得点力不足のブルワーズ、イェリッチ「1番」起用は正解か

October 11th, 2025

地区シリーズ(NLDS)第4戦前、クリスチャン・イェリッチの1番打者起用について、パット・マーフィー監督はこう語った。

「きょう、一番打てると思ったからだ」

ポストシーズンではすべての判断が注目される。その中で「これまでチームを支えた選手に託す」という考え方もある。今年のブルワーズで、その信頼にふさわしい活躍を見せてきたのがイェリッチだ。

今季、イェリッチはシーズンを通してチームに在籍していた選手の中で最高のOPS.795を記録(途中加入のアンドリュー・ボーンは.868)。また若手中心のこのチームで唯一、過去8年で7度のポストシーズン進出を経験している野手でもある。

とはいえ、チームとしてはここ数年、ポストシーズンで結果を残せていない。2019年のワイルドカードゲームを含めると、現在6シリーズ連続で敗退中。今回のシリーズも、カブス相手に2連勝で王手をかけながら、敵地リグレーフィールドで2連敗し、勝負は本拠地での最終第5戦にもつれ込んだ。

第4戦の完封負け後、イェリッチはこう語った。

「これも野球の一部。ポストシーズンでは逆境にぶつかる。大事なのは、それでも前に進むこと。ホームではいいプレーができたし、相手もここでしっかり戦った。第5戦に向けて準備して、全力でプレーするよ」

2018年以来となるシリーズ突破を逃した要因は、もちろん他にもある。プリースターとペラルタが初回に痛恨の被弾。打線もこのシリーズを通して、序盤以外ではほとんど得点できていない。第4戦では、走者を出しながらも得点には結びつかず、走者を置いた場面では12打数無安打だった。

つまり、1番・イェリッチが直接の敗因ではない。だが、今の打線の状態を考えると、「本当に彼を1番で使い続けるべきか?」という声が上がるのも無理はない。

実際、イェリッチは今季レギュラーシーズンで、チーム内で4番目に多い6試合で1番打者として出場しており、全くの初挑戦というわけではない。

ただ、他の1番打者の候補も万全とは言えない。

たとえば、チューリオは右太ももを痛めており、途中交代の可能性もある。その際はコリンズが代役となるが、9月は調子を崩していた。トゥラングやフリーリックも今シリーズで結果を残せていない。打順を上げれば流れを変えられるかもしれないが、逆に不調の選手に多く打席が回るリスクもある。

一方で、1番・イェリッチで不利な状況を招いた場面もあった。第4戦の五回、1死二、三塁と得点のチャンスで、イェリッチは、左腕ボイドの前に三振。その後、カブスは右腕パレンシアを投入し、チューリオを打ち取り、この回も無得点に終わった。

1番チューリオ、2番イェリッチだったら、カブスは早めに右投手を出した可能性もある。そうすれば、イェリッチは得意の右投手と対戦できていたはずだ(今季の対右OPSは.860、対左は.660)。そこで得点していれば、今ごろドジャース戦の準備をしていたかもしれない。

イェリッチは今季ブルワーズで最も信頼できるバッターのひとりで、球団史に名を残す打者でもある。そして、第5戦は、キャリアで最大の試合のひとつになるだろう。だからこそ、彼を1番に据えるのが本当に最善なのか、今一度考える必要がある。何かしらの『変化』が、今の停滞した打線には必要だ。

イェリッチは「特別な理由なんてない。こういう日もあるよ。それが野球だ。気持ちを切り替えて、やり直すしかない。あと1試合、全員でしっかり準備して臨むよ。このチームを信じてる。みんな大丈夫。今日の負けはすぐに忘れて、オフに気持ちを整えて、また全力を出すだけだ」と前を向いた。