「勝てばシリーズ突破、負ければシーズン終了」の第3戦までもつれ込んだガーディアンズとタイガースのワイルドカードシリーズ(WCS)は、タイガースが2勝1敗で制した。
同地区に所属する両球団は、昨季も地区シリーズ第5戦まで競うと、今季はガーディアンズが歴史的快進撃でタイガースを追い越して地区優勝を飾るなど、そのライバル関係はこれまでになく盛り上がっている。レギュラーシーズン最終盤からこのWCSを含め、両球団は17日間で9度も対戦した。
互いに敵地ではブーイングを浴び、今回クリーブランドで行われたWCSでもタイガースの選手に激しいブーイングが降り注いだ。その中、一人だけタイガースの選手でブーイングを浴びなかった選手がいた。それが、クリーブランド近郊出身のディロン・ディングラー(27)だった。
「彼はブーイングを浴びなかった唯一の選手だった。すごいことだね」と、タイガースのAJ・ヒンチ監督は冗談を言った。メジャー2年目のディングラーはガーディアンズの本拠地プログレッシブフィールドから54マイルほどしか離れていないオハイオ州マシロン出身。さらに地元のオハイオ州立大学に進学して活躍し、2020年ドラフト2巡目指名でタイガースに入団した。
この日、ディングラーは幼い頃から応援してきたガーディアンズに引導を渡した。六回には勝ち越し本塁打を放ち、捕手としてもホセ・ラミレスの二盗を阻止する好送球を見せた。しかし、勝ち越し弾を放った際も敵地のファンからブーイングされることはなかった。ファンにとっては、文字通りあまりに身近な存在であり、ディングラーに対して本気の恨みを抱くことはないだろう。
ディングラーはポストシーズンの「勝てばシリーズ突破、負ければシーズン終了」の試合で本塁打を放ち、走者を刺した史上3人目の捕手となった。「正直、打席では少し苦しいところもあったけど、打てる球を打って、少しダメージを与えることができた。このシリーズでは勢いが何よりも大事だったと思う。一番勢いがあるチームが、そのまま勝ち進んでいく。まさにあの一打で、勢いを引き寄せることができた」と、ディングラーは振り返った。
ガーディアンズとのWCSを制し、迎えるマリナーズとの地区シリーズ(ALDS)では、MVP候補のカル・ローリーに大きな注目が集まることだろう。
ただ、ディングラーも決して侮ってはいけない。平均以上の打撃成績(打率.278、出塁率.327、長打率.425)を記録し、捕手守備ではブロック・盗塁阻止・フレーミングのどれを取ってもリーグトップクラスの成績を残した。何より重要なのは、レギュラー1年目で投手陣の信頼を獲得したことだ。
「彼は一緒に努力してくれる」と、2度目のサイ・ヤング賞受賞を目前に控えるタリック・スクーバルは語った。
2巡目(全体38位)でプロ入りし、有望株として期待を受けてきたが、順風満帆だったわけではない。2Aでは足踏みし、3A昇格まで208試合の出場を要した。「2Aで数年かかったが、彼はスイングを少し調整し、常に学ぶ姿勢を見せてくれた。そして、常に投手陣を率い、試合の運び方を学んでいた。彼はまさに生まれながらのリーダーであり、選手たちが集まり、信頼を寄せる存在だ」とアシスタントGMのライアン・ガーコは語る。
今季のガーディアンズとタイガースのライバル対決に終止符を打ったのが、地元出身のディングラーだったのは皮肉なことだ。だが、後ろめたさはない。ディングラーの友人や家族は、とっくの昔にガーディアンズとのつながりを捨て、タイガースへの忠誠を誓っている。
「浮気ではないよ」と、ディングラーは笑顔で語った。
