【パドレス4x−3レッズ】サンディエゴ/ぺトコパーク、9月8日(日本時間9日)
ジャクソン・メリルが放った大飛球は、ペトコパークの右中間に高々と舞い上がり、空中に漂ったのはわずか5秒ほど。しかし永遠にも感じられる時間だった。
ペトコ・パーク全体が息をのんだ。2死で走者2人が一斉に走り出し、メリルも全力で駆け抜けた。ついに打球が落下。中堅手TJ・フリードルがフェンス前で懸命にダイブしたが、グラブをはじいて転がった。
スタンドは大歓声に包まれた。走者2人が生還し、メリルは三塁へ滑り込んでポーズを決めた。まだ六回だったが、3点差を跳ね返したパドレスには休養十分の救援陣、そして熱狂する観客の後押しがあった。
「この試合は絶対に勝つつもりだった」とメリル。
その言葉どおり、数イニング後にパドレスは勝利をつかんだ。延長十回、フェルナンド・タティスJr.が犠牲フライを放ち、レッズに4−3で劇的、かつ重要な勝利。タティスJr.にとって通算4度目のサヨナラ打点で今季2度目だった。
パドレスはナ・リーグ西地区でドジャースと競り合いを続けている。依然1ゲーム差のまま。さらにワイルドカード争いでは、同じく敗れたカブスとメッツとの差を縮めた。
「最高だよ」と語ったのは、4度出塁したパドレスのDH、ギャビン・シーツ。
「どの試合もすごく重要だってことは、観客も分かっているし、両チームも分かっている。当然レッズもまだ争っている。これぞ9月のベースボールだね。こういう舞台に戻ってこられて、本当にここに来たいと思った理由がよく分かるよ」。
タティスが六回の反撃をけん引した。安打で出塁すると二盗を決め、シーツの2本目の二塁打(今季自己最多の25本目)で生還。さらにメリルの三塁打で同点に追いつき、パドレスが得意の勝ちパターンに持ち込んだ。
盤石の救援陣がきっちり試合を締めた。6人のリリーフが合わせて4回1/3を無失点。延長十回には、フェルミンの完璧な犠打が悪送球を誘い、その後タティスがレフトへ大飛球を放ってサヨナラ勝ちした。クロネンワースが本塁に生還した直後、タティスは一塁線上でチームメートにもみくちゃにされ、ユニホームを引き裂かれた。
「とにかく粘り続けた。それがこのチームの強みだ。フェレディのバント、タティの状況に応じた打撃。力み過ぎず、やるべきことをやった。本当にいい試合だったよ」
試合後、シルト監督はチーム一丸の勝利をたたえた。
大事な1勝でもあった。もちろんパドレスの焦点はナ・リーグ西地区制覇にある。だがワイルドカード1位をつかめば、地区優勝とほぼ同じ利点、つまりペトコパークでのワイルドカードシリーズ開催の権利を得られる。首位カブスとの差はわずか2ゲームだ。
同時にポストシーズン進出も近づいている。レッズのようにプレーオフ争いから外れかけている相手に勝つことは大きな意味を持つ。だが何より重要なのは、パドレスが3連勝を飾り、直前まで11試合で9敗を喫していた姿ではなく、本来の姿を取り戻しつつあることだ。
「苦しい時期だった。できるだけ早く抜け出す必要があった。打線が復調して、投手陣もすごくいい仕事をしている。いまはチーム全体で完成度の高い野球ができていると感じている」
3安打1打点と活躍したシーツは、そう語った。
試合は不穏な立ち上がりだった。先頭のTJ・フリードルが、ダルビッシュから先頭打者本塁打。原因はピッチコムの不具合だった。直後、ダルビッシュと捕手のフェレディ・フェルミンがマウンド前で激しく言葉を交わした。
ダルビッシュはツーシームを要求していたが、何らかの理由でフェルミンの受信機に伝わらなかった。一方フェルミンはカーブを要求。投球間隔の制限が迫る中、捕手とサインを違えるのを避けるため、ダルビッシュはカーブを投じた。その結果、フリードルに打ち込まれた。
それでもダルビッシュは動じなかった。最終的な数字(5回2/3を投げ3失点)以上に内容は良かった。後を受けた救援陣も盤石だった。
ジェレマイア・エストラーダとエイドリアン・モレホンが七回を無失点でつなぎ、八回はメイソン・ミラーが圧巻の投球。ロベルト・スアレスは九回をわずか11球で片付け、十回も続投。5人を連続で打ち取り、シルト監督は最後に左腕ワンディ・ペラルタを起用。左打者フリードルをレフトフライに打ち取り、舞台はタティスへと託されたのだった。
