2025年の野球界における最大のストーリーの一つは、大谷翔平の投手復帰だった。
ドジャースでの投手デビュー戦でいきなり100マイル(約161キロ)を計測したことから、野球史上最高とも言えるパフォーマンスでチームをワールドシリーズへ導いたプレーオフのブルワーズ戦での衝撃的な快投まで、実に素晴らしい復帰劇となった。
MLBネットワークで本日放送された「翔平デー」を記念し、2026年にドジャースのユニフォームで初めてフルシーズンを投げることへの期待を込めつつ、マウンドでの大谷のシーズンを振り返る。
ドジャースでの投手としての1年目、その5つのハイライトは以下の通りだ。
1)球速アップ
2025年の投手・大谷について最も驚くべきことは、2度目の肘の大手術を経たにもかかわらず、どういうわけか以前より球速が増して戻ってきたことだ。
同じような境遇の投手であれば、特に復帰1年目は球速が落ちると予想するのが自然だろう。以前の球速を維持するだけでも、十分な成果だったはずだ。しかし、球速が増すとは。誰も予想できなかったことだ。
2025年の大谷の直球は、平均98.4マイル(約158.4キロ)、最速101.7マイル(約163.7キロ)といずれもキャリアハイを記録した。平均98.4マイル(約158.4キロ)という数字は、腕を負傷する前の2023年よりも1.5マイル(約2.4キロ)以上速く、先発投手の中でトップ5に入った。
2025年 フォーシーム平均球速ランキング(先発投手)
- 1. ハンター・グリーン:99.5マイル(約160.1キロ)
- 2. ジェイコブ・ミジオロウスキー:99.2マイル(約159.6キロ)
- 3. バッバ・チャンドラー:99.0マイル(約159.3キロ)
- 4. ジョー・ボイル:98.6マイル(約158.7キロ)
- 5. 大谷翔平:98.4マイル(約158.4キロ)
- 5. チェイス・バーンズ:98.4マイル(約158.4キロ)
また、大谷は2025年、かつてない頻度で100マイル(約161キロ)の大台に到達しており、レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて49度を記録した。投じた速球の10球に1球以上が3桁(100マイル以上)に達したことになる。
しかし、速くなったのは直球だけではない。大谷はすべての変化球においても平均球速のキャリアハイを更新した。つまり、スイーパー、スライダー、スプリット、そしてカーブの切れ味がさらに増したということだ。
言い換えれば、2026年を迎える大谷のボールは、全般的にこれまで以上にすごみを増している可能性がある。以前でも十分すぎるほどだったというのに。
2)奪三振と与四球の比率は驚異的
大谷は常にメジャー屈指の衝撃的なボールを持っているため、常に大量の三振を奪ってきた。その傾向は2025年も変わらなかった。
しかし、変化した点があるとすれば、極めて高い奪三振率を維持しながら、四球を大幅に減らしたことだ。14試合の先発で47イニングを投げただけとはいえ、2026年に向けて非常に印象的な数字である。
昨シーズンの大谷の奪三振率33.0%は、219三振を記録したベストシーズンの2022年にマークした33.2%という投手としてのキャリアハイに次ぐ数字だった。一方、与四球率4.3%はキャリアベストで、22年の6.7%よりも優れた数字だ。
これらを合わせると、大谷のK/BB(奪三振と与四球の比率)は驚異的な6.89となる。これは10試合以上に先発した全投手の中で、サイ・ヤング賞を受賞したタリク・スクーバル(7.30)に次ぐ2位の数字だ。
大谷の奪三振率と与四球率の差は28.2ポイントで、これもロイヤルズのコール・レーガンズ(30.4ポイント)に次ぎ、同条件の先発投手の中で2番目に大きな差だった。
こうした指標は、大谷が2026年にドジャースでフルシーズン先発できれば、再び200奪三振の大台を突破することを示唆している。
3)強烈な新型スライダーを加えた
大谷の最大の特長の一つは、一見すると即座に、厄介な新球種をレパートリーに加えることだ。
2025年以前にも、カットボール(2021年習得)やシンカー(2022年習得)でそれを何度もやってのけた。そして2025年、新たな高速スライダーを加えた。
肘の手術を受ける前のシーズンにおいて、大谷の最大の武器はスイーパーだった。これは従来のスライダーと比べて横方向への変化量が大きく、球速はやや遅い変種だ。対照的に、新型スライダーは従来のスライダーはより球速があり、変化は小さく鋭く、縦方向の変化が大きい。
このスイーパーは2025年も変わらぬ威力を発揮した。だが、大谷は昨シーズン、このスイーパーに加え、より鋭い従来のスライダーも投げ始めた。
大谷の新しいスライダーは80マイル台後半(約140キロ台)で変化はわずか数インチだが、即座に大谷にとって最も空振りを奪える球種の一つとなった。大谷は昨シーズン、この新しいスライダーで44%の空振り率を記録し、この球で決着がついた27打席のうち15個の三振を奪った。対戦打者を打率.154に抑え、長打は1本も許さなかった。
大谷はメジャーでも屈指の多彩な球種を持っており、新球種を含め、投げるボールすべてが実に素晴らしい。
4)プレーオフに間に合うようスプリットを復活させた
もっとも、スイーパーが常に大谷の代名詞だったわけではない。メジャーに来た当初、その代名詞はスプリットだった。
大谷のスプリットは、ある時期、野球界で最も打てない球だったかもしれない。しかし、主に制球難が原因で、ここ数シーズンはほとんど投げなくなっていた。
そのすべてが2025年のポストシーズンで変わった。大谷は1年で最も重要な試合のためにスプリットを復活させた。そして、それはかつての支配的な大谷のスプリットのように見えた。
大谷は地区シリーズ(NLDS)でフィリーズの最強打者であるブライス・ハーパーとカイル・シュワーバーから三振を奪うためにスプリットを使った。さらに、リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)のブルワーズ戦では、見事な先発登板における最後の5つの三振を記録するのにもこの球を使った。
もし、大谷が昨年の10月のように、2026年シーズンを通してスプリットを操れるなら、要注意だ。それは、大谷が投げる他のあらゆる球種に加え、MLBで最も厄介な球種の一つが戻ってくることを意味するからだ。
5)新たにワインドアップ投法を披露した
投手のメカニックの調整は微細なものだが、2025年に復帰した大谷は、1つ大きく明白な変更を行った。ワインドアップを取り入れたのだ。
大谷はメジャーリーグのキャリアにおいて、一度もワインドアップを使ったことがなかった。走者がいない場面でも、常にセットポジションから投げていた。最後にワインドアップを使ったのは、日本でのプロキャリアの初期だった。
しかし2025年、大谷はドジャースに新しい投球フォームを持ち込んだ。そして、その新しいワインドアップは機能した。
1球単位で見ると、2025年の走者なしの場面、つまりワインドアップから投げている時の大谷は、メジャーキャリアの過去どのシーズンよりも優れた投手だった。
これはスタットキャストの「ピッチング・ランバリュー」という指標で測定したものだ。これは投手が投じたすべての球の結果を基に、阻止した得点という観点でトータルの影響度を測る。
2025年の走者なしの場面における大谷のピッチング・ランバリューは、投球100球あたりプラス1.6点の阻止で、自己ベストだった。そして、2025年のハーフシーズンだけで、走者なしの場面で生み出したピッチングバリューの合計はプラス11点の阻止となり、フルシーズンを戦ったベストシーズンの2022年のプラス14点にほぼ匹敵する数字だった。
大谷は投手として常に進化している。今年もまた何か新しい秘策を用意していることだろう。
