マックス・シャーザーは怒りを溜め込まない。今は違う、まだ早い。
これまでシャーザーはマウンド上で、自分の登板を脅かすことに対して強い怒りを見せてきた。もし銀行員やタクシー運転手なら、41歳という年齢は落ち着く頃かもしれない。しかし、シャーザーは違う。投手だ。そしてこれからも投手であり続けるだろう。
ブルージェイズがア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)第4戦に勝利した試合でも、シャーザーはマウンドを降ろされそうになると、強い怒りを感じていた。
「マッド・マックス」という異名は偶然ではない。シャーザーの狂気は今も続いている。
試合開始の1時間前、先発右腕は外野を狂ったように、そして一定のリズムもなく歩き回っていた。ぐるぐるジョギングしては首を伸ばし、突然30メートルを全力ダッシュし、その後はシャドーピッチングを繰り返す。
ブルペンで投球練習を始める頃には、シャーザーはまるで幽霊と口論しているかのようだった。ある時は、ボールを投げながら架空の打者に腹を立てていた。次の球でいい感触をつかむと、指先でキャッチャーに向けてピストルを突きつけ、煙を吹き出す仕草を見せた。
三塁コーチのカルロス・フェブレスと投手コーチのピート・ウォーカーは、シャーザーがダグアウトを激しく駆け回るたびに、まるで命を狙われているような気分になった。もしかすると、シャーザーの目には2人のコーチすらぼんやりとしか映っていなかったのかもしれない。
シャーザーは四回まで1失点と好投し、五回も先頭打者にヒットを許しながらも2死までこぎつけた。しかし、打順が1番アロザレーナに回るタイミングで、ジョン・シュナイダー監督がダグアウトからマウンドに向かった。監督がマウンドに近づく様子は、まるで空腹のライオンに近づくような大胆さだった。
左足がマウンドに踏み入った瞬間、シャーザーは自分の監督に向かって叫び声を上げていた。降板を告げられるかもしれないことに、強い憤りを感じていたのだ。
「殺されるかと思ったよ。最高の瞬間だった。マウンドに向かうと、シャーザーはオッドアイ(左右の瞳の色が異なる)の両目でじっと俺を見たんだ。これは演技じゃない。彼はまさにマッド・マックスで、今夜もそれを証明してくれた」
そう語ったシュナイダー監督は、オフシーズンに1年契約でシャーザーが加入して初めてズーム通話した時のことを思い出していた。指揮官はその時から、「この瞬間」を楽しみにしていたという。
「突然監督がマウンドに来たのを見て、『おいおい、まだ降ろさせないぞ』と思った。調子が良すぎたからね。監督と少し話したけど、基本的には試合に出続けるつもりだった。ただ、言葉使いは少し違ったかな(笑)。まだ強い球を投げられると自分でも分かってたから。続投したい気持ちだったんだ」
1分後、シャーザーはアロザレーナを三振に打ち取ると、グラブを拳に打ち付け、雄叫びを上げながらマウンドから下りた。
男同士、最高の瞬間が重なった。
投手としては高齢な41歳のシャーザーは、頑固なスター選手でもあり、続投を望んだ。監督としては若い45歳のシュナイダーは、状況に応じて自分を律し、ライオンを睨みつける術も身に着けている。
「数字があり、予測があり、戦略があり、そして人がいる…。私は人を信頼した」
シュナイダー監督にとって、監督のキャリアで最も輝かしい瞬間の1つになった。
これはシャーザーにとって最高の投球ではなかったが、まさにチームが求めていた投球だった。5回2/3を投げ、制球の乱れやフォームの崩れに苦しみながらも、許した失点はソロ本塁打の1点のみ。レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて通算500試合目の先発登板で、シャーザーはキャリアの価値を示した。
確かに今季のブルージェイズ1年目は、終盤に苦しい内容が続いた。41歳という年齢もあって、自分の体と向き合う時間も長かったが、その頑固な姿勢には理由があった。シャーザーはまだチームに貢献できる力が十分に残っていることを自覚しており、周囲もそれを感じていた。
「これこそがプレーする理由だ。今、シーズン最大の大一番にいる。どの試合も絶対に勝たなければならない。これが、俺がプレーしている意味なんだ。1年を通して懸命に努力してきた。この瞬間、この大切な瞬間を迎えるために、あらゆる犠牲を払い、全力を注いできたんだ」
シャーザーは2時間で全力を出し切った。初回、マリナーズの主砲カル・ローリー相手に投じた96.5マイル(約155キロ)の直球は、2023年6月24日以降で最速だった。そして三回には、一塁走者レオ・リバスを刺す牽制を決めたが、これは2016年以来の牽制刺だった。
さらにシャーザーは、41歳以上でポストシーズン勝利を挙げたMLB史上4人目の投手となった(ロジャー・クレメンス、ケニー・ロジャース、デニス・マルティネスに次ぐ)。
この日、シアトルで起きたことは、何ひとつ普通ではなかった。野球は普通はこうあるべきではないが、マックス・シャーザーはそんなことは気にしない。
