毎オフシーズン、各球団は将来的に大きく飛躍する可能性のある、過小評価されている選手を求めてフリーエージェント市場をくまなく探す。
そのようなFA選手が翌年にチームのキーマンとなれば、それはまさに「特別な掘り出し物」と言える。特に、その選手が救援投手であれば価値はさらに大きい。リリーフ投手は結果が読みにくいため、うまくハマったときのインパクトが非常に大きいのだ。
今オフ、その「掘り出し物」になり得る救援投手が一人いる。直近シーズンの成績は不安定だったため、市場価値は下がる可能性がある。しかし、各種指標を詳しく分析すると、評価すべきポイントは多い。
それがルーク・ウィーバーだ。2026年に32歳を迎える右腕は、各種指標の傾向を見る限り、獲得するチームにとって大きな戦力となる可能性がある。
ヤンキースの投手は常に厳しい目にさらされ、悪い登板があればすぐに批判の対象となる。2025年のウィーバーも、ニューヨークで何度か不出来な登板があった。しかし、それだけで「信頼できない投手」と断言できるだろうか。
ここからは、「掘り出し物」としてのウィーバーの潜在能力を見ていきたい。
リリーフ転向で飛躍も、苦戦した2025シーズン
ヤンキース加入前、ウィーバーは主に先発投手として起用されてきた。2016年のデビューから2022年まで、カージナルス、ダイヤモンドバックス、ロイヤルズで通算防御率4.79を記録。その後2023年にはレッズとマリナーズで登板し、シアトルからニューヨークへのトレードを経てヤンキースに加入した。
ヤンキースは2024年、ウィーバーを完全にリリーフへと転向させたが、これが大きな成功となった。
2024年シーズン、ウィーバーはヤンキースで62試合に登板し、防御率2.89をマーク。速球とチェンジアップのコンビネーションを武器に、対戦打者の31.1%を三振に仕留める自己最多の奪三振率を記録した。
ヤンキースがワールドシリーズまで勝ち進んだポストシーズンに入ってからもその好調は続き、一時期は「当時リーグ最高のリリーフ投手」と評してもおかしくないほどの存在感を示した。
しかし直近のシーズンでは、少なくとも表面的な数字だけを見ると、大きく後退したように映る。2025年序盤の数カ月までは前年の支配力を維持していたが、6月上旬に左ハムストリングを痛めて離脱。復帰後は苦しい投球が続いた。
負傷者リスト入り時点での防御率は1.05と驚異的だったが、約3週間後に復帰すると別人のような内容となり、その後は5.31まで悪化。特に7月と9月はそれぞれ防御率7.15、9.64と大きく崩れた。
さらにポストシーズンでは、レッドソックスとブルージェイズを相手にした最初の2試合で、アウトをひとつも奪えず5失点を喫している。
こうした経緯だけを見ると、不安材料が多いのは間違いない。しかし、表面上の成績が全てではない。
本当に投球が悪化したのか?
表面的には、2025年のウィーバーのシーズンは不安定に見えた。しかし、いくつかの重要な指標を詳しく見ていくと、2024年のキャリア最高シーズンを上回る部分すらある。
期待値ベースの防御率(xERA)、予測打率(xBA)、予測加重出塁率(xwOBA)、さらには打者のボール球に対するスイング率(チェイス率)など、主要指標はいずれも2025年の方が2024年より優れていた。特にチェンジアップは、2025年に入ってさらに効果的な武器となっていたことが分かる。
2024年
- xERA(予測防御率):3.31
- xBA(予測被打率):.200
- xwOBA(予測加重出塁率):.283
- チェイス率:31.9%
- チェンジアップのランバリュー:+3
2025年
- xERA(予測防御率):3.01
- xBA(予測被打率):.196
- xwOBA(予測加重出塁率):.272
- チェイス率:32.8%
- チェンジアップのランバリュー:+5
ウィーバーが昨季後半からポストシーズンにかけて苦しんだ理由のひとつとして挙げられているのが、投球のクセを見抜かれていたことだ。もちろん、シーズン中に修正を試みただろうが、望んだような結果にはつながらなかった可能性がある。
シーズンの真っ最中に投球フォームを修正することは、非常に難易度が高い。オフシーズンを使ってじっくりと見直すことで、課題を克服することができる可能性は十分にある。
ウィーバーのFA市場での注目度を高めている要素がもうひとつある。それは、本人が先発復帰の可能性にも前向きな姿勢を示している点だ。
「先発投手でいることは、正直言ってメジャーリーグで一番の仕事だと思う。特にうまくいっているときはね」とウィーバーは9月、MLBネットワークのジョン・ヘイマンとジョエル・シャーマンのポッドキャストで語っている。
もっとも、これまで先発投手としてのキャリアが順風満帆だったとは言いがたい。そして、リリーフ専任へと役割を変えたことで、新たな活路を見いだしたことも明らかである。
「自分の活きる場所をつかんだ感じだった。ちょっと変わったことをやれる能力を見いだして、先発として積み重ねてきた経験を、今の投球にうまく生かせるようになった」とウィーバーは語っていた。
先発に戻る用意があるという情報は、ウィーバーに関心を示す球団の幅を広げることは間違いない。ただし、実際に先発へ復帰した場合、どこまで結果を残せるかは未知数だ。
ひとつだけ確かなのは、「2025年のウィーバーは、見た目の数字以上に良かった」ということである。
フィットしそうな球団
よく言われるように投手はいくらあっても困らない。
この言葉は何度も現実に証明されてきている。2025年に苦戦したとはいえ、ウィーバーの市場価値が一定のレベルを保つであろう理由でもある。
では、どの球団がウィーバーの加入によって最も恩恵を受けるのか。
まず挙げられるのは、ここ2年ウィーバーをブルペンで起用してきた“現所属”のヤンキースだ。ウィーバーとデビン・ウィリアムズがそろってFAとなる以上、ブルペン補強は確実に取り組まなければならない課題と言える。
一方で、宿敵レッドソックスが獲得候補に浮上しているという噂もある。ボストンは2025年にリーグ屈指のブルペン陣を擁していたが、マッスライブの報道によると、FAとなるスティーブン・マッツとジャスティン・ウィルソンの穴を埋めるリリーフ投手を探しているという。
すでにゲレット・ウィットロックとアロルディス・チャップマンという柱がいるなかにウィーバーを加えれば、ボストンのブルペンは「三本柱」と呼べるレベルの強力な布陣になる可能性がある。
2023年にサプライズのワールドシリーズ進出を果たして以降、2年連続でプレーオフ進出を逃しているダイヤモンドバックスにとっても、ウィーバーは補強のフィット候補となり得る。
ダイヤモンドバックスの昨季ブルペン防御率は4.82で、メジャー全30球団中27位。下にはエンゼルス、ロッキーズ、ナショナルズしかいない。再浮上を目指すのであれば、救援陣の強化は最優先事項で、すでにウィーバーとの縁もある。
最後に、アスレチックスはどうだろうか。今後数年で再び上位争いに戻ることを目指しており、特に攻撃面には明るい材料が多い。ア・リーグ新人王のニック・カーツと新人王投票2位のジェイコブ・ウィルソンを筆頭に、ブレント・ルッカー、ローレンス・バトラーらを擁し、打線は充実してきている。
しかし、点は奪うだけではなく防がなくてはならない。アスレチックスの昨季ブルペン防御率はメジャー24位と下位に沈んでおり、この部分でのテコ入れは不可欠で、ウィーバーのような投手を加える余地は十分にある。
