山本にベッツ、スターが勝負強さ発揮し第7戦へ

勝敗を分けた九回の攻防

November 1st, 2025

ブルージェイズ1-3ドジャース】トロント/ロジャースセンター、10月31日(日本時間11月1日)

第6戦でカナダの戴冠は実現しなかった。山本由伸(27)がマウンドに立ち、ムーキー・ベッツが本来の姿を取り戻し、ドジャースが昨季王者の貫禄を見せた。激戦が続くワールドシリーズ(WS)は、第7戦までもつれ込むこととなった。WSが第7戦まで続くのは、2019年のナショナルズとアストロズ以来となる。

九回、ブルージェイズは、佐々木朗希(23)に対し、無死一塁からバージャーがセンターへ長打を放った。しかし、打球は外野フェンス下部に挟まり、センターのジャスティン・ディーンが両手を上げてボールデッドをアピール。代走のマイルズ・ストローと打者走者のバージャーは本塁まで到達していたが、結果的にエンタイトルツーベースの判定で無死二、三塁となった。

「現行ルールでは、実際にはあのボールをプレーし続けたほうがいいんだ。その後でボールがフェンスに挟まっていたかどうかをリプレイで確認できるからね」とドジャースのデーブ・ロバーツ監督は説明した。

「でもディーンはすぐにボールが挟まったことに気づいていたし、外野の審判もそのタイミングでプレーを止めた。結果的にはうまくいったし、ディーンの判断力は見事だったね」と称えた。

一方、ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督は「長い間野球界にいるけど、あんなのは初めてみた。流れが途切れてしまった」と振り返った。

ドジャースはここで、佐々木に変えて第7戦で先発予定だったタイラー・グラスナウを投入。1アウト後、アンドレス・ヒメネスのフライを左翼キケ・ヘルナンデスが好捕し、素早く二塁へ送球。飛び出したバージャーがアウトとなり、試合は劇的なダブルプレーで幕を閉じた。

「すごいシリーズになってるね。ここまで来たら第7戦までやるしかないよ」とキケは笑顔で答えた。

「全速力で突っ込んでいて、しかも二塁のすぐ近くだったから、あえて強く投げないようにしたんだ。ワンバウンドで(二塁手の)ミゲル・ロハスに届くと思ったけど、結局かなり強い送球になってしまった。あのプレーは自分の送球よりも、ロハスのキャッチのほうがずっと見事だったと思う」とこの日、WS初スタメンに名を連ねた二塁手を称えた。

「まさに背水の陣だった」とデーブ・ロバーツ監督は語った。

「全てを出し切って、勝利のためにできることをやるだけだ。あの時、朗希は少しキレを欠いていたし、グラスは空振りを取れる投手だ。彼に賭けたかった」

山本は第2戦を含むこれまでのポストシーズン2試合で完投していたが、この日は6イニングで降板した。それでも十分な働きでケビン・ゴーズスマンとの投げ合いを制し、三回の3得点を守り切った。

現行の7戦4勝制シリーズでは、第6戦に勝って第7戦に持ち込んだチームは、56回中35回(62.5%)でシリーズを制している。ブルージェイズもア・リーグ優勝決定シリーズでマリナーズを相手に逆転した例がある。

また、第6戦の勝者が敵地で第7戦を戦う場合、そのチームは22回中14回(63.6%)で勝利している。ポストシーズン全体の歴史でも、「勝てば突破/優勝、負ければ敗退」の試合を本拠地で行ったチームの通算成績は69勝67敗(7戦シリーズでは31勝29敗)だ。

ブルージェイズの本拠地は青一色に染まり、期待に満ちたエネルギーで包まれていた。試合前の国歌「オー・カナダ」の大合唱は、いつにも増して力強く響いた。

満員の観客が声を張り上げ、まるで祝宴のような雰囲気に包まれていた。

ゴーズマンが最初の2イニングで見せた圧巻の投球は、祝杯を予感させるものだった。ベテラン右腕は最初の6打者のうち5人を三振に仕留め、得意のスプリットで11回の空振りを奪った。

三回、ゴーズマンは依然として三振を量産していたが、ドジャース打線が目を覚ました。トミー・エドマンが二塁打で出塁し、2死で大谷を迎えた。一塁が空いていたため、このシリーズ5度目となる申告敬遠で歩かせたが、続く2番ウィル・スミスがタイムリー二塁打を放ち、エドマンが生還、大谷は三塁へ進んだ。

「明らかにそうすべき場面なら、彼からバットを取り上げる(=敬遠する)ことも当然やるよ」とシュナイダー監督は語った。

「ただ正直言って、ドジャース打線は1番から9番まで本当に強力だ。やってもやらなくても危険な状況になることがある。ウィル・スミス、フレディ・フリーマン、ムーキー・ベッツといったレベルの打者を相手にするのは、常に火遊びみたいなものだよ。走者を増やすリスクはあるけど、ケビンを信じて勝負する判断をした」

結果として、この判断が裏目に出た。次の打者は不振に苦しむムーキー・ベッツ。直近8試合で42打数6安打、8三振と低迷していた。しかし、ゴーズマンが3球続けて速球を投じると、ベッツは見逃さずレフトに弾き返し、2点を追加してドジャースが3-0とリードを広げた。

「チームのみんなのために結果を出せて最高の気分だったよ。もちろん自分のためにもいいプレーをしたいけど、それは正直あまり重要じゃない。俺はチームのためにいいプレーをしたいんだ」とベッツは語った。

この三回の3得点は、今シリーズでドジャース最大のビッグイニングとなった。山本にとっては大きな援護点となり、日本人右腕は多彩な球種でトロント打線を苦しめ続けた。

第2戦で20人連続アウトを奪い完投勝利を収めた時ほどの支配力はなかったが、山本は安定した投球を続けた。三回裏、バージャーが先頭打者として二塁打を放ち、2死後、右脇腹の負傷で第4、5戦を欠場していたジョージ・スプリンガーが外角のカットボールをセンターへ鋭く弾き返し、タイムリーとなって3-1に差を縮めた。

それでも山本は、要所で冷静さを失わなかった。

四回にはドールトン・バーショをダブルプレーに打ち取り、ピンチを切り抜けた。五回は走者を出しながらも、アンドレス・ヒメネスをライナーで仕留めて無失点。六回にはブラディミール・ゲレーロJr.に二塁打、ボー・ビシェットに四球を与え2死一、二塁としたが、最後はバーショを鋭く落ちるスプリットで空振り三振に斬り、最大の山場を乗り越え、ブルペンにバトンを渡した。

ロバーツ監督は七回に左腕ジャスティン・ロブレスキーを起用。2死からアーニー・クレメントが二塁打を放ち反撃の機会を作ったが、続くヒメネスを空振り三振に仕留め、反撃を断った。

ドジャース打線も三回以降は得点がなく、3-1のまま八回のマウンドを託されたのは佐々木朗希(23)。スプリンガーに詰まりながら、一塁線を抜かれるライト前ヒットを許し、ゲレーロに四球を与えるなど、ベストの投球ではなかったものの、続くビシェットとバーショを打ち取って再びピンチを脱した。