クレイグ・アルバーナス監督(43)は、右ほほに赤い跡を残し、右目の周りにあざを作った状態で記者会見室に笑顔で現れた。オリオールズの監督にとって、14日(日本時間15日)は、いつも通りの1日だった。
「やあ、みなさん」とアルバーナスは地元メディアに冗談を言った。「会えてうれしいよ」と元気な姿をアピールした。
約19時間半前、アルバーナス監督は野球人生で最も恐ろしい出来事に遭遇した。43歳の指揮官は前日13日(同14日)、ダイヤモンドバックス戦の五回、オリオールズのジェレマイア・ジャクソン(26)が放ったファウルライナーを顔面に受けた。チームは9―7で勝利したが、アルバーナス監督は近くの病院へ搬送されたため、その結末を自身の目で見ることはできなかった。
右ほほの少なくとも7カ所の骨折と顎(あご)の骨折の大けケガを負った。手術の必要はなく、顎を固定する必要もなかったが、厳格な離乳食生活を余儀なくされている。鼻をかむことも禁止された。
それでも、直近7試合で6勝を挙げ絶好調のチームを率いるため、アルバーナス監督は14日(同15日)のダイヤモンドバックス戦を前に球場へ姿を現した。
「毎日ここに来る必要がある。私たちは毎日、仕事として試合をしている。そのためにここにいる。選手たちのためにね。試合があるし、私はここに来られる身体の状態だ。だから、さあ行こう。たとえ顎を固定されていても、私はここに来ただろう。腹をくくって、次の日に臨むだけだ」
一塁側ダグアウトの柵の近くといういつもの場所に立っていたアルバーナスが、打球直撃を受けてから事態が展開していく様子は、まさに壮絶だった。
アルバーナス監督は「起きた瞬間、もちろん衝撃を感じた。まともに受けてしまった」と振り返った。
「最初の考えは『顔を隠さなきゃ』ということだった。もしひどい状態なら、テレビを見ている家族やダグアウトの仲間に目に触れさせたくなかった。だから顔を手で覆い、ダグアウトの階段を下りて奥の通路へ向かった」
アスレチックトレーナーのスコット・バリンジャー氏が駆け寄ると、アルバーナスは「大丈夫だ」と答えたが、内心では頬の骨が「粉々になった」と感じていた。脳振盪(のうしんとう)のプロトコル(復帰手順)はクリアしたものの、オリオールズの医療スタッフはCT検査を求めた。アルバーナスは試合終了まで待ってほしいと頼んだが、許可は下りなかった。
アルバーナス監督は病院へ向かう前、こっそり自室に戻って妻のジェネビーブに電話を入れた。長男のC.J.、次男のノーマン、長女のジジの3人の子供たちにも、重症ではないと伝えた。家族はC.J.の野球の試合の帰り道、車内のラジオで試合を聴いていたが、すでに球団職員から状況報告を受けていた。
部屋にはジャクソン、ディーン・クレーマー(30)、カイル・ブラディッシュ(29)、クリス・バシット(37)ら数人の選手が訪れた。バシットが六回に飛び出したジャクソンの満塁本塁打について触れたが、アルバーナス監督の部屋のテレビは中継が遅延していたため、まだ見ていなかった。
そこでアルバーナスは球場を去る前に、ジャクソンと抱擁を交わすべく一瞬だけダグアウトに戻ることに決めた。
「その瞬間を共有したかった。ダグアウトの階段に立ってのぞき込むと、バリンジャー・トレーナーが立っていて『さあ、行くぞ』という表情でこちらを見ていた。私が『(今病院に行かなきゃ)ダメか?』と聞くと、答えは『イエス』だった。それで病院へ向かった」
オリオールズは後に、ジャクソンの満塁本塁打のボールを回収した。ジャクソンは、サインとともに「ごめん、相棒」というメッセージを添えてアルバーナス監督に贈った。
指揮官は病院へ向かう車中でも試合の経過を追い続け、守護神ライアン・ヘルズリー(31)が九回を無失点に抑えてセーブを挙げるシーンを受付を済ませるタイミングで見守った。病院を出たときは深夜だったが、放射線科医やスタッフから帰宅の許可が下りると、そのまま翌日の職務に就ける状態だった。
13日(同14日)の夜は話すだけでも痛みがあったが、14日(同15日)にはその苦痛も消えていた。実際、体調は極めて良く、復帰後はダグアウトの全く同じ場所に立つつもりでいる。
「今日はダグアウトでマスクを被るかもしれない」とアルバーナスは冗談を飛ばした。「デスクにある(NFL)レイブンズのヘルメットを持っていくかもね」と気丈に振る舞った。
災難に見舞われたものの、アルバーナス監督の表情は明るい。当面の離乳食生活は楽しみではないようだが…。
「(長女の)ジジの方が僕より良い食事をすることになる」と皮肉交じりに語った。オリオールズが好調を維持すれば、回復の助けになると信じている。
「あのような逆転勝利は時間の問題だった」とアルバーナスは13日(同14日)の勝利を振り返った。
「全員が団結して成し遂げる姿を見るのは最高だった」
