今年1月、祖国ドミニカ共和国でフリオ・ロドリゲスは衝撃的で劣悪な光景に遭遇した。
そこにあったのは、かつて家だったはずのものだった。壁面のレンガが剥き出しになり、ドアは枠だけになり、代わりにソファが使われていた。そして、そこにはアグリピナ・ポリンコさんとその孫の二人が暮らしていた。1カ月前の洪水でほぼ全壊となった住まいで2人は生活していたのだ。
「それを見た時に、何もせずにこの場所を去るわけにはいかないって思ったんだ。もしそうしたら神様に罰せられる気がしたんだ。こんなふうに偶然ここへ来たのも、きっと理由があるはずだから」とロドリゲスは当時の状況を語った。
それから7カ月。ロドリゲスは祖国で困難に直面している人々への理解を広め、できる限り多くの支援を呼びかけるため、MLB全体で行われる「プレイヤーズ・ウィークエンド」に合わせて、この時の出来事を語った。
毎年恒例の帰国での偶然の出会い
ロドリゲスがドミニカ共和国を訪れていたのは、毎年1月6日に行われるキリスト教の祝祭「三賢者の日」のためだった。ロドリゲスは、子どもたちへの支援を積極的に行っており、子どもに特に焦点を当てたこの祝祭はまさにうってつけで、この帰国は、2024年11月から本拠地シアトルで始めた寄付活動の集大成としての意味も持っていた。最終的にロドリゲスは、この活動を通じて故郷ロマ・デ・カブレラのおよそ1000人の子どもたちにおもちゃや運動用具を贈っている。
この取り組みは様々な企業や財団に支援されており、そのうちの一つがロドリゲス自身が2023年に立ち上げた「No Limits Foundation(限界なし財団)」だ。「子どもたちが自らの無限の可能性を信じられるよう、教育や指導を通じて機会を創出すること」を使命としており、6日間の帰国の際も、イベントを通じてファンや地域住民から多くの寄付を集めた。
口先だけじゃない、文字通り全てを再建
この活動には多くの協力者がおり、その一人がヴィック・ブレンズだ。バラク・オバマ氏や数々のNBA選手など、著名人の散髪を行いながら、ポッドキャストを撮る唯一無二のスタイルで、SNSで合計1800万人以上のフォロワーを持つブレンズは、ロドリゲスと2024年の春季トレーニングで出会って以来交流が続いている。
そのつながりにより、ブレンズもロドリゲスが招待され、ドミニカ共和国を訪れた。多くの来場者に無料で散髪を提供し、その様子をSNS上で発信した。その中の1組が、ポランコさんとその孫だったのだ。
ロドリゲスのことを知らなかったポランコさんは、支援するという発言に最初は懐疑的だったという。
「やると言って結局やらない人はたくさんいる。ただ口先だけの人も多い。でも僕はちゃんと彼女を安心させたんだ」とロドリゲスは話した。
ロドリゲスの代理人で帰国に同行していたメヒアは、両親がこの地域の出身ということもあり、計画を実行するため、その幅広い人脈をフル活用した。父親を通じて建設業者に連絡をとり、工期と予算を明確にすると、ロドリゲスは迷わずに資金提供を決断。工事が終わるまで、ポランコさんと孫を近くのアパートに住まわせた。
「屋根からドア、エアコン、テレビ、冷蔵庫、コンロ、照明、外構に至るまで。フリオは家を完全に建て直したんだ。元の家から残ったのは4枚の壁と梁くらいで、あとは窓、浴室、シャワーまで、本当にすべてを新しくした」と、感極まりながらメヒアは語った。
約65平方メートルの家は3〜4カ月後に完成した。入居の日、ポランコさんはマリナーズのTシャツを着て、ロドリゲスに電話をかけ、涙と共に感謝を伝えた。
「全力で手を差し伸べたい」
ロドリゲスは毎オフに帰郷しており、2022シーズン後にはア・リーグ新人王受賞を祝う盛大なパレードを行い、地元に救急車を寄贈した。
この活動は継続して行っており、今シーズン後には、ロドリゲス自身が育ったロマ・デ・カブレラの野球場を、子どもから高齢者まで、野球だけでなくソフトボールやサッカーもプレーできる、大規模な複合施設へと生まれ変わらせる予定だ。
「彼がかつてプレーしたグラウンドを修理するだけだと思う人もいるかもしれないが、それ以上の意味がある。男女問わず、すべての子どもたちが遊べる場所を作ろうとしているんだ」とメヒアは説明した。
メヒアによれば、現在の施設は「本当に傷んでいる」とのこと。これまでまともな整備が行われたことはほとんどなく、ドミニカ共和国中部は非常に乾燥しており、芝の育成が難しい。そのためグラウンドはほとんど土ばかりで、夜間照明もなく、トイレも使えないか、ほとんど機能していない。
ロドリゲスは現役生活を通じて慈善活動を続けるつもりで、次の計画はこれまでで最も大きなものになる。
「こういう活動は自分にとって一つのテーマになっている。何か自分にできることがあれば、必ず全力で手を差し伸べたい」とロドリゲスは力強く語った。
