カブス・ホートンがサイ・ヤング賞を狙うための3つの課題

今季は後半戦に大活躍し、新人王投票2位にランクイン

3:00 AM UTC

カブスのケイド・ホートンは後半戦の歴史的な活躍により、ナショナル・リーグの新人王投票で2位にランクインした。この勢いをメジャー2年目に持ち込むことができれば、さらなる好成績も期待できるだろう。

もしホートンが課題を克服し、好調を維持すれば、来季はナ・リーグのサイ・ヤング賞争いに加わることも不可能ではないかもしれない。もちろん、これは高いハードルであり、ポール・スキーンズ(パイレーツ)、クリストファー・サンチェス(フィリーズ)、山本由伸(ドジャース)ら好投手が揃っている以上、競争は熾烈なものになる。しかし、ホートンは後半戦の12先発で防御率1.03をマークしており、少なくともサイ・ヤング賞を狙えるチャンスはあると言える。

ここではホートンが2026年のサイ・ヤング賞を狙うために克服しなければならない3つの課題について見ていく。

【1】フォーシームでより多くの空振りを奪う

一流の投手はどんな球種でも空振りを奪うことができる。ホートンはデビューイヤーの今季、ほとんどの持ち球で好成績を残したが、最も使用頻度が高い球種で空振りを奪うのに苦労した。

ホートンは今季、フォーシームが全投球の半分以上を占めていたが、フォーシームの空振り率は14.7%にとどまった。これは今季フォーシームを500球以上投げた152人の中で138位だった。フォーシームの被打率.258、被長打率.355は決して悪い数字ではないが、スタットキャストの指標はホートンが運に恵まれていたことを示唆している。打球の質から算出される期待被打率は.286、期待被長打率は.481と実際の成績よりもかなり高かった。

では、ホートンはどうすればフォーシームを最大限に活かせるのだろうか。水平方向(横方向)の変化量を増やすのが効果的かもしれない。ホートンのフォーシームは利き腕方向への変化量が0.1インチ(約2.5ミリ)しかなく、かなり少ない部類に入る。平均95.7マイル(約154キロ)とすでに球速は十分に出ており、変化量を増やすことで大きな効果を得られるはずだ。

ホートンにとって、奪う三振の数を増やすことは非常に重要だ。今季は118イニングで97三振にとどまっており、サイ・ヤング賞の有力候補となるためには三振率を上げていく必要がある。短縮シーズンの2020年を除くと、200三振未満でサイ・ヤング賞を受賞したのは、ナ・リーグでは2006年のブランドン・ウェブ(178三振)が最後である。

【2】低い打球を打たせる

「引っ張り方向の非ゴロ打球」はカブスの主力3人(カイル・タッカー、ピート・クロウ=アームストロング、鈴木誠也)をはじめ、多くの打者にとって今季の成功の大きな要因となっていた。したがって、ゴロの打球を増やしたり、引っ張り方向の打球を減らしたりすることは、ホートンが取り組んでいくべき課題となる。

ホートンが今季記録した「引っ張り方向の非ゴロ打球」の割合18.3%は決して悪い数字ではないが、メジャー平均(16.7%)より少しだけ高かった。これは引っ張り方向の打球が特に多かったわけでもなく、非ゴロ打球(=フライ、ライナー、ポップフライではない打球)が特に多かったわけでもなく、それぞれの割合が少しずつ平均を上回った結果だった。1つだけ指摘するとすれば、メジャーではフライとライナーの割合がほぼ同じになるが、ホートンはフライ(29.0%)のほうがライナー(20.7%)よりもかなり多かった。

「引っ張り方向の非ゴロ打球」の割合が低いことは、投手が成功するための必須条件ではない。たとえば、今季のサイ・ヤング賞受賞者であるスキーンズは17.7%でホートンと大差なく、メジャー平均より高かった。しかし、ホートンには明確な改善の余地がある。主要な5球種すべての平均打球角度が8度以上となっており、特にスイーパーは24度と突出して高かった(15度を超えたのはスイーパーだけ)。もしホートンが危険なフライ打球を減らし、弱いゴロを誘発する方法を見つけ出すことができれば、より効率的にアウトを重ねていくことができるはずだ。

【3】変化球のクオリティを磨き続ける

フォーシームやシンカー(被打率.400、被長打率.733)がよく打たれていた一方、ホートンはチェンジアップ、スイーパー、カーブで大きな成功を収めた。これらの変化球の質をさらに高めることができれば、2026年にサイ・ヤング賞争いに加わる可能性はグッと高まるだろう。

ホートンは今季、右打者を打率.184(206打数38安打)に封じたが、これは右打者に対してスイーパーが大きな武器となっていたからだ。今季2番目に使用頻度が高かったスイーパーは、被打率.171、被長打率.343の好成績をマーク。空振り率も37.6%と高かったが、ときどき痛打を浴びた。今季の被本塁打10本のうち5本はスイーパーを打たれたものであり、球種別では最も多かった。

左打者にはチェンジアップが有効だった。メジャーでも屈指の球種であり、ホートンの最大の武器でもある。チェンジアップの被打率はわずか.115(52打数6安打)で、許した長打は二塁打2本だけ。空振り率は驚異の47.8%を記録し、今季チェンジアップを200球以上投げた投手の中で3番目に高かった

カーブも左打者に有効で、被打率.205、被長打率.273を記録。ただし、空振り率は24.7%にとどまっており、スイーパーとチェンジアップには及ばない。もしホートンがカーブでより多くの空振りを奪えるようになり、スイーパーによる被本塁打を減らし、優秀なチェンジアップを維持できれば、不安の残る速球(フォーシームとシンカー)を補完する完璧な武器となるだろう。