エンゼルスのマイク・トラウトのキャリアは大きく2つの時期に分けられる。
前半は、野球界最高の選手としての地位を確立した時期だ。2012〜2019年、打率.308、出塁率.422、長打率.587、280本塁打、MLB最高の174 wRC+、そして70.3WARを記録。他の誰もこの期間に50WARを超えられなかった。MVPは3度獲得し、2012年と2013年にも獲得候補に挙がるほどの活躍を見せた。
しかし、キャリア後半はケガが大きなテーマとなった。2017年からその兆しが出始め、30代に入ると影響はさらに大きくなった。2021年はわずか36試合出場、2023年は半シーズン欠場、2024年は29試合のみ。直近10年で最も多く出場した昨年でも130試合にとどまり、膝の問題で主にDHとしての起用に留まった。
昨季は比較的健康だったものの、OPS.797は2011年のデビュー以来最低で、DH起用の制限もあり、WARはわずか1.8だった。
それでも、2026年には再び“偉大なトラウト”が見られる可能性がある。今春は健康で、スピードもかつてのエリートレベルに復活している。昨年はライトを守ったが、今年は定位置のセンターに戻る予定だ。
34歳のトラウトが再び記憶に残るシーズンを送るには条件がそろう必要があるが、昨年35歳で復活したブルージェイズのジョージ・スプリンガーの例を見ると、十分可能性はある。
では、トラウトが2026年にもう一度印象的なシーズンを作るにはどうすればよいのか見ていこう。
打球の質は未だ衰えず MLBトップクラス
トラウトのOPSは昨年、MLB初年度以来初めて.800を下回った。しかし、まだ力を出せる余地は十分にある。
打球の質に注目すれば、昨季も強い打球を飛ばしていた。ピーク時には届かない部分もあるが、ボールを強く捉える能力は健在だ。
- バレル率は15.8%で打者全体の上位7%
- 打球の約半分(49.3%)が95マイル以上の強打では打者全体の中で上位15%
- スイートスポット率は44.4%で全打者トップ
さらに選球眼も変わらず、ゾーン外の球を追う割合は20.7%で上位8%で、これが15.6%の四球率につながり、全打者中4位だ。
一方で、三振率の急上昇が課題だ。昨季の三振率は32.0%で、規定打席到達打者の中では3位タイ。スイングに対する空振り率も29.9%と全打者の中で下位16%だった。
それでも、打球の質や選球眼を考慮した期待値では、もっと高いOPSを残せるはずだった。期待wOBAは.358で全打者の中で上位14%に入る水準で、実際の.343 wOBAより15ポイントも高い。
もちろん、これが今年の実際の成績に直結する保証はない。しかし、トラウトの強みである「強打」と「ゾーン外の球を追わない選球眼」は依然として健在だ。
再びトップレベルのスプリントスピード
今春、トラウトにとって最も注目すべき変化はスプリントスピードだ。スプリングトレーニング序盤で、トラウトは時速29.9フィート/秒(時速約33キロ)を記録。30フィート以上がトップレベルとされる。これは左膝半月板損傷を負った2024年4月以来、最速のスピードとなる。
「調子は最高だ。見た?29.9?30には届くと思う。まだ余力はある。でも29.9は正直驚いた」とトラウトはMLB.comのレット・ボリンジャー記者に語っている。
この数字は守備面も含め、複数の面で朗報だが、何よりもトラウトの身体能力が健在であることを示している。34歳で下半身のケガ歴もある中、スピードがかつてのエリートレベルに戻った可能性は大きい。
昨季は平均スプリントスピードが27.9フィート/秒(時速約30.6キロ)まで落ち、同じ条件の打者の中で上位62%に位置し、2015年のStatcast導入以来ワーストの数値だった。今回の復活は健康の保証ではないが、トラウトの運動能力が依然として高い水準にあることを示している。
今季は定位置のセンターに
トラウトのスピード復活も驚きだが、さらに注目すべきは、今季再びセンターでプレーすることだ。DHとの起用比率や守備評価はまだ未知数だが、昨年DH起用で失われていた守備価値を取り戻す可能性は十分にある。
トラウトはキャリア初期、守備力の評価が賛否両論だったが、後半は平均的なセンターとして安定していた。この10年間では、「Outs Above Average」でわずかに平均以上(+6)、「Defensive Runs Saved」は平均以下(−13)、「Ultimate Zone Rating」も平均以下(−9.3)となっている。
ただし、2024年以降は中堅での出場がわずか24試合しかなく、実際にどれだけ守備で貢献できるかは未知数。また、出場機会を増やすためにDHとの併用も考えられる。
それでも本人は「右翼より中堅のほうが快適」と語っており、慣れたポジションで復帰できるのはプラス材料だ。
「またフィールドに立てるのは気持ちいい。ここが自分の居場所だし、プレーするのが好きなんだ」
もちろん、ここには多くの不確定要素が絡む。34歳という年齢もあり、理想的な結果を想定するのは簡単ではない。それでも、もしトラウトが健康を維持し、OPSが実力に近い数字を示し、さらにスピードが復活して中堅に固定できれば、5前後のWARを記録するシーズンも十分にあり得る。
トラウト本人にとっても、エンゼルスにとっても、そして野球界全体にとっても、そんなシーズンの到来は歓迎すべきニュースだ。
