ドジャースの若手捕手ドルトン・ラッシングは、自分が出場する試合を、母がいつも見守っていることを知っている。母メリッサさんは、プレーだけでなく“熱いキャラクター”でも話題を集める息子の姿もすべて見届けてきた。
先月サンフランシスコで起きた一件もそのひとつだ。
本塁でのクロスプレーでイ・ジョンフが激しく倒れた直後、ラッシングが「F--- 'em(知るか)」と言ったような口の動きがカメラに映り、球場には緊張感が走った。
その2日後にはローガン・ウェブから死球を受け、さらにウィリー・アダメスへの激しいスライディングでも話題になった。以降、大きな報復騒動には発展していないものの、ラッシングは相手チームを苛立たせる存在として有名になってしまった。
そんな中、「一番厳しい相手」は対戦相手のファンよりも母親だという。
「本当に、夜遅くに母から電話がかかってくるんだ。『なんであんなこと言ったの?』『なんであんなプレーしたの?』ってね」とラッシングは苦笑い。「でも僕はいつも、『母さんなら分かってるでしょ。僕は誰かを傷つけようと思って言ったり、プレーしたりしているわけじゃない』と説明している」
さらに「母は競争心を理解してくれている。でも、バカな姿は見せてほしくないと思っているんだ。それはどの母親も同じだと思うよ」と語る。
アマチュア時代から才能を期待され、メジャーリーガーになるまで、母はその歩みを常にそばで見守ってきた。
ラッシングはこう振り返る。
「僕は母子家庭で育った。母は本当にすごい人なんだ」
そして、続ける。
「僕も兄も2つのスポーツをやっていたし、妹もいつも忙しく動き回っていた。妹は3人の中で一番しっかり者だった。母は本当に手一杯だったと思う。でも、自分が想像できる以上のことをしてくれた。母との関係は、他の誰とも築けない特別なものなんだ」
ラッシングがドジャースに昇格したのは昨年5月。それから間もなく1年になる。
「メジャー昇格の瞬間」にまつわるエピソードもメリッサさんらしい。
故郷テネシーの現地時間午前2時ごろに昇格の知らせを受けたラッシングは、すぐに家族へ電話をかけた。ほとんどの家族とは連絡が取れたものの、母だけが出なかった。
「母は本当に眠りが深いんだ」とラッシングは笑う。
何度か電話してもつながらず、結局その夜は「朝一番で電話して」とメッセージを残すしかなかった。約4時間後、息子からの着信に気づき、折り返し電話をかけた。
ラッシングによると、メリッサさんは最初「何かあったのでは」と心配し、その後メジャー昇格の知らせを聞いて言葉を失い、次の瞬間にはロサンゼルス行きの準備を始めていたという。
その一連の反応は、今でも強く印象に残っている。
メリッサさんはドジャースタジアムでのメジャーデビュー戦に間に合い、息子の晴れ舞台を見届けた。ラッシングはその試合で2安打を記録。試合後には、メジャー初ヒットのボールを母に手渡した。
ラッシングが野球を始めてからずっと、母の存在は彼の野球人生とともにあった。スタンドで誰より大きな声援を送ることもあれば、進路や将来を左右する決断の場面で支えになることもあった。良い時も苦しい時も、グラウンドの内外で母は常に味方だった。
だからこそ、ラッシングにとって母との一番大切な野球の思い出は、メジャーデビューの瞬間を一緒に迎えられたことだという。自分が積み重ねてきた努力、そのすべてを支えてくれた母が、そこにいたからだ。
ラッシングにはかなえたい「もう一つの夢」がある。
「母には、僕たちがワールドシリーズを制覇する瞬間を見せたいんだ。できれば、ドジャースタジアムでね」
