ニコ・ホーナーのプレーを見れば見るほど、カブスの二塁手がグラウンドで見せるパフォーマンスへの評価は高まっていく。シカゴ北部のファンは、ホーナーが10年近い歳月をかけてチームの精神的支柱へと成長していく姿を見守り、試合のあらゆる局面で及ぼす影響力を目の当たりにしてきた。
カブスのファンがホーナーに寄せる敬意を最も象徴していたのが、昨年10月に行われたパドレスとのナ・リーグのワイルドカードシリーズ第3戦の終盤だった。ジャンプしての捕球直後、ホーナーが守備位置に戻ると、リグレーフィールドを埋め尽くしたファンが一体となって、ホーナーのフルネームを連呼するチャントが沸き起こった。
「あの瞬間は本当に不意を突かれた」とホーナーは語った。
「間違いなく特別な日だったし、忘れてはならない大切な瞬間だったのは確かだ」
カブスは29日(日本時間30日)、ホーナーと6年の契約延長を発表。球団の象徴となる道を進み続ける機会を与えた。ナショナルズ戦の終了後、この長期契約を祝う記者会見が行われ、会場にはホーナーの両親や婚約者、そして多くのチームメートが駆けつけた。
ホーナーは来オフにフリーエージェント(FA)になる予定だったが、MLB.comのマーク・フェインサンド記者によると、新契約は1億4100万ドル(約225億9500万円)で後払いも含まれる。二塁手としてはロビンソン・カノ(10年、2億4000万ドル=約384億6000万円)、マーカス・セミエン(7年、1億7500万ドル=約280億4400万円)、ホセ・アルトゥーベ(7年、1億6350万ドル=約262億円)に次ぎ、史上4番目の高額保障額となる。
全チームへのトレード拒否条項が含まれるこの契約は、カブスの開幕戦の最中にまとまった。開幕が交渉期限とされていたが、ジェド・ホイヤー編成本部長は、過去2週間で勢いが増したことで合意に至ったと述べた。
ホイヤー本部長は「選手に対してこれほどの投資をする際は、毎日成長しようと努力し続ける人物に投資したいものだ。素晴らしいチームメートであることも重要だ。ホーナーはその全てを兼ね備えている。チームにとって非常に簡単な決断だった」と語った。
2018年のMLBドラフトで1巡目指名された28歳のホーナーに対し、カブスが契約延長を行うのはこれが2度目となる。2023年の開幕前には、3年3500万ドル(約56億1000万円)の契約を結んでいた。
フロントは、ホーナーをチームの中核として引き留めておくことを確実にしたかった。
今回の契約は、開幕日にスター中堅手のピート・クロウアームストロングと6年1億1500万ドル(約184億3000万円)の契約延長を結んだ契約に続く。両選手ともに2032年までの契約となり、三塁手のアレックス・ブレグマンは2030年まで、遊撃手のダンスビー・スワンソンは2029年までの契約下にある。
ホーナーは、中心選手を形成しようとする球団の取り組みについて「自信を生むだけでなく、責任感も芽生える。球団がそれほどの信頼と期待を寄せてくれているというのは、非常に大きな意味がある」と語った。
ホーナーは2018年組の中で最も早く翌年にメジャーデビューしており、現在はカブスのユニホームを着てプレーした最長シーズン記録の仲間入りを狙える位置にいる。
今回の契約延長により、シカゴで14年間プレーする可能性が出てきた。カブスでこれほど長くプレーした選手は、アーニー・バンクス(19年)、ビリー・ウィリアムズ(16年)、ライン・サンドバーグ(15年)、ロン・サント(14年)ら球団のレジェンドを含め、わずか11人しかいない。この4人の像は、いずれもリグレー・フィールドの場外に設置されている。
長期契約に踏み切った理由の1つは、ホーナーが現在のカブスのアイデンティティーを体現しているからだ。
カブスは機動力、走力、守備力に重点を置いて構成されている。ホーナーは、その全ての分野で秀でている。メジャー屈指の守備の名手としての地位を確立し、これまでに2度のゴールドグラブ賞を受賞。最も三振を奪うのが難しい打者の1人でもある。卓越したコンタクト能力と守備力に加え、盗塁のセンスも持ち合わせている。
カウンセル監督は「多くのことを高いレベルでこなせば、それが大きな力になるということをホーナーはみんなに示してくれた。その積み重ねが、今の素晴らしい選手という結果を生んでいる。そうして、今の契約に至った」と語った。
昨季、ホーナーはナ・リーグの首位打者争いでトレイ・ターナーに次ぐ2位の打率.297を記録し、649打席でわずか49三振(三振率7.6%)に抑えた。出塁率.345をマークし、29二塁打、61打点、29盗塁を記録。ポストシーズンでは、8試合で打率.419(31打数13安打)、OPS.972と爆発的な打撃で打線を引っ張った。
2025年に記録したbWAR(ベースボール・リファレンスによる勝利貢献指数)の6.2はチームトップだった。カブスの野手としては2019年のハビエル・バイエズ(6.7)以来の最高値で正二塁手に限れば1992年のサンドバーグ(7.8)以来の数字となった。
これは、カブスがホーナーに長期投資を望んだ理由の、ほんの1年間の断片に過ぎない。
ブレグマンは「特別な選手だ。正直、フィールド上のあらゆることをうまくこなす。コンタクト能力が高く、守備も超一流。広角に打ち分け、三振もしない。こうした要素が、プレーオフでの勝利をもたらす」と評した。
成績表に現れない部分や、舞台裏にも理由がある。ホーナーは試合中の洞察力が極めて高い。試合前のルーティンも怠ることなくこなす努力家。その姿勢で手本を示している。また、ベンチやクラブハウスで自らの声が影響を及ぼすタイミングも心得ている。
再びワールドシリーズ制覇という目標を掲げる中、カブスはこの種のリーダーを今後何年もチームに留めておきたいと考えた。
ホーナーは「プロとしてのキャリアをスタートさせた場所で優勝することほど、報われることはないし、満足できることもない」と語った。
