8歳の時に「優勝宣言」したローリーがチャンピオンに

捕手&スイッチヒッターで初の快挙

July 15th, 2025

今から20年近く前、スマートフォンもない時代に、8歳だったカル・ローリー少年は、ハンディカメラの前で力強くこう宣言していた。

「僕はホームランダービーのチャンピオンになるんだ!」

そのわずか20秒の映像は、先週SNSで拡散され、マリナーズのクラブハウス内でも話題になった。そして迎えた2025年ホームランダービーで、ローリーはまさに『宣言通り』にチャンピオンとなった。

「どこからあの映像を掘り出してきたのか分からないけど、本当に夢みたいだよ。優勝するなんて思わないし、そもそも招待されるなんて思っていなかった。招待されて、しかも家族と一緒に勝てるなんて本当に特別だよ。最高の夜だった」

1回戦は薄氷の勝利だった。

今季MLB最多の38本塁打を放ち、オールスターブレイクを迎えたローリーは、この日も圧巻のパワーを披露し、1回戦ではアドリー・ラッチマン(2023年出場)以来となる左右両打席からの挑戦を見せ、左打席で8本放った後、タイムアウトを挟んで右打席にチェンジ。

右でも7本を積み上げ、再び左打席で2本追加して計17本。ブレント・ルーカーと同数だったが、最長飛距離が470.62フィートでルーカーの470.54フィートをわずかに(2.4センチ)上回り、劇的突破を決めた。

「ほんとにギリギリだった。信じられないよね。たった1インチ(2.4センチ)の差で、もしそれがなかったら決勝の4人にも入れてなかったから、ラッキーだった」

勢いに乗ったローリーは、トップスピンの打球を減らし、完全に左打席に切り替えて、Rawlingsの特注「トルピード」バット(右打席で使うトップヘビータイプに比べてバランスの良いモデル)だけを使用した。

「正直、最初のラウンドが一番きつかったと思う。3分は長かった。もちろん、父と弟にも話したよ。『スイッチヒッターでやりたい』って。勝てるかどうかは別として、それが面白いと思ったんだ。幸運にも次のラウンドに進めて、左打席の調子も良かったから、そのまま調子のいい方を続けようと思った」

ローリーはマリナーズの選手としてはケン・グリフィーJr.(歴代最多3度優勝)以来2人目の王者になったほか、捕手としては史上初、スイッチヒッターとしても初のホームランダービーチャンピオンとなった。

試合後、ローリーは投手を務めた父トッドさんと捕手で15歳の弟トッドJr.に感謝した「結果はどうあれ最高の日になると思っていたけど、家族と一緒にこの瞬間を迎えられて本当に幸せだ」と笑顔を見せた。

弟のトッドJr.(通称T)はすでに身長約190センチと兄を超え、アトランタ近郊のトラベルボールリーグで兄と同じ道を歩んでいる。そして父のトッドさんは、10年以上前にローリーを指導したのと同じように、今は弟のチームのコーチを務めている。

父トッドさんはこう語る。「親になると、子供たちには幸せでいてほしいと願うものだよ。僕は本当にラッキーで恵まれていると思う。野球をやっている親ならみんな分かるだろう。僕も、カルも、別の誰かも、あの場所に立てたかもしれない。家族みんなで成し遂げられたのは本当に特別なことだよ」

弟のTは冗談めかして「僕は最高の席で見ていたし、MLBからもらったグッズは全部もらえるんだよ」と話しつつ、真剣な表情で兄への尊敬の気持ちを明かした。

「すべてがかっこいい。兄のスタイル、プレーの仕方、全力で走る姿、全部尊敬している」

月曜日の夜は、今シーズンの物語の最新かつ最も壮大な章を飾った。これからの後半戦でも、さらにドラマが待っているに違いない。