2013年ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)第2ラウンドの台湾戦、日本は2-3で1点を追いかける九回2死で、二塁に同点ランナーを置き、東京ドームを埋め尽くす大観衆の前で打席に立ったのは、ベテラン内野手の井端弘和だった。
「スタジアム全体が僕を応援してくれていました。『ここでヒットを打ったらどうなるだろう』という思いと、『打てなかったらどうなるんだろう』と思いながら打席に向かいました」
現在、侍ジャパンの監督を務める井端はそう振り返る。
カウント2-2からの甘く入った直球を迷わずスイングすると、遊撃手の頭上を越えるライナーで同点打となり、日本は延長戦の末4-3で逆転勝ちを収めた。
「信じられないような体験でした。キャリアの中でも最高の瞬間の一つです。あれだけ多くの人が自分を応援してくれるなんて、まさに夢のようでした。子供のころからずっと、こういう場面で打席に立つことを想像することはありましたが、実際に打てた時には『野球をやってきて良かった』と思いました」
日本で8度のオールスター選出、7度のゴールデングラブ賞、5度のベストナインと輝かしい実績を誇るが、世界最高峰のメジャーリーグでプレーする機会はなかった。それでも2013年大会では18打数10安打と活躍し、大会ベストナインにも選出された。メジャーリーガーがそろう中での快挙を「キャリアの中でも誇りに思う瞬間」と語り、「年齢的にもキャリア後半で最後の代表の機会かなと思ったので、2013年大会にはすべてを懸けました」と振り返る。
現在、井端は前回王者、侍ジャパンの新指揮官を務める。前任の栗山英樹監督の契約満了に伴う後任を務め、栗山監督とのチーム作りの違いを井端は少し間を置き、こう答えた。
「チームがどう一つになるかが大事だと思います。メジャーリーガーとNPBの選手が集まった時にどう組み合わせるか。それが2026年ではさらに重要になると思いますし、栗山さんも同じような考え方だったと思います」
U-15代表監督も務めてきた井端は、プレミア12で当時稲葉篤紀監督から引き継いだ国際大会27連勝を維持したが、決勝で台湾に敗れた。
「プレミア12はWBCより日程がタイトで、投手起用にも制限がありました。大会が進む中で柔軟性を欠いた部分もあり、WBCではより多くの投手を有効に使う方法を考えています。同時に、台湾のチームには日本がまだ気付いていなかったような激しさがありました」
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)まで1年を切る中、井端監督はこう語る。
MLB: 日本代表はアメリカと同じくスター選手が多すぎてチーム編成が難しそうだが、どうバランスを取っていきますか。
井端:先発かどうかに関わらず、まず目の前の試合に勝つことが目標。そして最終的な目標は世界一、優勝で、選手たちは全員そのために戦ってくれると思います。
MLB: 日本が3度WBCを制覇し、国際大会27連勝を達成できた秘訣は。
井端:ドミニカ共和国やアメリカ、短期決戦でベストメンバーをそろえるのはどの国にとっても難しさは同じだと思います。日本は全員が同じ目標を持って、結束がよりできただけだと思っています。
MLB: 山本由伸、佐々木朗希、千賀滉大、今永昇太らMLB組に加え、高橋宏斗もいる。プレミア12での投手起用を踏まえ、WBCではどう考えていますか。
井端:まだ投手陣を評価中だが、新しい投手も出てきています。2023年大会では大谷翔平も佐々木朗希も4回以上投げていません。春先で調整が難しい部分もあると思うので、今回は3回程度の短いイニングで全力投球させる起用も考えてます
MLB: U-15代表監督として若手育成もされているが、2026年大会で期待する若手は。
井端: 野手は難しいですが、投手では注目選手がいます。数年前からA代表に呼んでいる金丸夢斗(中日)、今季さらに進化している今井達也(西武)ら、楽しみな選手がいます。
MLB: 大谷翔平選手の存在はチームにとってどれほど重要でしょうか。
井端:投打両方できるので選手枠でありがたいですね。加えて他の選手に「自分にもできるかもしれない」と思わせる存在感がある。2023年大会ではダルビッシュ有とともにリーダーシップを発揮してくれました。
MLB: 日本のファンの応援はすごいですよね。
井端:そうですね。野球を愛してくれていますし、WBCになると普段は野球を観ない人も応援してくれます。人口減少で野球人口も減る中、この興奮を伝えていきたいと思っています。
