大学野球とMLBはいかに密接になったか

4:45 AM UTC

トニー・ビテロは最初の男かもしれない。しかし、運命を決める男でもある。

今オフ早々にジャイアンツは、史上初めて大学野球の現職監督をMLBの監督として採用し、ビテロを新監督に任命した。当然ながら、人々はそれを衝撃的で、状況を大きく変える出来事と評した。テネシー大学で全米選手権とSECトーナメント(米大学野球の強豪地区)で2度の制覇を果たしたビテロ氏が、メジャーリーグのクラブハウスを魅了できるかどうか、人々の関心は当然ながら高まっている。

しかし、ジャイアンツがビテロ氏を雇用したことは奇妙に思えるかもしれないが、プロ・アマの密着が進み、データを取り入れた選手育成環境が急速に加速している野球業界においては、それは避けられない結果だったとも言える。

「もっと髪の短い、もっと評判の良い人が、大学野球とメジャーリーグがより緊密に結びつくべきだと言ってくれるといいのだが。最終的に、一緒に協力することでメジャーリーグはより良いものになり、ファンにとっても素晴らしいことだと思う」とビテロ新監督はウィンターミーティングで語った。

ビテロ氏が去った大学野球と参入するMLBは、かつてないほど密接に絡み合っている。

ビテロ氏は慣習を打ち破って監督に採用されたが、これまでも大学野球での指導経験がある監督はいた。ブルワーズで2年連続最優秀監督賞に輝いているパット・マーフィーは、ノートルダム大学とアリゾナ州立大学で長年監督を務めてから、MLBの世界に入った(最初は特別補佐、次にマイナーの監督、そしてMLBでベンチコーチを歴任)。そして、ツインズも2019年にアーカンソー大学から投手コーチのウェス・ジョンソンを引き抜き、ジョンソンは2022年に大学野球へと戻り、ルイジアナ州立大学の投手コーチに就任した。また、タイガースは2020年にかつてミシガン大学で投手コーチを務めたクリス・フェッターを採用している。

大学野球とMLBを結びつけているのは、指導者だけではない。テクノロジーと施設の充実により、より洗練された大学野球出身のドラフト指名選手がマイナーリーグへ送り込まれ、中には即座にMLBでスターダムを駆け上がる選手もいる。

パイレーツのサイ・ヤング賞右腕ポール・スキーンズは、その最たる例だ。ルイジアナ州立大学でカレッジワールドシリーズの先発を務めた翌年には、MLBのオールスターでナ・リーグの先発投手を任された。

アスレチックスの一塁手ニック・カーツは2024年にウェイクフォレスト大学で活躍。そして、2025年にはいきなりMLBで活躍し、ア・リーグ新人王を満票受賞した。

トレイ・イェサベージはイーストカロライナ大学からプロ入りし、ワールドシリーズの舞台で勝利投手になるまで、マイナーで25試合の下積みしか積んでいなかった。

その3人は特別な才能であり、極端な例だろうか?

確かにそうかもしれない。しかし、2024年まで大学でプレーしていた選手で2025年にメジャーデビューを果たした選手は8人、23年まで大学でプレーしていた選手が18人いた。つまり、ここでは何か重大なことが起こっているのだ。

カーツを指導するアスレチックスのマーク・コッツェイ監督は言う。

「大学の試合は、マイナーリーグの非常に高いレベルにどんどん近づいてきている。ルイジアナ州立大学の投手陣の中には、メジャーリーグのブルペンに投入しても1イニングを投げ切れる選手がいる。彼らは全員時速97マイル(156キロ)以上の球を投げているのだから」

エンゼルスのペリー・ミナシアンGMはこう付け加える。

「SEC(大学野球の強豪地区)のどの大学に行っても、トップレベルの先発投手が登板するのは金曜日(リーグ戦の第1戦=エースが投げる場合が多い)だけではないよね。土曜日も日曜日もそうだ。リリーフ陣からは、直球だけでなく変化球もかなりの球速で投げてくる選手たちが出てくる。だから、(大学野球とMLBにおける)試合のスピードの違いは以前ほど劇的ではないかもない」

大学野球の選手たちがMLBの舞台にすぐに駆け上がっている一因、大学野球で利用できるツールが改善されたことにある。結局は、お金の問題でもあるのだ。

一つには、大学が指導者への投資をかつてないほど増やしていることが挙げられる。ベースボール・アメリカ誌によれば、大学野球の指導者の年俸上位15人はいずれも年間100万ドル(約1億5000万円)をはるかに上回る。そして、ルイジアナ州立大学のジェイ・ジョンソン監督に至っては、年間300万ドル(約4億6000万円)を超える画期的な新契約を締結したばかりだ。

監督と同様に、投手コーチや打撃コーチにもより多くの資金が投入され、国内トップクラスの指導者が大学生を指導するようになった。

「僕がサンタバーバラ大学にいたときは打撃コーチはいなかったよ。一人もいなかったんだ。ましてや3人なんて」とレンジャーズのスキップ・シューメイカー新監督は笑いながら語る。

レッズのテリー・フランコーナ監督も「SECでは、コーチ陣の給料は私たちのコーチ陣より高額だ」と付け加えた。

つまり、大学野球の指導者は以前よりも優秀になり、施設も同様に良くなった。

ブルージェイズがフロリダ州ダニーデンに、今では最高設備として知られる春季キャンプ施設を建設する計画を立てていたとき、ブルージェイズは強豪大学の施設を視察。動作パターン、投球フォーム、スイングのメカニクスに関する客観的なデータを提供するイノベーションを最も効果的に導入する方法についてのアイデアを得るため、ウェイクフォレスト大学やバンダービルト大学を訪れた。

「多くの点で大学のプログラムをモデルにしていた。(球団社長の)マーク(シャパイロ)と彼のチームは、大学やサッカー、フットボールの施設を回って、『さて、何が足りないのか?』と自問自答していた。ですから、その点では、われわれもそれに追いつこうとしていたのだ。大学から多くの若い選手が私たちの最新鋭の施設にやってきているけど、彼らにとってはそれが当たり前の環境なんだ。競争におけるわれわれ優位性は、まさにそこにあると思う」と、ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督は言う。

イェサベージのような投手は、長年にわたって自分の球速と回転数を評価できるツールを活用していた。同様に、カーツのような打者もスイング軌道が分かるデータにアクセスできていた。したがって、彼らは特別な素質を持っているかもしれないが、同時にMLBのレベルの早く適応できるだけの最先端の知識を十分に持ち合わせていた。

「彼らは即戦力として活躍したね」と、コッツェイ監督は語る。

2026年のMLBドラフトでは、UCLAの遊撃手ロック・チョロウスキーが絶対的な全体1位候補と目されている。

「大学のプログラムでは、コーチ陣が選手たちに独自の技術を身につけさせるために、試行錯誤的な取り組みをもっと多く行うことができる。そして、選手たちが真剣に取り組めば、それをある程度スケールアップしていくことができる。以前ほどの障壁はなくなったと言えるでしょう。まさにその成果が表れていると思う」と、ガーディアンズのマイク・チャーノフGMは語った。

近年のMLBにおける選手層、特に野手の若返りも、選手たちの適応を容易にしている。ベースボール・リファレンスによれば、今世紀初頭のMLBにおける野手の平均年齢は29.1歳だった。しかし、今季は27.9歳にまで下がった。2008年以降では、2008年には30歳未満の打者が立った打席数は全体の59%だったが、今季は66.2%にまで割合が上昇した。

そのため、ダッグアウトやクラブハウスは若返り、一般化して言えば、おそらく以前よりもエネルギッシュで歓迎的な場所になっている。

「昔ながらの新人が受け入れられるための風習は減ったね。そういうナンセンスなことは減った」とマーフィー監督は言う。

オリオールズのクレイグ・アルバーナズ新監督は、2025年時点でロースター(出場選手登録)の平均年齢が27.2歳だったガーディアンズでベンチコーチを務めていた。

「クリーブランドのダッグアウトは大学のダッグアウトみたいだ。すごく楽しいよ。だって、野球って楽しいでしょ?それが一番いいところだと思う。それに、自チームの選手たちにも責任感を持たせられる。みんなが楽しくて、お互いに(悪態を)つき合う文化がある。みんなを統制しているんだ。結局、野球をしに来たら、楽しくあるべきだからね」

こういったことを考えれば、ジャイアンツのビテロ氏の採用は革命的な決断というよりは、進化の延長線上にもあるようだ。

マーフィー監督は2010年にMLBの世界に入ったとき、アリゾナ州立大学から直接MLBの監督に就任する準備はできていなかったと語った。しかし、マーフィー監督は球界が今、全く違った状況にあると考えている。同氏はビテロ新監督の採用について「それは全く問題にならないと思う」と語っている。

2026年のサンフランシスコ・ジャイアンツでのシーズンは、大学野球とMLBのつながりがどれほど強いのか、より多くのことを教えてくれるかもしれない。しかし、ビテロ監督はそのつながりがさらに深まることを望んでおり、自身の監督就任以外でもそれが実現できると考えている。

「私よりも賢く責任感のある人たちが集まって、アイデアをまとめることもできる。彼らは互いに刺激し合うことができると本当に信じている」