溢れる涙を抑えられなかった。
ブリュワーズ期待の剛腕ルーキー、ジェイコブ・ミジオロウスキーの父トムは、若くしてパーキンソン病と闘病を強いられ、電気技師としての仕事を断念した。その現実に寄り添い続けてきた息子は、今やメジャーの舞台で脚光を浴びる存在となり、父と同じ境遇にある人々を支える活動に乗り出した。
「父は仕事を辞め、ずっと自分のそばにいてくれた。それは最高の時間だったが、病気は確実に体をむしばんでいった。楽な病気じゃない。本当に大変で、人を変えてしまうんだ」と声を震わせた。
ミジオロウスキーはウィスコンシン・パーキンソン協会(WPA)と提携し、募金活動や普及啓発に立ち上がった。6月25日のパイレーツ戦、注目のポール・スキーンズとの対決では、父のイニシャルと病気のシンボルであるチューリップをあしらった特製スパイクで登板。8月15日から始まる「プレイヤーズ・ウィークエンド」でも、そのスパイクで再びマウンドに上がった。
チューリップはすでに『ミズ(ミジオロウスキーの相性)のシンボル』になっている。球団が今月配布したTシャツにもその花が描かれた。「父は自分が活動を支えていることを本当に喜んでいる。少しでも力になれるのはうれしい」と語る。
独立団体であるWPAは全国規模のパーキンソン団体とつながりを持たず、州内の家族支援や助言活動を地元の寄付で賄っている。
ミズの参加は大きな意味を持つ。
WPAのケリー・シスラック事務局長は「最初に彼のストーリーを知ったのは、スパイクのチューリップから。地元選手だし、連携できないかと声をかけた」と振り返る。
シスラックにとっても個人的な問題だ。彼女の祖母もパーキンソン病を患っている。
ブルックフィールドに拠点を置くWPAは、わずか約100万ドルの予算と、フルタイム2人・パートタイム3人のスタッフで州72郡をカバーしている。相談に応じ、医師との橋渡しをしたり、患者に合ったサポートグループや運動プログラム、在宅ケアやメンタルヘルス資源を紹介する。ロッククライミングやボクシングの適応イベントも行い、病気の進行を遅らせる効果が期待されている。
ファンは wiparkinson.orgで、ミジオロウスキーを通じた協会支援に参加できる。次の4月の「パーキンソン病啓発月間」に向け、さらなる企画も構想中だ。
「父を支えるために、自分にできることをやるだけ。ここまでの道のりは前向きだった。でも足をすくわれるように急に変わることもある。悪い方へ落ちていくだけじゃダメだ。もう十分大変なんだから、少しでも良くしていかないと」
父と共に歩んできた日々が、ルーキー右腕の力強い原動力となっている。
