巨人時代の元チームメイトが語る菅野智之の姿

メジャー経験もある仲間が菅野を応援

June 3rd, 2025

2013年から2024年にかけて、菅野智之は日本球界を代表する投手の一人だった。その12年間で、様々な選手と共にプレーしてきたが、その中にはメジャーリーグからやってきた選手たちも多くいた。

そして今季、菅野は自らがその「海外に挑む新人」として新たなスタートを切っている。

「以前は逆の立場だった。アメリカから来た選手たちは、外国である日本に来て、いろんな感情を抱えていたと思う。でも今は自分がその立場にいる。日本からアメリカに来てプレーする中で、『あのとき彼らはこう感じていたのかな』と思うようになった」と菅野は語る。

今回は、かつて日本でともに戦った4人のMLB経験者に、菅野との思い出や、彼のボルチモアでの活躍についてコメントをもらった。

  • テイラー・ヤングマン(MLB通算3年、投手、2018、2019年巨人に在籍)
  • スコット・マシソン(MLB通算3年、投手、2012〜2019年巨人に在籍)
  • ケーシー・マギー(MLB通算8年、内野手、2013年楽天、2017、2018年巨人に在籍)
  • マイルズ・マイコラス(MLB通算10年、現役投手。2015〜2017年巨人に在籍)

菅野は、読売ジャイアンツの元監督で日本野球殿堂入りも果たしている原辰徳の甥で、2012年のドラフトでは当時その叔父が指揮を執っていたジャイアンツから指名された。同年のドラフトには大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ指名)なども含まれていたが、その中でも菅野の存在感は際立っていた。

マシソン:しばらくの間、大谷よりも菅野のほうが話題になっていたくらいだった。

マギー:彼がドラフトされたときは本当にビッグニュースだった。叔父さんがジャイアンツの監督で、日本野球界のレジェンドだからメディアも放っておかないよ。自分も色々とコメントを求められたのを覚えている。

マシソン:ドラフトされる前から存在は知っていたしチーム内でも注目されていた分、期待値もかなり高かった。それでもルーキーとして入ってきたときから自信に満ちていたし、エースになるんだっていう空気をまとっていた。あの年齢であの雰囲気はなかなかのものだったと思う。

マギー:僕は少し特殊な立場で彼を見ていたと思う。というのも、初めて日本に行った2013年に自分は楽天でプレーしていて、春季キャンプでの彼の登板を見たんだ。それから5、6年経って今度は同じチームでプレーすることになったけど、その成長ぶりには驚いた。若い頃から良かったけど、そのときは完全にピークを迎えていた。

ヤングマン:あの勤勉さと若手からの信頼の厚さ。とにかく「チームの顔」って感じだったよ。

マイコラス:自分が入団したとき、周りから「あいつを見ておけ、うちで一番の選手だから」って言われた。それで試合をチェックして、投球を見て、練習の様子もずっと観察していた。ハードワーカーで、すごく才能のあるアスリートだったよ。

菅野はNPBで沢村賞2回、セ・リーグMVP3回、オールスター選出8回。通算1857回を投げ、防御率2.43という素晴らしい成績を残した。

マギー:彼の持ち球は、いわゆる「日本式」とはちょっと違っていた。日本の投手は、直球、落差のあるカーブ、そしてスプリットとかフォークみたいに落ちる変化球という組み合わせが多い。でも彼はツーシームとカットボール、スライダーがメインで、直球は時々混ぜる程度。そういう意味で変化球の構成が独特だった。

ヤングマン:名前を挙げて比較するのはあまりよくないかもしれないけど、投球術に優れている点で、グレッグ・マダックスみたいな印象だった。上下左右、自在に球を動かせるし、ゾーンを巧みに使うことができる。球威はマダックスよりあるけど、投球術に長けていて、引き出しが豊富で、とにかく打者との駆け引きが上手だった。

マシソン:プロの環境に慣れてきてからは、さらに良くなった。2年目か3年目には、「いつか絶対メジャーに行く」と思ったよ。

マギー:自分は田中将大がヤンキースと契約する前年に一緒にプレーしていたけど、彼と菅野は似た雰囲気があった。マウンド上の集中力がとにかくすごい。毎回の登板で完璧を求めているし、コンスタントに結果を出す。悪い日でも試合を壊さないし、リリーフ陣に頼らないといけないようなピッチングはしていなかった。

マイコラス:とにかく球の質がハンパないね。

その親しみやすい人柄も印象深いようだ。

マシソン:実はうちの子供は二人とも日本で生まれていて、あの写真は娘が生まれたときのものなんだ。妻は産後1週間入院していたので、僕は息子を毎日球場に連れて来ていた。だから自分が練習している時は、菅野がキャッチボールをしてくれたり、面倒を見てくれたりしていた。あのときのジャイアンツの選手たちはみんな本当に温かく迎えてくれたよ。

ヤングマン:自分は文化に興味があったから、いろいろ話すタイプだった。投手としてのアプローチも日米で違うから、そのことをよく話していたよ。逆に彼の方からもアメリカ野球のことをよく質問されていたし、明らかにメジャーに興味を持っていた。

マイコラス:言葉の壁はあったけど、彼はいつもフレンドリーで最高のチームメイトだった。通訳を通してになるけど、ピッチングの話を何度かしたこともある。とにかくいいヤツだよ。

マギー:すごく競争心が強いタイプで努力家なんだけど、ちゃんとリラックスするタイミングもわかってて、メリハリをつけていた印象がある。

マシソン:投手陣のロッカーは隣同士だったから、大半の時間は一緒にいたよ。オフに日本に戻ったときも会いに行ったりしていたし、関係は続いている。日本のプロ野球って、選手同士の距離がメジャーよりも近いと思う。ホテルでも家族とではなくてチームで過ごすし、球場にいる時間も長い。だからすごく仲良くなるよ。

そして2024年12月、ついにメジャー移籍の夢が実現。オリオールズと1年約20億円(1300万ドル)の契約を結び、35歳にして初のメジャーの舞台に挑んだ。11試合を終えた時点で防御率3.23、投球回数は64回となっている。

マイコラス:先週ボルチモアで会ったとき、真っ先に「来るの遅いよ!4、5年早く来れたんじゃないか」って言ったよ。2018年に自分がメジャーに戻ったときから、日本に帰るたびに言っていたんだ「お前はメジャー行くべきだ、今まで見た中で一番すごい球を投げるピッチャーの一人だ」って。

ヤングマン:メジャー挑戦が決まったときは本当にうれしかったし、絶対やれるって確信もあった。4、5年前に来ていれば、もっと早く名前を知られていただろうし、彼もそうしたかったとは思うけれど、色々な事情があったんだろう。メジャーに来たら通用しなくなる選手もいるけど、(菅野は)5、6種類の球を操れて、コントロールもあって球速もある。どこのリーグでも戦える投手だと思っていたよ。

マギー:最後に一緒にプレーしたのは2018年で、そろそろ(メジャーに)行くんじゃないかと思っていた。メジャーでも通用する球を投げているのが分かったし、どんな打者にも対応できる引き出しの多さがあった。

マシソン:素晴らしい球を投げるだけじゃなくて、自信を持っていたのも大きい。メジャーで成功するには、自分を信じきれるかどうかがカギになる。どれだけ才能があって、マイナーリーグから上がってきても、自分を信じることができないと通用しない。その点、菅野は最初から「自分の球を信じてる」のが伝わってきて、日本でNo.1になっていつかはこっちに来るだろうなと思っていたよ。