クレイトン・カーショウ、伝説&栄光の瞬間「ベスト10」

September 20th, 2025

2010年代の大半、クレイトン・カーショウは「球界最高の投手」として君臨してきた。

ナ・リーグのサイ・ヤング賞を2011、13、14年に獲得、さらに14年にはMVPにも輝き、防御率は4年連続でリーグ1位。

武器は、打者を惑わすカーブを中心とした3球種のコンビネーション。通算2500イニング以上を投げた投手の中で、ライブボール時代(ボールがよく飛ぶという意味)で最も低い防御率2.54を記録し、殿堂入りに値するキャリアを築いてきた。ここでは、その18年のメジャーキャリアを彩る10の場面を振り返る。

1 ノーヒットノーラン

2014年6月18日のロッキーズ戦で15三振、ノーヒッターを達成。七回、遊撃ラミレスの悪送球がなければ完全試合の可能性もあった。3ボールに持ち込まれたのはわずか1度。九回は2球で2アウトを奪い、最後はディッカーソンを空振り三振。107球の会心の一夜となった。

2 ワールドシリーズ制覇

カーショウのキャリアに唯一の影を落としていたのはポストシーズンの成績だった。しかし2020年、ドジャースが32年ぶりの王座に返り咲いた年に、左腕は最高の投球を披露。10月に5試合で防御率2.93、チームは4勝を挙げた。特にワイルドカード第2戦ブルワーズ戦では8回無失点13三振で、プレーオフの歴史に残る登板となった。

ワールドシリーズ第6戦後、歓喜のフィールドに駆け出したカーショウの姿は、ドジャースファンにとって忘れられない光景だ。(24年には2つ目のリングも獲得。ただし負傷でシーズン7登板、ポストシーズン登板はなし)

3 MVPと満票サイ・ヤング

2014年、カーショウはMVPとサイ・ヤング賞を同時受賞。史上11人目の快挙だった。防御率1.77、ERA+197、FIP1.81、WHIP0.86、奪三振率10.8、21勝、6完投。主要指標を総なめにした上にノーヒッターも加わり、圧倒的なシーズンを過ごした。サイ・ヤング賞は満票、MVPでも30票中18の1位票を集めた。

4 開幕戦のヒーロー

2013年4月1日、本拠地ジャイアンツとの開幕戦。カーショウは8回を投げ3安打、7三振、無四球の快投。打線が援護できず緊張感漂う展開だったが、その熱投は球場全体に「エースのシーズン」を予感させた。

5 3,000三振
カーショウがキャリア18年目にして残した晩年のハイライトが、2025年7月2日、ドジャースタジアムでのホワイトソックス戦でのビニー・カプラからの三振だった。3,000三振クラブは野球界でごく少人数しか達成していない記録の一つで、カーショウはその20人目のメンバーに名を連ねた。

そして、おそらく最後の一人となるかもしれない。

左腕として達成したのはわずか4人、また一つのチームでキャリア全てを過ごしながら3,000三振を達成したのは3人だけである。

6 サイ・ヤング賞
メジャー初期の3シーズンも印象的だったが、2011年、7年連続オールスターの初年度に本格的に覚醒。防御率2.28はリーグトップ、248三振、WHIP0.98、21勝でナ・リーグを席巻した。さらに完投5試合、うち2試合は完封で、サイ・ヤング賞では30票中27の1位票を獲得し、メジャーの新たなエースの誕生を印象付けた。2012年もR.A.ディッキーに次ぐ2位に入り(票差は大きかった)、2013年はほぼ全員の1位票を獲得。ERA1.83、ERA+194、WHIP0.92、232三振、完封2試合でリーグをリードし、圧倒的な実力を示した。

7 300三振
2015年10月4日、レギュラーシーズン最終登板でこの記録に到達。シーズン通算301三振は自己最多で、ライブボール時代では34度目の300三振シーズン、21世紀ではわずか9度しか達成されていない快挙だ。

8 2016年のプレーオフでクローザー

2016年10月13日、NL地区シリーズ第5戦でクローザーのケンリー・ジャンセンが通常より早く投入され、八回を無失点で抑えたが、九回に2つの四球を許した。

ここで登場したのがカーショウ。前日の第4戦で先発していたが、7球でピンチを脱し、ダニエル・マーフィーを二塁ゴロ、ウィルマー・ディフォを空振り三振に仕留め、ドジャースをナ・リーグ優勝決定シリーズへ導いた。これがカーショウ唯一のキャリアセーブである

9 無失点の連続イニング
カーショウはドジャース史上最長無失点記録の4位と6位に名前を残す。2014年6月10日から41回2/3イニング無失点(ノーヒットを含む)を達成。2015年7月3日から8月7日まで37イニング連続無失点とし、記録に迫った(メジャー記録は1988年オレル・ハーシーザーの59イニング)。

10  ドジャースの放送席もびっくり
この瞬間はレギュラーシーズンやポストシーズンではなく、2008年3月のスプリングトレーニングで起きた。メジャーデビュー前、19歳直前のカーショウが、ドジャース放送のビン・スカリーを驚かせた。レッドソックスのショーン・ケーシーを決め球のカーブで見逃し三振に仕留め、スカリーは思わず笑い、「パブリックエネミーNo.1」と称した。カーショウの将来を予感させる一幕となった。