【ブルージェイズ4-3マリナーズ】トロント/ロジャースセンター、10月20日(日本時間21日)
ジョージ・スプリンガーが、トロント、いや、カナダの記憶に永遠に刻まれる瞬間をつくった。
球団史に残る勝ち越しの特大ホームランを放つと、右足をかばいながらもベースラインを跳ねるように駆け上がり、叫び声を上げた。その姿はまるで、32年前にジョー・カーターが優勝を決めた一撃のあと、同じラインを駆け抜けたときのようだった。
あの1993年以来、ブルージェイズが再びワールドシリーズの舞台へ戻ってくる。そのきっかけを作ったのが、他でもないスプリンガーだ。
スプリンガーは、5年前、この瞬間のためにトロントにやって来た。ブルージェイズが6年1億5000万ドル(約228億円)の大型契約を結んだのは、若き主軸のゲレーロJr.やビシェットを中心に「本気で勝ちにいく」姿勢を野球界に示すものだった。ここまで時間はかかったが、あの一振りがすべてを報いてくれた。
今ポストシーズン、2015、16年のチームにいたスター選手たちが次々と始球式に登場した。
ラッセル・マーティン、ケビン・ピラー、エドウィン・エンカーナシオン、ジョシュ・ドナルドソン、ホセ・バティスタ、マルコ・エストラーダ。
トロントで10年にわたって語り継がれてきた名選手たちだ。
だが、あのチームはALCSを越えることができなかった。スプリンガーは違う。ただ称賛される存在ではなく、「レジェンド」として語られることになるだろう。この勢いのまま強敵ドジャースを打ち破ることができれば、さらにその名は大きく刻まれる。
このスプリンガーの一発は、第7戦で複数点ビハインドから、七回以降に逆転弾を放った史上初のホームラン。ブルージェイズが49年の球団史で第7戦を戦ったのは、1985年のロイヤルズ戦(ALCS)での1回だけ。今回は、その雪辱も果たす歴史的勝利となった。
新たなブルージェイズ世代のファンにとって、この瞬間がコア・メモリーになる。かつての「バティスタのバットフリップ」がトロントとカナダの野球を象徴したように、スプリンガーの一撃は、また新たな時代の象徴となった。
