【マリナーズ6-3レイズ】シアトル/T-モバイルパーク、8月10日(日本時間11日)
前日に行われた永久欠番セレモニーのスピーチで、イチロー氏はマリナーズの選手たちにこう投げかけた。
「今年のチームには大きなチャンスがある。皆さんは強く、才能に溢れている。どうか才能を軽視しないでほしい。素晴らしいチームと、目の前に広がる大きなチャンス。勝利へのプレッシャーがあることは理解していますが、勝利は常に困難であり、プレッシャーなしには得られない。プレッシャーを受け入れ、そのプレッシャーの中で最高のパフォーマンスを発揮する方法を見つけてほしい」
続けて同氏は「もう打撃やレーザービームのような投球で君たちを助けることはできないが、私の意志と願いは常に君たちのためにある。私が毎日フィールドに来るのは、君たちがその瞬間に備えられるように助けたいからだ。君たちがその瞬間をつかめると確信している」と語った。
イチロー氏がともに51番を背負ったランディ・ジョンソン氏をキャッチャー役に始球式を行ったこの日、マリナーズの選手たちはこの言葉を体現する試合を見せた。
初回、主砲のローリーがライトへ45号2ランを放ち、幸先よく4点を先制。まだ8月にもかかわらず、ローリーはキャッチャーとしての1シーズンの最多本塁打記録を更新する勢いで本塁打を量産している。この本塁打で歴代2位の伝説的名捕手ジョニー・ベンチ(レッズ・1970年)に並び、残すは2021年にサルバドール・ペレスが放った歴代トップの48本塁打を超えるだけだ。
今季エースに台頭した先発のウーは、3点を失うも粘りのピッチング。再三ピンチを背負いながら、要所を三振で締め、終わってみれば6回3失点9三振の好投を見せた。その後、マリナーズは新加入のジョシュ・ネイラーの15号ソロなどで追加点を奪い、持ち前の強力ブルペン陣が無失点リレーでつなぎ、6-3でレイズを振り切った。
本塁打王レースを快走するローリーは「彼が私たちのことを特に取り上げて、希望を与えてくれたのは本当に素晴らしかった」とコメント。好投で勝利に導いたウーも「スピーチの合間を縫って、とても明確で前向きでありながら、同時にやる気を起こさせるような言葉で私たちに語りかけてくれたのは、本当に素晴らしいことだと思う。ダグアウトにいた全員がそう感じたはずだ」と、イチロー氏の激励に感謝を述べた。
そして、2安打1得点の活躍を見せたフリオ・ロドリゲスは「本当に胸に突き刺さった。目指す場所にたどり着くためには、多くの瞬間を逃してはならないからだ。本当に心に響いた。彼の言葉がどれほど重みを持つかは、選手なら誰もが分かっていると思う。彼は毎日それを実行しているから。彼は今もここで、毎日私たちのために練習に現れる。本当に心に響いたし、多くの選手が同じように感じていると思う」と、前日の同氏の激励について語った。
特にロドリゲスはマイナー時代からイチロー氏に師事し、チームで最も親密な関係を築いている“イチローの愛弟子”だ。過去と現在、そして未来をつなぐ架け橋としての彼らの姿は、いつ見ても色褪せない魅力を放っている。
ロドリゲスは重ねてこう語った。
「一番大事なのは、イチローが決して諦めなかったことだ。多くの人が彼を疑って『彼はここでプレーできないかもしれない、なじめないかもしれない』と言っていたと語っていた。でも、彼はなじむ必要さえなかった。周りの人になじむことや、周りの人に似せようと心配している人が多すぎるように感じる。とにかく前進し続け、自分を信じ続け、それを貫き通さなければならない。彼は誰よりもそれをやり遂げたんだ。その言葉を本当に心に留めているよ。彼は周囲に合わせようとしなかったんだ。いつもと同じポーズをし続けた。マシンを使った同じルーティンを繰り返し、それが彼をどこに導いたか見てほしい。私が彼から学んだのは、周囲に合わせようとせず、自分らしく、小さなことを着実に続け、それがどうなるかを見極めるということだ」
