トレードされたばかりの投手が、新チームから提案された変更点について興奮気味に語るのを耳にするのは珍しくない。新しい球種。新しい握り。新しい球種構成。
そういったものがブルワーズの投手コーチであるクリス・フックを「狂わせる」のだという。
「こっちとしては『君がボールを投げることすら見たことがない!』という感じ。それだったら、改善案を提示する前にその投手のことを少しでも知って、情報をどう使いこなすかを知りたい。とりあえず会ってみないと」
フレディー・ペラルタとのトレードで内野手ジェット・ウィリアムズと共にメッツから加入した25歳の有望株、ブランドン・スプロートを例に挙げよう。スプロート(MLBパイプラインのランキングで球界100位、ブルワーズ5位の有望株)は、昨季終盤に習得したカットボールをオフに練習していた。
カットボールはブルワーズの得意分野だ。かつてコービン・バーンズ(現ダイヤモンドバックス)やクイン・プリースターが、カットボールを信頼できる武器に磨き上げたことで開花した。しかし、ブルワーズはスプロートのオフの練習を邪魔する代わりに、チームに合流するまで練習に取り掛からなかった。
同じことが27歳のシェーン・ドロハンにも当てはまる。ドロハンは2月上旬、ケイレブ・ダービンらの対価としてレッドソックスからカイル・ハリソン、デービッド・ハミルトンと共に加入。昨季は縦に落ちるジャイロスライダーを追加し、カットボールを多用して自己最高となる34.5%の三振率を記録したが、ドロハン(春季キャンプ開始時点でブルワーズの有望株ランキング30位)は、かつては多用していたチェンジアップを軽視していた。そしてこのオフ、チェンジアップの変化と感触を再発見することに集中した。
「人間ってそういうものだ。新人なら、相手に良い印象を与えたい。でも、長くプレーしていると、落ち着いて、自分が得意なこと、そしてここまで来られた理由をしっかりやらないといけない。投手として自分が何者なのかを理解し、それを貫くことが大切なんだ」とドロハンは語る。
ドロハンは27日(日本時間28日)、ホワイトソックスとのオープン戦で、2回無失点と上々のデビューを飾った。四回には3者連続三振も記録した。スプロートもこの試合で登板し、1回1/3で35球中23球のストライクを投げ、新しいカットボールも多投した。
両投手とも、ブルワーズの高く評価される投手育成部門が、2人が既に取り組んでいた課題を続けさせてくれたことに感謝していた。
「彼らは『すべてを変えよう』とは言わなかった。彼らは私が持っていたものをそのまま取り入れて、それをより良くしようとしている」と、スプロート。
ドロハンも「ここに来た時、彼らは『ありのままの自分でいればいい。自分のやるべきことをやればいい。詳細は後で話そう』と言ってくれた」と語る。
両投手は、あす28日(同3月1日)からそれぞれの登板のビデオを精査し、球団のコーチ陣やアナリストと協力しながら、次回登板までの数日間のプランを練り上げることで、詳細な調整を開始する予定だと述べた。これは非常に繊細なプロセスであり、2019年にアリゾナの複合施設を改修して、かつてメジャーリーグのクラブハウスだった場所を最先端の投球練習場に変えて以来、ブルワーズはそのことで知られるようになった。2019年は、フックがマイナーリーグの巡回投手コーディネーターからメジャーリーグの投手コーチに昇格した年でもあるのも偶然ではない。
それ以来、ブルワーズはラボからのデータとフィールドでの膨大な計測データを各投手に合わせたプランへと変換するシステムを改良してきた。そして、そのプランを選手にとって分かりやすく、納得のいくように伝えることが課題となっている。
「プロセスを進めていくうちに、私たちが何をしているのかが少しずつ漏れてきて、ある時点で『よし、座って話し合おう』という感じになる。そうすると、私はその投手のことをより深く理解できる『彼にはあれら全部は必要ない』と。あるいは、1、2、3は必要だけど、私たちの計画の4、5、6は必要ないことも分かっている」
「それが私たちのやり方なんだ。薬の投与量だ」
スプロートとドロハンが、その薬を飲むことを好むタイプの向上心の持ち主であることは明らかだ。しかし、まずは2人には落ち着く機会が与えられた。
「私の考え方が間違っていないというのは、本当に心強い。長年ここでプレーしてきたベテランのメジャーリーガーたちを彼らが見てきて、私を見て『君の持っているもの、そしてその思考プロセスが素晴らしい』と言ってくれるというのは、本当に心強い」とスプロートは言う。
「今、私は彼らが私に用意してくれたものを完全に信じ、それを実行することができる」
この日のオープン戦デビューは、2人の新人にとって良いスタートとなった。ドロハンは次を見据えている。
「1万人のファンがいても誰もいなくても、ピッチングするのはいつも楽しい。また投げられるのが楽しい」
