「最も速い選手は誰?」「最強の打球は?」 Baseball Savant新機能でMLBの疑問を数字で解明

July 20th, 2026

野球界には数多くの指標が存在する。難しいのは、膨大な情報の中から何を見るべきかを見極め、過去との変化を読み解くことだ。選手比較や議論の答えを探す作業は、かなり大変だ。

そんな作業を少し楽にしてくれるのが、Baseball Savantが新たに導入した「選手比較ツール(Statcast Player Comparison)」だ。

選手同士の比較はもちろん、同じ選手の成長過程を追うこともできる。投手同士の対戦分析や、その日の先発メンバー全体を比較することも可能だ。

この新機能を使って、興味深いストーリーを紹介する。

ジョーダン・ウォーカーの進化

ホームランダービーを制する前から、ウォーカーは大きな飛躍を遂げていた。2025年から2026年にかけてのOPSの伸びは294ポイント。これはメジャー全体で最大の上昇幅だった。

カージナルスが、過去3年間苦しんだウォーカーを信じ続けた理由は明確だった。1000打席以上で打率.240、出塁率.302、長打率.378に沈んでいた時期でも、バットスピードがメジャートップレベルだったからだ。

現在のバットスピードはジュニオール・カミネロに次ぐ2位につける。

ただ、今年突然バットが速くなったわけではない。では、何が変わったのか。

答えはスイング軌道だった。ウォーカーは以前から強く振り、強い打球を飛ばす能力があった。一方で、打球が地面に向かうことが多かった。

スイングの軌道を示す「スイング・ティルト」は以前は平均以下だったが、現在は平均以上に改善。理想的なアタックアングル(打球角度)も大きく向上し、その結果、ゴロ率は大幅に低下した。

三振が多いという課題はあるが、強い打球を飛ばせるようになっているのが大きな魅力だ。ウォーカーはオフに「使命を持って臨んだ」と話すように、ドライブライン・ベースボールやクレッシー・スポーツ・パフォーマンスでスイング改善に取り組んだ。

目的は、ボールへ向かう軌道を修正し、新しい動きを体に覚え込ませることだった。

本人は「メカニクスばかり考えすぎることをやめることが大事だった」と話しており、その取り組みは、見事に結果へつながった。

ヤンキース内野左側を巡る議論

ヤンキースの最近の失速は、6週間離脱しているアーロン・ジャッジの不在、そしてコディ・ベリンジャー、ポール・ゴールドシュミットの打撃不振が大きな要因だ。

しかし、もう一つ常に議論されているのが遊撃手の起用だ。アンソニー・ボルピーは期待されたほどの結果を残せず、一方でホセ・カバイェロは、ボルピーが肩の手術から復帰するまで遊撃を無難にこなしている。

ボルピー復帰後の5月以降、2人の先発出場数はいずれも38試合。ただし、ボルピーはすべて遊撃での出場に対し、カバイェロは遊撃15試合に加え、他5ポジションでも先発している。打撃面では、復帰後のOPSはほぼ同じで、どちらもリーグ平均をやや下回る数字だ。それでも、ファンの支持がどちらに向いているかは明らかて、ボルピーではない。もちろん、どちらも長期的な正遊撃手になる保証はない。

一方、表面的な成績だけでなく、Statcastのデータで見ると違った一面が見えてくる。

意外にも、守備指標ではボルピーがカバイェロを上回っている。

肩の強さではカバイェロにわずかに劣るものの、決して大きな差ではない。また、「ボルピーは併殺処理が苦手」というイメージも、データでは裏付けられていない。

ライアン・マクマーンも比較対象に入る理由は、ヤンキース加入後の打撃不振だ。OPS+は84にとどまっている。一方で、カバイェロは複数ポジションを守れる万能性があり、三塁もカバーできる。その存在が、ヤンキースの内野構想をさらに難しくしている。最終的に、2027年のヤンキースの内野左側は、遊撃だけでなく三塁も含め、大きく様変わりしている可能性がある。

ポール・スキーンズの「不振」の理由は

ポール・スキーンズは今も球界屈指の投手だ。

ただ、今季の防御率3.43は、昨季の1.97から大きく上昇。開幕戦の大炎上は守備の影響もあったが、それを除いても、その後20先発で防御率3.06だ。

「防御率3点台で心配される」ということ自体が、スキーンズがこれまでどれほど圧倒的だったかを示している。

不安材料の一つは、パイレーツの守備力だ。スキーンズはマリナーズのルイス・カスティーヨと並び、守備から受ける援護がリーグで最も少ない投手の一人になっている。

ただ、問題はそれだけではない。フォーシームの平均球速は98.2マイル(約157.9キロ)から96.9マイル(約156.0キロ)へ低下。この差は小さくない。とはいえ、平均97マイルは依然としてトップクラスの球速だ。

年ごとの指標を比較すると、圧倒的な数字が並ぶ。一方で、強い打球を許す割合が少し増え、被ゴロ率はやや低下した。球種別に見ると、問題はフォーシームではない。

オフスピード系、特にチェンジアップの被長打率が.125から.388へ上昇。すでに過去2年間の合計を上回る安打を許している。また、スプリンカーでも被打率が50ポイント上がった。

速球との組み合わせで効果を発揮するチェンジアップだけに、球速だけでなく変化や軌道の違いも影響しているようだ。

スキーンズ本人も問題点は理解している。

オールスター期間中、「球速について聞かれるのは、僕が良くない投球をした時だけなのが面白い。そういう試合でも、フォーシームで打たれたわけではない」と話した。

確かに、パイレーツファンが以前のような100マイル級の球速を期待するのは当然だ。それでも、スキーンズは今なおタリック・スクーバル、クリス・セール、ゲリット・コールより速い球を投げている。球速低下は気になる材料だが、問題の中心は速球ではなく、変化球の精度にある。後半戦の鍵は、それをどう修正するかになりそうだ。

カブスの先発陣に必要なのは「球威」

カブスはオールスターブレークを勝率5割超、ワイルドカード進出を狙える位置で迎えた。しかし、投手陣、特に先発ローテーションに問題を抱えている。2026年のカブスは、開幕から96試合で許した本塁打数が球団史上最多ペース。過去に同じような数字を記録した上位10チームは、いずれも勝率5割に届かず、プレーオフ進出も果たしていない。

原因の一つは負傷だ。

ケイド・ホートンは今季絶望。マシュー・ボイドも長期間離脱し、ベン・ブラウンとエドワード・カブレラも負傷者リスト入りしている。

そして、もう一つの問題は単純な球威不足だ。カブス投手陣のフォーシームで95マイル(約152.9キロ)以上を記録した割合はわずか27%。これはメジャー最低で、リーグ平均の44%を大きく下回る。ちなみにマリナーズは73%で大きな差がある。

オールスター前、カブスのローテーションは今永昇太、ボイド、ハビエル・アサッド、コリン・レア、デビッド・ピーターソンで構成されていた。もちろん、球速だけがすべてではない。ボイドは一定の結果を残し、今永も圧倒的な投球を見せる試合がある。しかし、2026年のメジャーで勝ち抜くには、マウンド上で「本物の球威」が必要になる。

カブスが補強に動くと予想される先発投手には、おそらく強烈な球を投げるタイプが含まれるだろう。

ナ・リーグ新人王争い

投手ではノーラン・マクリーンやフォスター・グリフィンも候補に入るが、今年のナ・リーグ新人王争いの中心は野手だ。ナ・リーグの新人打者は、ここ数十年でも屈指のレベルで結果を残している。(パイレーツの有望株コナー・グリフィンが左手薬指の負傷で離脱しているにもかかわらず、だ)

では、現在の新人王争いはどのような状況なのか。

最も完成度が高いのはカージナルスのJJ・ウェザーホルトだ。二塁守備ではゴールドグラブ級の能力を持ちながら、打撃でも安定した貢献をしている。メッツでは外野手コンビのカーソン・ベンジ、AJ・イーウィングにも魅力がある。

さらに、ブライス・エルドリッジとサル・スチュワートは圧倒的な打撃力を誇り、マーリンズのジョー・マックはチーム守備の改善にも大きく貢献している。新人王争いの決着はまだ先になりそうだが、候補者には事欠かない。