の高さだ。ストレート、スプリット、カットボールのすべてで被打率.156以下。特にカットボールでは未だ被安打ゼロを誇っている。平均球速147.6キロ(91.7マイル)と速い部類ではないにも関わらず、打者をねじ伏せる技術は一級品だ。

5. ミッチェル・パーカーのブレイク

ナショナルズの25歳左腕ミッチェル・パーカーも、予想外のブレイク組だ。昨季は29先発で防御率4.29と目立った成績は残せなかったものの、今季は開幕から防御率1.39、被打率.167と投手陣トップの成績を残している。

ストレート、スプリット、カーブ、スライダーと4球種すべてで高い精度を誇り、先発ごとに六回以上を投げ抜く安定感も光る。4月22日にはオリオールズ相手に8回1安打無失点の快投を演じ、名実ともにローテーションの柱となった。

6. リーグ最強のカブス打線

シーズン前に、今季のMLB最強打線と予想されていたのはドジャースだった。しかし、ふたを開けてみれば、今その座についているのはシカゴ・カブスだと言えるだろう。

打率、安打数、出塁率、得点、OPS、盗塁数すべてでリーグトップ。カイル・タッカー(OPS1.031)を筆頭に、マイケル・ブッシュ(OPS.954)、鈴木誠也(OPS.910)、ピート・クロウ=アームストロング(OPS.882)、そして捕手カーソン・ケリー(OPS1.371)と、特定の選手に頼らない厚みのある打線となっている。

特に、1試合で5本塁打を放った4月18日のDバックス戦は今季のハイライトの一つだろう。

7. マーリンズ、まさかの快進撃

開幕前の各種予想で「ナ・リーグ最下位候補」と目されていたマーリンズ。それがここまで、プレーオフへの進出も予想されていたブレーブスやオリオールズよりも高い勝率を記録しているのだから驚きだ。

OPS.717はブレーブス、オリオールズ、フィリーズ、メッツ、レンジャーズ、アストロズといった強豪をも上回る数値。主砲マット・マービス(7本塁打、OPS.879)を中心に、外野陣も好調だ。.327という高BABIPによる「打球運」は大きいが、それでも大方の予想を裏切る結果をここまで残している。

8. 大混戦のア・リーグ西地区

同地区の全5チームの勝率が.500を超えたのは20年前。しかし、今年のア・リーグ西地区(アストロズ、マリナーズ、レンジャーズ、アスレチックス、エンゼルス)はその高いレベルでの順位争いが行われている。5チーム間のゲーム差はわずか2.5。開幕1カ月とは思えない混戦模様となっている。

サプライズとなっているアスレチックスとエンゼルスは打線が牽引する形に。リーグ4位のOPSを記録しているアスレチックスはジェイコブ・ウィルソンが打率.347、OPS+145と絶好調。

エンゼルスも健康体を維持しているトラウト(9本塁打)を中心に、シーズン序盤の捕手ローガン・オホッピー(7本塁打、OPS.872)と二塁手カイレン・パリス(5本塁打、OPS.861)の活躍がチームを支えている。

9. ドジャースに迫るパドレスとジャイアンツ

昨年からさらに戦力を強化したドジャースは開幕前、圧倒的な地区優勝候補と見なされていた。FanGraphの予想では、84%という圧倒的な地区優勝確率を持っていた。しかし、蓋を開けてみれば、パドレスとジャイアンツが互角以上に競る展開となっている。

パドレスはタティスJr.がMVP級の活躍(OPS1.038、2.1bWAR)を見せ、投手陣も快調。ジャイアンツはイ・ジョンフがMLB最多11二塁打、OPS.963と打線を牽引。さらなるサプライズとしてウィルマー・フローレスがここまで大活躍を披露している。そんな彼について最後に紹介しよう。

10. ウィルマー・フローレス、打点王に躍り出る

過去12年のキャリアで、リーグ打点王争いに絡んだことがなかったウィルマー・フローレス。それどころか、規定打席に達したシーズンもわずか2度のみと、主力と呼ぶことも難しいような状態だった。

それが今季は、開幕1カ月で堂々のMLB最多27打点を記録。最大の要因はその勝負強さだ。得点圏打率.387で、OPS1.119、7本の本塁打のうち4本は走者を置いた場面で放っている。また、本塁打以外では、シングルヒットでの打点(12)が目立ち、まさに堅実な仕事ぶりが光る。

今回取り上げたチーム/選手がこの調子を保つことができるのか?はたまた、違うサプライズが起きるのか?

主役たちの話題はもちろん、このようなストーリーにも目を向けることで、さらに深いMLBの魅力を感じられるだろう。