セール、メジャー最速で通算2500三振達成

May 30th, 2025

フィラデルフィア(ペンシルベニア州)クリス・セール(36)が現役サイ・ヤング賞投手さながらの投球を見せ、打線がザック・ウィーラーを打ち崩したとき、クラブハウスの雰囲気がいかに一変するか。それは驚くほどだ。

この遠征自体は印象的なものではなかった。ブレーブスは先発投手に黒星がつき、3シリーズ連続で負け越したからだ。しかし、セールが6回無失点、オジー・アルビーズが四回にウィーラーからの4得点の口火を切る本塁打を放ち、ダブルヘッダー第2試合を9−3で勝利。アトランタは良いムードで本拠地に戻ることができた。

「遠征では少なくとも1勝はして帰りたいものだ」とセールは語った。「きょうはケガ人が出て厳しい一日だったけど、一つ勝って気分よく飛行機に乗り、家に戻ってから良いスタートを切れればと思う」と振り返った。

「彼はいま殿堂入り級のことをやっている」とブレーブスのスニッカー監督は言った。「彼は野球の歴史や勝負において、誰よりも野球を愛する男の1人だ。真の野球選手であり、彼のプレーを見るのは本当に楽しい」と左腕を語った。

セールはこの試合の流れを変えた。フィリーズ打線を6回2安打無失点に抑え、8三振。最後の三振が通算2500三振となった。これは近代野球史で38人目、史上40人目の快挙。記録会社エライアス・スポーツ・ビューローによれば、通算2026イニング以下でこの記録に到達したのはセールが史上初だ。

セールは、かつて通算2500奪三振を最少投球回(2107回2/3)で達成した殿堂入り投手ランディ・ジョンソンに憧れて育った。

「その(2500三振の)価値はちゃんと理解しているけど今はあまりそういう記録に気を取られすぎないようにしてる。自分の仕事が何なのかは分かっているし、いい内容でも悪い内容でも、次の登板が一番大事だ」とセールは個人記録よりもチームの勝利を最優先する姿勢を貫く。

ブレーブスはダブルヘッダー第1試合を4−5で落とし、クラブハウスはまるで霊安室のような空気に包まれていた。数時間前には新人先発AJ・スミス=ショーバーが肘を負傷し離脱。過去7試合で6敗目、そしてナ・リーグ東地区の首位とのゲーム差は2桁に広がっていた。

そんな状況で迎えた相手がウィーラー。ブレーブスの本拠地、アトランタのあるジョージア州郊外出身で、これまで地元ブレーブス相手には11登板で防御率2.56。昨季のサイ・ヤング賞投票ではセールに次ぐ2位で今季もここまで防御率2.42の好成績だった。ただし、今季までに許した自責点19のうち、5点はすでにブレーブスが奪ったものだった。

だから、多少なりとも自信はあったのかもしれない。あるいは単に、そろそろセールに援護を与える時が来ていたのかもしれない。セールは4月30日から5月23日までの5先発で防御率1.62ながら1勝1敗。5登板中、彼がマウンドにいた時間帯にブレーブス打線が記録した得点はわずか4点だった。

四回の4得点は貴重だった。マット・オルソンとオースティン・ライリーが連続二塁打、アルビーズがライトポール際に2ランを放った。ウィーラーは5回1/3で6失点。実は2023年以降、フィリーズのエースが1試合で自責5以上を喫した3試合の相手はいずれもブレーブスだ。

アルビーズにとっては今季6号で、これで14試合連続安打。ライリーは七回に2ランを放ち、これは5月4日以来の本塁打だった。彼のこの試合での長打2本は、直前の21試合での長打合計(3本)にほぼ匹敵する内容だった。

遠征のスタートはひどいものだった。だが、終わりにはブレーブスに希望の光が差した。これまでみつけられなかった勢いが、ようやく感じられた。

「今夜が何か特別なものの始まりになって、そこから勢いに乗っていければと思う。俺はこのチームを信じてるからね」とライリーは試合後に語った。「この流れをうまく封じ込めて、明日に向かって進んでいきたい」と前を向いた。