【フィリーズ4-1レッドソックス】フィラデルフィア/シチズンズバンク・パーク、7月22日(日本時間23日)
フィリーズ先発クリストファー・サンチェスが本拠地のレッドソックス戦でキャリア3度目となる完投勝利を挙げた。チームにとっては、独立記念日の週末にレッズに2勝1敗で勝ち越して以来のシリーズ勝利となった。
サンチェスは9回106球を投げ、4安打1失点、12三振、無四球の快投。球宴には選ばれなかったものの、ナ・リーグのサイ・ヤング賞候補であることを改めて示した。
サンチェスは八回、レッドソックスのロブ・レフスナイダーをカウント3-2からチェンジアップで空振り三振に仕留めると、大きく吠えた。「四回にホームランを打たれたけれど、三振も2つとったので、ちょっと感情的になった」とサンチェスは話した。
通常ならここで降板の場面だが、サンチェスは続投を選んだ。九回を前にフィリーズのクラブハウスへ続くトンネルで、ロブ・トムソン監督が声をかけた。
「大丈夫か」
サンチェスは迷わず答えた。
「疲れてませんよ。疲れてたら、自分から言います」
九回にサンチェスがベンチから出てマウンドへ向かうと、球場全体から大歓声が沸き起こった。
「鳥肌が立った。本当にワクワクした。ああいう瞬間が大好きなんだ。とてもモチベーションになる。最高だったね」とサンチェスは語った。わずか10球で試合を締めくくり、最後はロミー・ゴンザレスをカウント0-2からのチェンジアップで空振り三振に仕留めてゲームセットとなると、ファンから大きな拍手が送られた。
サンチェスの防御率は2.40でナ・リーグ4位。メジャー全体のfWARでは3.6と5位につけ、上にはタリック・スクーバル(5.2)、ギャレット・クローシェ(4.5)、ポール・スキーンズ(4.2)、ザック・ウィーラー(3.9)といったサイ・ヤング候補が名を連ねる。
ナ・リーグ6位の134三振に加えて、チェンジアップでの三振数がメジャートップの85を記録している点も注目だ。「評価は人それぞれだと思う。自分はマウンドで全力を尽くして、ひたすら勝負するだけ」とサンチェスは語った。
オールスター前の日曜に登板したためにオールスターの出場資格を失ったが、本来なら選ばれていてもおかしくなかった。現状、サイ・ヤング賞争いではスキーンズとウィーラーが有力視されるが、サンチェスもその背中を猛追している。「サイ・ヤング賞候補になれるなら最高だ。僕の夢だから」と語る目は真剣だ。
サンチェスは昨夏、4年総額2250万ドル(約33億7500万円)の契約延長を締結。さらに2029年、2030年の球団オプションも含まれ、年俸はそれぞれ1400万ドル(約21億円)、1500万ドル(約22億5000万円)とされる。現在の成績を考えれば、まさに“メジャー屈指のお買い得投手”といえるだろう。
打線も初回から援護した。
ブライス・ハーパーが果敢な走塁でチームを勢いづける。ニック・カステヤノスの適時打と盗塁で2死二、三塁とすると、投手フィッツのモーションが遅いことを見抜いたハーパーは、次の投球でスタート。フィッツが投球をリリースした時点で、ハーパーはすでに本塁まで約67フィート(約20メートル)地点まで走り込んでおり、余裕でセーフかと思われた。
しかし、捕手ナルバエスの捕手妨害とボークが宣告され得点が記録された。なお、ナルバエスはシリーズ2試合連続で捕手妨害を犯しており、前日の延長10回にもサヨナラ捕手妨害で敗れている。これは1971年8月1日以来、実に54年ぶりのサヨナラ捕手妨害だった。
「2アウトだったし、いいチャンスだと思った。かなりリードも取れていたし、どのみちセーフだったと思う」とハーパーは自信をのぞかせた。
サンチェスの好投について、ハーパーは「すさまじいボールを投げている。完全にエースに成長した」と最大級の賛辞を送った。
