カブスvsブルワーズ、ポジション別対決&勝敗予想

October 3rd, 2025

ナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)はブルワーズ対カブスのライバル対決となった。両者には過去最高の重みを持つ顔合わせだ。

カブスはワイルドカードシリーズ(WCS)の「勝った方が突破」の第3戦でパドレスを撃破。次に待ち受けるのは、2025年レギュラーシーズン97勝を挙げたMLB最強チームだ。第1戦は4日(日本時間5日午前3時8分)、アメリカンファミリーフィールドで行われる。

力は互角だ。シーズンでの直接対決成績を見れば明らかで、カブスが7勝、ブルワーズが6勝。ナ・リーグ地区シリーズは、スタイルの違いも注目を集める。レギュラーシーズン223本塁打の強打カブスと超攻撃的スモールベースボールのブルワーズとの対決だ。

ブルワーズとカブスには監督同士も含め、数々の因縁がある。しかしポストシーズンで顔を合わせるのはこれが初めてだ。

では、この初対戦のプレーオフでどちらに分があるのか。ポジションごとに見ていこう。

捕手

ウィリアム・コントレラスとカーソン・ケリーは、今季ナ・リーグでも有数の攻撃型捕手だ(守備でも安定している)。コントレラスはブルワーズで17本塁打、OPS+111(100が平均値の打者評価)を記録。ケリーもカブスで17本塁打、OPS+119と好成績を残した。コントレラスには実績があり、2023年にミルウォーキーへ移籍してから通算OPS+122、最初の2シーズンはいずれもMVP投票で票を得ている。ただし左手の打撲を抱えながらのプレーしている。一方、ケリーはワイルドカードシリーズで打率.375、1本塁打と絶好調だ。とはいえ、コントレラスが手の影響をあまり受けないのであれば、地区シリーズで試合を動かす可能性が高いのはコントレラスの方だろう。

優位:ブルワーズ

一塁手

マイケル・ブッシュは今季カブスで年間を通して素晴らしく、ワイルドカードシリーズ第3戦では勝負強い本塁打でチームを地区シリーズに導いた。ブルワーズのアンドリュー・ボーンは64試合で打率.308、OPS .869と復活の気配を見せたが、レギュラーシーズン最後の35試合は本塁打がなく長打力はやや失速。左のジェイク・バウアーズという選択肢もあり、リース・ホスキンスもいるが、NLDSのロースター(出場選手登録)入りも難しそうだ。総合的に見て、ここはカブスに分がある。

優位:カブス

二塁手

ニコ・ホーナーとブライス・トゥランは、今季メジャー最高レベルの二塁手と言っていい存在だ。ホーナーは内野手全体で今季8位のアウト数(OAA)を記録した守備の名手。一方、トゥランは打撃で上回り、本塁打18本、OPS+121(ホーナーは本塁打7本、OPS+114。ただしホーナーのコンタクト能力は一級品)。両者とも走塁でかき回せる選手で、ホーナーは29盗塁、トゥランは24盗塁した。

ホーナーはWCSで打率.364と好調だったが、トゥランは後半戦が圧巻で打率.308、OPS .916、本塁打12本。昨季のポストシーズンでもメッツ相手に3試合で打率.455、二塁打3本と抜群の成績を残している。さらにトゥランは今季カブス戦で13試合、打率.348、OPS .902と打ちまくった一方、ブルワーズはホーナーを打率.255、OPS .595に抑え、三振はホーナーの今季全体平均のほぼ3倍を奪っている。トゥランはシカゴ相手に相性抜群と言えそうだ。

優位:ブルワーズ

三塁手

両軍とも三塁はルーキーが先発。ブルワーズは25歳のケイレブ・ダービン、カブスは23歳のマット・ショーだ。突出した大物というわけではないが、総合的な貢献ではダービンに分があり、打撃ではコンタクト能力が光る。空振り率13%、三振率9.9%はいずれもMLB打者の上位5%に入る数値。バットの芯で捉える割合(squared-up rate)33.5%も上位5%だった。ショーはWCSでも苦しみ、7打数無安打、5三振に終わった。

優位:ブルワーズ

遊撃手

ダンズビー・スワンソンはWCSで遊撃守備だけでも主役級の活躍。名手ジョーイ・オルティス相手でも守備面では互角に持ち込める。一方でオルティスは今季OPS+66とメジャーの遊撃手の中でも打力が弱く、スワンソンはレギュラーシーズンで本塁打24本、20盗塁、77打点と平均以上の打撃成績を残した。遊撃の打力差でカブスが優位だ。

優位:カブス

左翼手

カブスには“Mr. Consistency”(ミスター・安定感)ことイアン・ハップが控えており、今季も23本塁打、OPS+120と「いつものハップ」の成績を残した。一方、ブルワーズは、アイザック・コリンズではなくジャクソン・チューリオを左翼に置くかがポイントだ。シーズンの多くで新人王候補の一人と目されたコリンズだが、9月に大きく失速。そのためブルワーズは終盤にチョウリオを左翼で起用し始めた。ただ、チューリオも8月末の太もも裏の負傷から復帰後は本来の姿ではなかった。しかし、21歳にして2年連続の「20本塁打・20盗塁」を達成し、2024年のメッツとのポストシーズン(WCS)では3試合で打率.455、本塁打2本と衝撃的なデビューを飾っている。現時点ではハップとカブスに軍配を上げるが、チューリオが左翼でも中堅でも出場すればシリーズを優位に進める可能性を秘めている。

優位:カブス

中堅手

もしブルワーズがチューリオを中堅に置けば、ピート・クロウ=アームストロング(PCA)による、野球界屈指の若手外野手同士の対決となる。チューリオが左翼に回り、中堅がブレイク・パーキンスなら……少なくともPCAの方を取るだろう。PCAはワイルドカードシリーズ最初の2試合では打席で迷いが見られ、後半戦と同様に6打数無安打5三振と苦しんだ。しかし「勝った方が突破」の第3戦で大活躍。初回、マニー・マチャドのライナーを滑り込みキャッチ(捕球確率10%)で守備の流れを作り、攻撃では先制点を叩き出す適時打を含む3安打で活躍した。もし地区シリーズでもこのPCAが見られるなら、観戦は存分に楽しめるものになるだろう。

優位:カブス

右翼手

カイル・タッカーが左ふくらはぎを痛めた影響で引き続きDHに回る前提なら、右翼は鈴木誠也(31)とブルワーズのサル・フレリックの注目マッチアップになる。鈴木はレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて33本塁打、104打点の強打者。後半戦の大半は不振だったが、レギュラーシーズン最終週以降は絶好調でWCSを含む直近7試合で6本塁打、長打8本だ。

一方のフレリックは鈴木とは対照的。ブルワーズのスタイルにぴったりはまるタイプだ。卓越したコンタクトヒッター(空振り率12.8%、三振率13.5%)、守備も優れ、走塁もアグレッシブだ。投手の初球を狙って右翼へ引っ張る長所もあり、今季12本塁打はすべて引っ張り方向。2024年のWCS第3戦でもまさにその打撃で同シリーズでは打率.364だった。鈴木が2発、3発とアーチをかければNLDSで大暴れする可能性は十分あるが、直感としては、このしつこいブルワーズ打線で大一番の一打を放つのはフレリックになりそうだ。

優位:ブルワーズ

DH

タッカーがDHで出るなら、クリスチャン・イェリッチの勝負は互角に見える。ブルワーズのベテランリーダー、イェリッチは今季29本塁打、103打点とここ数年で最高レベルの成績。ただ、タッカーが本来の状態なら打撃の脅威はイェリッチ以上だ。問題は、その「本来の状態」をNLDSで出せるかどうか。タッカーは9月下旬に戦線へ戻った直後は苦しんだが、WCS終盤には復調し、最後の5打席中3本の安打をマークした。NLDSでも勢いを保てるか。見立てでは可能だ。今季タッカーはブルワーズ相手に打率.314、OPS .952(10試合)と好相性で逆にカブスはイェリッチを打率.170、OPS .618(13試合)に抑えている。

優位:カブス

先発投手

このシリーズでエース級と呼べる投手はフレディ・ペラルタだ。ブルワーズの第1戦先発を任されるペラルタは、今季17勝6敗、防御率2.70、176回2/3で204奪三振を記録し、ナ・リーグ屈指の投手だった。ブルワーズは1回戦の免除でローテーションを整えており、ペラルタはNLDSで2試合に登板できる。また、今季ブレイクしたクイン・プリースター(13勝3敗、防御率3.32、157回1/3で132奪三振)も待機する。カブスはマシュー・ボイド、今永昇太、ジェイムソン・タイヨンをワイルドカードシリーズで起用したため、ローテーションをリセットする余裕はない。シリーズでエース級投手を複数試合に送り込めるブルワーズに優位がある。

優位:ブルワーズ

リリーフ投手

カブスのブルペンはシーズン終盤に奪三振率30.8%と圧巻で、ワイルドカードシリーズでもパドレスを相手に13回2/3を投げて失点1(第2戦のオープナー・キトレッジ登板後に続投した今永の部分は除く)と抜群の安定感を見せた。だがブルワーズの救援陣もシーズンを通じて強力で、現在クローザーとみられるアブナー・ウリベや左腕ジャレッド・ケーニグらが十分な休養を取ってNLDSに臨む。さらに9月の大半を右腕屈筋の張りで離脱していたトレバー・メギルも復帰し、終盤のリリーフオプションとして控える。そしてXファクターとなるのがジェイコブ・ミシオロウスキ。後半戦は不安定だったが、球威は圧倒的で地区シリーズではブルペンからの起用が見込まれる。カブスのブラッド・ケラー、ダニエル・パレンシア、ドリュー・ポメランツ、キトレッジの4人も現状どのチームにも引けを取らないが、すでに多くの重要な場面で投げている点は不安要素だ。総合的には、フレッシュな戦力を擁するブルワーズにわずかながら分がある。

優位:ブルワーズ

勝敗予想

ブルワーズはついに10月に勝てるシーズンになるのか。2019年以降、過去5度のポストシーズンはいずれも早期敗退に終わっている。長打力が歴史的に重要視されるポストシーズンでスモールベースボールが通用するのかという疑問もつきまとう。

答えは「イエス」だ。カブスにはビッグネームが揃っているが、このブルワーズは総合力で相手を上回る。同地区のライバル相手に激戦を制するだろう。

ブルワーズが3勝1敗でリーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)に進出すると予想する。