スプリングトレーニングが始まったばかりだが、既にMLBのビッグネームたちが同じ箇所の負傷に苦しんでいる。
それが有鈎骨(ゆうこうこつ・hamate bone)と呼ばれる手のひらの付け根の小指側にある骨だ。通常は約2.5センチ未満の小さなくさびの形をしており、「有鈎突起(Hook of the Hamate)」と呼ばれる小さなフック状の突起を持っている。手根管の屋根を形成する横手根靱帯の付着部として重要な役割を担っているが、非常に脆弱であるという欠点もある。
今週になって、メッツの遊撃手フランシスコ・リンドーアと、ダイヤモンドバックスの外野手コービン・キャロルがそれぞれ有鈎骨を負傷し、開幕戦出場が危ぶまれている。さらにオリオールズは、MLBパイプラインで全体1位プロスペクトに選ばれていた若手二塁手ジャクソン・ホリデイが12日(日本時間13日)に有鈎骨摘出手術を受ける予定で、これにより開幕戦を欠場する可能性が高いと発表した。
メッツのカルロス・メンドーサ監督は11日(同12日)、リンドーアが同日、左手の有鈎骨の手術を受けると発表し、復帰まで約6週間を要する見通しであると明かした。キャロルは10日(同11日)のライブBP中に右手の有鈎骨を骨折し、11日に手術を受ける予定で、少なくとも今回のワールドベースボールクラシックに米国代表として出場することは不可能となった。
では、この小さな骨が、なぜメジャーリーガーたちにこれほど大きな影響を与えているのだろうか。有鈎骨と野球の関係について、知っておくべきポイントを整理する。
なぜ野球選手は有鈎骨骨折を起こしやすいのか?
野球選手はバットのグリップを握る際、グリップエンドがこの小さな突起部分に直接当たる形になるため、一般の人よりも有鈎骨骨折を起こしやすい。何千回にも及ぶスイングによる直接的な圧迫が、下側の手(右打者なら左手、左打者なら右手)の骨に疲労骨折を生じさせ、時間とともに骨を弱体化させる。
打撃時の振動が有鈎突起のある手のひら部分へ直接伝わるため、ファウルチップや強いライナーなどに限らず、どのような打球でも負傷の原因になると言われている。例えば、ハーフスイングのような比較的軽い動作でも、急激にスイングを止める動きが同様の負荷を生むため、負傷のリスクはある。実際、ハーフスイングはこれらの負傷の最も一般的な原因とされている。
有鈎骨骨折は診断しやすいのか?
必ずしも容易ではない。手のひらの痛みや握力の低下があれば疑われるが、骨が小さく位置も特殊であるため、レントゲンでは鮮明に写らないことがある。そのため、骨折を確定するにはCT検査やMRI検査が必要となる場合が多い。
手術の内容やリスクは?
多くの場合は摘出される。有鈎骨は血流が乏しく、自然治癒しにくい骨である。加えて、非常に小さいため、固定手術を行っても成功しないケースが多い。プロスポーツの世界では時間が極めて重要であるため、最も現実的な選択肢として骨片を摘出する方法が取られるのが一般的だ。
あらゆる手術に一定のリスクが伴うように、ある程度のリスクは存在する。この場合、神経機能の障害や手のひらの鈍い痛みが残る可能性がある。しかし、適切なストレングスおよびコンディショニングプログラムによってこれらの問題は改善が可能であり、一般的には低リスクの手術とみなされている。
なお、回復まで通常は4週間から8週間かかるとされる。
手術の成功確率は?
高いと言って良いだろう。2020年に『American Journal of Sports Medicine』に掲載された研究では、261人のプロ選手を対象に調査が行われ、そのうち81%が同等またはそれ以上のレベルで復帰したことが示された。
もちろん、全員が順調に回復するわけではない。近年の例としては2023年のマイク・トラウトが挙げられる。左有鈎骨を骨折し、7月上旬に手術を受けたが、8月22日に1試合出場したのみで、その後は痛みと違和感が残ったため残りのシーズンには出場しなかった。
それでも大半の選手は良好な結果を得ている。ジャンカルロ・スタントン(2015年)、ホセ・ラミレス(2019年)、マット・オルソン(2019年)、ムーキー・ベッツ(2024年)など、多くのスター選手がこの手術を受けている。さらに言えば、ケン・グリフィーJr.も1996年6月に同手術を受け、約1カ月離脱したにもかかわらず、その年のア・リーグMVP投票で4位に入っている。
今回有鈎骨を痛めた新たな選手たちも、同様に成功することを願いたい。
