2014年、当時アストロズに所属していたデクスター・ファウラーは、日米野球で日本代表との試合に出場していた。試合後、一人の記者から細身の右腕について質問された。
「大谷はどうでしたか?」
「大谷って誰?」とファウラーは答えた。記者たちは説明した。大谷翔平とは、あなたをセカンドゴロに打ち取ったあの背の高い投手だと。
「なるほどね。うん、いい球投げてたよ!」とファウラーは笑顔で答えた。
しかし、記者たちが「彼は投手としてだけでなく、打者としても一流なんです」と伝えると、ファウラーは半信半疑だった。
「実際に見てみないと信じられないな」と、その時は思ったという。
それから11年。今では、ファウラーも世間の人々と同じように大谷の現実離れした才能を目の当たりにしている。
現在はMLBコミッショナー特使として、大谷の所属するドジャースとブルージェイズが戦うワールドシリーズを観戦しているファウラーは、かつてオールスターに選ばれ、2016年にカブスでワールドシリーズ王者に輝いた。11年前に対戦した若き日本人が、今やMLBの伝説となったことに感嘆している。
「彼はもう別の惑星から来たみたいだよ。こんなの普通じゃない。リーグでトップ5の投手でありながら、同時にトップ5の打者でもあるなんてね」とファウラーは笑う。
2014年のこのシリーズ(日本が5戦中3勝)で、当時まだ20歳。プロ2年目だった大谷は最速99マイル(約159キロ)の速球を投げ込み、第1戦では1イニングをパーフェクトに抑え、第5戦では先発して4回を2失点(自責点0)でまとめた。
メジャーでも通用すると確信させる内容を見せ、大谷はMLB関係者の注目をさらに集めた。しかし、2018年にエンゼルス入りしてからも「二刀流が本当に可能なのか」と疑問視する声は多かった。
「最初のスプリングトレーニングでは少し苦戦していたね。でもそこから一気に軌道に乗った」とファウラーは振り返る。
2021年、大谷は初めてMVP級の活躍をした。投打両方でオールスターに選ばれた、まさに飛躍の年だった。その年、MLBラストシーズンを迎えていたファウラーは、シーズン序盤で大谷のチームメートでもあった。
「チームメートとして一緒にプレーするのは最高だった。大谷は野手と一緒に練習せずにずっと投球練習をして、そのままバッティングケージに入って打ち始めるんだ。なるほど、そういうことか、って驚いたよ」とファウラーは語る。
2014年当時、ファウラーは自分がどんな相手と対戦していたのか知らなかった。だが今は、それを誰よりも理解している。
