ドジャース、多すぎる「最強先発陣」の10月の起用法

September 16th, 2025

2024年のドジャースは「投手力で勝った」わけではなく、むしろ投手陣の弱さを抱えながらも、工夫を凝らして世界一を勝ち取った。ポストシーズンの防御率は4.50と高く、NLDS第4戦やNLCS第2・6戦、ワールドシリーズ第4戦ではブルペンデーを強いられるなど、投手陣のやりくりに苦心した。

ワールドシリーズでベン・カスパリアスがプロ初先発を務めるという異例の事態もあった。先発が投げたイニングは全体のわずか42%で、ア・ナ両リーグの優勝チーム史上最低記録となった。

しかし、2025年のチームはまったく別物だ。ブルペンには不安が残る一方、先発陣は驚異的な充実ぶりを見せている。ここ30日間の成績では、ドジャース投手陣はWAR、FIP、予想防御率(xERA)でメジャー1位。三振率31%は2019年以来の高水準で、被打率.171は史上最低を更新するペースだ。

この好成績を支えるのが先発陣だ。

冬には投手補強として佐々木朗希、ブレイク・スネル、タナー・スコット、カービー・イェーツを加え、ファンの期待は高まった。FAでジャック・フラハティ、ウォーカー・ビューラーが去った穴を埋める狙いだった。山本由伸の復帰やクレイントン・カーショウの再契約もあり、さらにタイラー・グラスナウ、ダスティン・メイ、トニー・ゴンソリン、ボビー・ミラーらの復帰も見込まれ、ファングラフスは「メジャー最高のローテーション」と格付けした。

「今季は違う」と思った人も多かったはずだが、残念ながら「違わなかった」。

スネルはわずか2登板で肩を痛めて離脱。グラスナウは5試合、佐々木朗希は8登板したものの印象は薄く、その後は同じく肩の故障で長期離脱。メイは戦力としてカウントするには不十分で、最終的にはトレード。ゴンソリンは7先発の後に今季絶望。ストーンに至っては、一度もマウンドに立つことはなかった。ミラーはというと、大半を3Aで過ごし、防御率は6点近い。

9月16日までで、ドジャースの投手で110イニング以上を投げたのは山本由伸ただ一人。他球団は最低でも2人、多くのチームは3人以上がその基準を満たしている。

だが夏以降、状況は一変した。

  • カーショウ(5月復帰、防御率3.53)
  • 大谷翔平(6月復帰、防御率3.75、奪三振率33%)
  • グラスナウ(7月復帰、防御率2.66)
  • スネル(8月復帰、防御率2.97)
  • シーハン(7月加入、防御率3.23)

次々に先発が戻り、山本由伸も直近3試合でわずか3失点と好調。サイ・ヤング賞トップ5入りが見込まれる。夏まで故障者続出で低迷していたチームが、わずか数週間でここまで評価を覆した事実は驚きに値する。

こうした厚みは、デーブ・ロバーツ監督にとって贅沢な悩みを生んでいる。ワイルドカードシリーズを見据えると「先発が多すぎる」状況で、2019年ナショナルズのようにスターターをリリーフ起用する戦術が現実味を帯びる。

一方、ブルペンの不安は依然として残る。左腕偏重で、アレックス・ベシア、ジャスティン・ロブレスキー、ジャック・ドライヤー、アンソニー・バンダらが揃うが、信頼度にはばらつきがある。ベテランのスコットやイェーツ、マイケル・コペックが大事な場面で使われる可能性は低く、ブレイク・トレイネンも安定していない。

ここで浮上する疑問は三つ。

  1. カーショウをリリーフに回すのか、それともロースターから外すのか。
  2. 大谷やグラスナウを救援に起用できるのか。特に大谷はDHとの兼務が難題となる。
  3. 佐々木朗希の登板の可能性は。リハビリ登板では安定しないが、直近の救援登板では100マイルを連発し、代名詞のスプリットも健在だった。

昨年のチームとは全く異なり、数週間前の低迷ぶりの過去の話だ。ムーキー・ベッツも復調し、先発陣はフル稼働。ドジャースは明確な弱点=ブルペンを抱えつつも、豊富な先発という大きな武器を手にした。2025年の10月は、近年では珍しい“先発中心”のオールドスクールな戦い方が、このチームを再び頂点へ導くかもしれない。