ドジャースのドライヤー、父と歩んだMLBへの道

父として、コーチとして

June 13th, 2025

ドジャースの左腕ジャック・ドライヤー(26)は、様々な指導者と出会い努力を積み重ね、今季ついにメジャーの舞台へと上り詰めた。そんな彼には野球選手としての原点であり、最大の理解者がいる。

それが、父のスティーブ・ドライヤーだ。1993年から94年にかけて、レンジャーズでプレーした元投手であり、MLBでプレーした271の父子の一組である。

「父は僕の一人目の、そして一生のコーチだよ。野球選手としての経験もあるから、どんな時でも、どんなことでも話すことができる。野球コーチとしても父としてもいてくれるその存在はすごくありがたい」

父のスティーブがプロ野球選手として最後にプレーしたのは、ジャックが生まれる2年前の1997年。ジャックは、メジャーリーガーの子どもにありがちな「クラブハウスを走り回る」経験こそなかったが、父の元チームメートとの対面したり、春季トレーニングや様々な球場に足を運ぶことで、野球の世界に触れてきた。

今でも特に印象に残っているのが、父から聞かされたメジャー生活のエピソード。今は当事者となっているジャックは、自分自身と重ねる分もあるそうだ。

「父が初めてメジャーに昇格したとき、ノーラン・ライアンの隣のロッカーだったんだ。その時にノーランが父に『何かあったらいつでも言ってくれ』と声をかけてくれて、本当に親切にしてくれたって聞いたよ」

「僕たちにもクレイトン・カーショウをはじめ、将来の殿堂入り候補選手がたくさんいる。だから、父の経験と重ねて考えることもあって、そのつながりがすごく面白いよ」

ちなみに1993年9月22日、ライアンが自身最後の登板で負傷交代となった際に、代わりにマウンドに上がったのがスティーブだったという縁がある。

重なる部分もあれば違う分もある。特にメジャーへの道のりは、まったく異なっていた。父は1990年のドラフトでレンジャーズから8巡目指名を受けたが、ジャックはドラフト外で、2021年にドジャースとフリーエージェント契約を結んだ。

ルーキーイヤーながら、ジャックはドジャースのブルペンにおいて重要な存在となっている。35回2/3を投げて防御率は2.78。このペースなら、父が残したメジャー通算58回1/3を今季中に上回るのは確実だ。

ここまで来ることができたのは、父の存在があったからだと、ジャックは強調する。幼少期には、右投げの父の動きを、自分の左投げに鏡のように重ね、投球フォームを学んだ。

一方で、ジャックもかつて父に、自身の特技であるルービックキューブの解き方を教えようとしたことがある。

「(父は)一時期はできていたけど、今はもうできないと思う。でも、たぶん一面だけなら揃えられるよ」と笑顔で語るドライヤー。

お互いに教え合う関係性がこの父子の絆を象徴している。親がコーチだと、スポーツと家庭の線引きが難しい場合もあるが、ドライヤー家ではうまくバランスを取ってきた。実際、父が公式にコーチを務めたのは、ジャックがいたクラブチームで投手コーチだったときくらいだ。

「子どもの頃は、友達の前でコーチである父とどう接していいかわからないこともあって、少し難しかった。だけど、今はとても自然になった。野球の話は野球の話として、人生の話は人生の話として、ちゃんと分けて話せている」

ドジャースには優れたコーチングスタッフが揃っているが、もう一歩踏み込んだ支えが必要なとき、いつでも頼れる「最初のコーチ」が、彼にはいる。