チェコ代表、今大会でも再び旋風を起こせるか

February 3rd, 2026

2023年のワールドベースボールクラシック(以下WBC)にほぼ全員が国内育成選手という異色のロースターで臨んだチェコ代表は、世界中の注目を集めた。選手たちは消防士や教師、電気技師など本業を持ち、パベル・ハジム監督も神経内科医という特異な背景を持ちながら、中国を破り、最終的に優勝した日本相手にも互角の戦いを演じた。

メジャーリーガーは二塁手エリック・ソガードただ一人だったが、その健闘ぶりは国内に熱狂的なファン層を生み、日本をはじめ世界の野球ファンから高い評価を受けた。大谷翔平が準決勝の移動時にチェコ代表のキャップを着用したエピソードも象徴的だ。

大会後、チェコ代表は日本、台湾、韓国、さらにはマイナーリーグ球団との強化試合を重ね、着実に国際経験を積んできた。「チェコ生まれ・チェコ育ち」のメジャーリーガーこそ誕生していないが、外野手マレク・フルプがNPBでデビューするなど、代表チームと国内野球は確実に前進している。

今大会でも、再び「ファンの人気チーム」として大会を沸かせる存在となるか注目が集まる。

2023年大会での名場面

チェコにとってWBC初出場となった前回大会は、決して順調なスタートではなかった。初戦の中国戦では、序盤にリードを奪いながらも逆転を許し、九回を迎えた時点で4―5と1点差で追う展開に。短期決戦の大会だけに勝敗の重みは大きく、この試合はチェコにとって勝利のチャンスで、再び予選から挑戦する事態を避けるうえでも落とせない一戦だった。

その流れを変えたのが、一塁手のマルティン・ムジークだった。九回に左翼席へ放った逆転の3ランで試合をひっくり返し、チェコは記念すべき大会初勝利を手にした。

その後は白星を重ねられなかったものの、日本戦では序盤に先制に成功。電気技師として働くオンジェイ・サトリアは、時速70マイル(約113キロ)台のチェンジアップ「ザ・ワーカー」で大谷翔平を三振に仕留め、一躍話題となった。東京ドームの観客は、野球への純粋な情熱を体現するチェコ代表に心を奪われ、大会後も日本各地でチェコ代表のユニフォームを着るファンの姿もみられた。

2026年の大会日程

チェコ代表は、東京で行われる厳しいプールに組み込まれ、世界ランキング1位の日本、同2位の台湾、同4位の韓国、同11位のオーストラリアと対戦する。現在、同15位のチェコはタフな戦いが予想される。

プール初戦は3月4日の韓国戦からスタートする。世界の強豪が揃う東京プールで、チェコが再び存在感を示せるか注目される。

過去大会での最高成績

チェコが初めてWBCの本大会に出場したのは、2023年。その切符をつかむまでの道のりは、決して平坦ではなかった。2022年にドイツ・レーゲンスブルクで行われた予選では、初戦でスペインに7―21と大敗を喫した。

しかし、そこからチェコは立て直しを図り、フランス、ドイツを破って最終戦へと進み、再びスペインとの大一番を迎えた。マルティン・ムジークとマレク・フルプの本塁打に加え、消防士として働く投手マルティン・シュナイダーが気迫の投球を披露。チェコは雪辱を果たし、悲願の本大会出場を決め、この勝利が、2023年大会での躍進につながった。

(ちなみに余談だが、筆者がまとめた前回大会のチェコ代表の活躍を紹介する書籍が、4月1日に発売されます)

チェコ野球史上最大の試合

WBC以外でチェコ野球を象徴する一戦は、昨秋のヨーロッパ野球選手権だ。チェコはこの大会で再びスペインを破り、同国にとってヨーロッパ大会初のメダルとなる銅メダルを獲得。

スター捕手マルティン・チェルベンカは、チーム随一の才能を誇る選手として9―2の勝利で4打数3安打、本塁打と7打点を記録。チェコ野球の歴史に残る活躍を見せた。

注目のMLB選手

チェコ生まれ・国内育成の選手でメジャーリーグに到達した人物はいまだ存在しない(チェコ出身とされる4人のMLB選手も国内で野球をプレーした経験はなく、研究者ヤン・ヤブロッキーがカール・リンハルトの家族に取材したところ、祖先はスロバキア出身とのこと)ものの、チェコ代表には大リーグ経験者も参加する。

2023年大会に出場した二塁手エリック・ソガードは負傷のため今大会は欠場するが、元オリオールズのスーパー・ユーティリティ選手テリン・ヴァブラがチームに加わる予定だ。ヴァブラは曾祖父がチェコ出身で、これまで68試合のメジャー経験を持つ。

また、MLB経験はないものの、マレク・フルプが再び外野手としてチームに参加する見込みだ。フルプはNPBで初めてプレーしたチェコ人選手で、昨年夏のデビュー時にはヨーロッパ育成の野手として初めてNPBに登場した。しかし、わずか2試合後に手首を骨折し、残りシーズンは欠場。現在はメキシカンリーグのカリエンテ・デ・ドゥランゴと契約している。

注目の若手選手

現時点でチェコ生まれのマイナーリーグ選手がチームに加わる予定はないが、捕手マルティン・チェルベンカ、遊撃手ボイテフ・メンシーク、投手ヤン・ノバーク、マレク・ミナリクはマイナーリーグ経験がある。外野手マイケル・セナイは打撃に定評があり、今春からフロリダ州立大学でプレーする予定だ。

注目すべきストーリー

「Save the Queen(女王を守れ)」

今大会のチェコ代表を率いるパベル・ハジム監督のジェームズ・ボンド風スローガンだ。ここでいう「女王」とは、WBCでチェコの出場権を維持することを意味している。

国内での注目度が急上昇する中、チームはこの3年間の努力をさらに積み重ねることが重要だ。万が一、再び予選から挑むことになっても、チェコ野球の終わりを意味するわけではないが、やはり勝者であり続けたい。チェコ代表は、国内のファンのためにその「勝者」であり続けることを目指す。

今大会の注目ポイント

・2023年を超えられるか?
チェコは2023年大会で、九回のサヨナラ本塁打で勝利をつかみ、さらに大谷翔平や日本の野球ファンを味方につけた。では、今大会で彼らはどんなサプライズを見せるのか。

・投手起用はどうなる?
オーストラリアのデーブ・ニルソン監督が、先発を一度だけ順番通りに投げさせる起用法でマイアミプールまで迫った様子を見て、チェコのパベル・ハジム監督も戦略を学んだという。

圧倒的な球威を持つ先発は少ないものの、エクストラリーガで活躍するサトリアやトマーシュ・オンドラ(チェコ版グレッグ・マダックスとも比較される制球型投手)は、球質以上に安定感がある。ハジム監督はこれらの投手をより頻繁に入れ替えて起用する可能性がある。しかし、速球派の救援投手は多くない。マレク・ミナリクが健康を取り戻したことで、クローザーとしての起用は濃厚だが、彼に勝利を託すためにはどう先取点を作るかが鍵となる。