パドレスが次期監督にクレイグ・スタメンを起用したというニュースは、野球界にとって大きな驚きだった。
まず第一に、スタメンは報道されていた最終候補者リストには含まれていなかった(リスト外にもう1名候補がいることは知られていたとはいえ)。そしてもう1つの理由として、スタメンはこれまで一度も指導者経験がなく、わずか2年前に13年間のメジャーリーグ投手としてのキャリアを終えたばかりだった。
しかし、球団内部の関係者にとってはこの人選には十分な理由があった。以下は、パドレスが第24代監督としてスタメンを選んだ4つの理由である。
1. 選手との信頼関係と野球的洞察を兼ね備えている
2017年にパドレスへ加入したスタメンは、すぐにブルペンのリーダー格となった。その頃すでに、A.J.プレラーGMは「将来の監督候補」として注目していたという。
「この男は組織のリーダーとして置いておきたい。当時も今もそう思っている」とプレラーは語る。
パドレスで9シーズンにわたり共に働いた人々は、スタメンを「人当たりがよく、現役選手たちと深く共感できる存在」と評する。今のメンバーには元チームメイトも多く、自然と関係性が築かれている。
しかし、パドレスが評価しているのは、スタメンの人柄だけではない。球団は「監督にふさわしい野球的知見」を持っていると信じている。もちろん実際に指揮を執るのは初めてだが、この2年間の活動でその確信は強まったという。
2. 特別補佐としての経験
2023年、右肩関節包の損傷からの復帰が不可能と判明した時点でスタメンは正式に現役引退を表明した。しかし、パドレスは組織に残したいと申し出て、すぐにメジャースタッフおよびフロントの「特別補佐」として採用した。
どの球団にも同様に元選手の特別補佐は存在するが、その職務範囲は曖昧で、選手次第の面も多い。
スタメンは当初から積極的に関与した。育成部門と協力し、傘下チームを訪問して若手投手たちと交流。現役選手にとっては相談相手であり、フロントとの橋渡し役でもあった。さらに、ドラフトやトレード期限の重要な会議にも同席した。
特別補佐としてスタメンは多方面で実績を残しており、その柔軟な対応力こそが監督職に最も適していると球団は判断している。
3. 球団の一貫性とビジョンを維持できる存在
パドレスは球団史上初、2年連続90勝シーズンと2度目の2年連続のプレーオフ進出を達成。球団としては、この勢いを維持することを最優先していた。
スタメンこそ、それを実現する人材であると球団は考えた。
スタメンはチーム構成や球団の運営方針を熟知しており、すでに選手とフロントの双方と強固な信頼関係を築いている。監督業そのものには慣れが必要だろうが、球団の文化や人間関係に関しては学ぶ必要がないほど既に馴染んでいる。
「クレイグの最大の強みは、パドレスという組織とその選手たちを心から信じていることだ」とプレラーGMは語った。
4. 初采配への懸念を和らげる体制づくり
初めて監督を務める人物には不安がつきものだが、近年では成功例もある。例えばクリーブランドのスティーブン・ボートも、現役引退から間もなく監督に就任し成功を収めた。
重要なのは、スタメンの経験不足を補う指導陣とフロントの支援体制である。
監督候補でもあったルーベン・ニーブラが投手コーチとして続投予定であり、ベン・フリッツもブルペンコーチとして残留する見込みで、投手環境は高い安定性が保たれるだろう。他のコーチ陣についてはまだ未定だが、打撃部門のビクター・ロドリゲスチーフコーチがアストロズへ移ったとはいえ、全体的には継続性が確保される見通しだ。
今のパドレスは明確に優勝狙いを狙える陣容で、そのためにもスタメンの周囲に適切なスタッフを配置し、成長過程の混乱を最小限に抑えることが不可欠だ。球団はその準備が整っていると確信しており、初の采配でも彼が十分に挑戦に応えられると信じている。
