米国野球殿堂入り式典を目前に控え、イチロー氏はこれまでの歩みを静かに振り返っている。
現在、イチロー氏は野球への恩返しに情熱を注いでいる。
「野球は、人間が人間と対戦するスポーツで、僕はそこで生まれる情熱やエネルギーを本当に大切にしています。これからもそうした『人間味』に満ちたスポーツであり続けてほしいと思っています」と、長年通訳を務めるアラン・ターナー氏を通じて語った。
イチロー氏は今も野球の世界に深く関わっている。マリナーズでは「球団会長付特別補佐」という肩書で、選手たちを組織横断的にサポートする『巡回メンター』のような役割を果たしている。
スプリングトレーニングや本拠地での多くの試合では、日常的にチームに帯同し、表舞台での練習参加だけではなく、裏方としても働いている。51歳となった今でもユニフォーム姿でキャッチボールをし、バッティング練習をこなし、フライを追う姿には、現実味を超えた迫力すらある。
「選手と一緒にプレーするのに必死です。キャッチボールもするし、走るし、打つし、フライも追う。この年齢でも野球ができることを、少しでも伝えられたらうれしいですね」と語る。
ただし、イチロー氏自身は「コーチ」と呼ばれることには消極的だ。現役選手たちには自分のやり方を押しつけず、それぞれが自分のスタイルで野球に向き合うことを尊重している。自身が追求してきた『完璧主義』や『細かなこだわり』を押し付けることはない。
「自分の知識を押しつけに来たわけじゃないんです。僕がここにいるのは、もし誰かが何か聞きたいと思ったときに、力になれる存在でありたいから。誰かに『こうしろ』と言うためじゃなくて、必要とされたときに手を差し伸べたい。それが僕の役割です」
イチロー氏が次世代の選手たちをサポートするのは、野球の歴史を作ってきた先人たちへの深い敬意があるからだ。
「野球の歴史はとても重要なものです。僕たちが今プレーできるのは、先人たちのおかげなので、その人たちをもっと理解したいし、知りたいと思っています。過去を知れば、これからもこの素晴らしいゲームを前に進めて、未来につないでいけると思うんです」
イチロー氏にとってクーパーズタウンは特別な場所だ。初訪問の際には殿堂のアーカイブを見学し、それ以来何度も足を運んできたという。
イチロー氏は、マリナーズ史で最も輝かしい功績を残した選手の一人で、野球界全体においても象徴的な存在として殿堂入りを果たす。式典にはマリナーズのレジェンドであるケン・グリフィーJr.、ランディ・ジョンソン、エドガー・マルティネスら殿堂入りメンバーも参列する予定だ。また8月9日には、Tモバイルパークで行われるレイズ戦で背番号「51」の永久欠番セレモニーも予定されている。
