日本のホームランバッターが海を渡る。世代、右打者、左打者を代表するスラッガーだ。
巨人の岡本和真内野手(29)が10月22日、ポスティングシステムで今オフにメジャー移籍することを表明した。ヤクルトの村上宗隆内野手(25)は正式発表されていないが、ヤクルト球団からポスティング利用の承認を得ることは確実視されている。日本のパワーヒッターが、メジャーでどこまで通用するのか。そして、内野手として評価を勝ち取ることができるのか。期待は大きい。
「ずっと行きたい気持ちはあった。1軍で試合に出るようになってから、(契約更改)交渉の場でそういう気持ちがあります、っていうのはずっと(球団幹部と)話させてもらってました」
岡本は、ポスティングシステムを利用して、メジャー挑戦が容認されると会見でそう話した。11月10日からラスベガスで開催されるGM会議で各球団が、公式な場で日本のスラッガーについて語る見込みだ。しかし、各GMや編成本部長の常套句は「個別の選手については言及できない」とコメントには慎重になるのが通例。「才能がある。どこのチームもその名前は知っている」などがお決まりのフレーズだ。12月8日から球団幹部や代理人らが一堂に会するウインターミーティング(WM)のころから、注目の大きな選手たちの移籍が決まる。注目度と期待の高い岡本や村上の移籍先は年内に決まると見込まれている。
「もちろん厳しい世界だっていうのは分かっていますし、日本に残った方がいいとか厳しい声もあるでしょうし、ただそれは自分が行ってみないと分からないことですし、やってみないと分からないので、そういうのも承知の上で勝負したい思いです」
岡本が理解しているように日本の内野手は厳しい評価を受けてきた。身体能力の違い、肩の強さで米国や中南米選手に見劣りしてしまう事実がある。その上で岡本に求められる一つの基準がある。右打者としてのホームラン数だ。一塁手と三塁手として日本でゴールデングラブ賞を獲得しているが、まず重要なのは打力で能力を示さなければいけない。
ポジションの違いはあるが、日本選手の右打者としての最多本塁打は、今季のカブス・鈴木誠也外野手(31)が放った32本。岡本に設定される“成功ライン”といえるかもしれない。もちろん、この数字は鈴木がメジャー移籍後4年目で達成した数字。この目標数値に近づくためには、まず負傷離脱なく健康体でシーズンを完走することが大前提だ。岡本は日本の143試合より多いレギュラーシーズン162試合、大陸を長距離移動するなど大きく環境が変化する1年目でどれだけ「32」に近づけるか。
米メディアでは岡本と比べて、注目度は村上の方が高い。MLB.comのフリーエージェント(FA)ランキングでは村上が8位に対して、岡本16位。ホームランの多さと年齢の若さで村上が高い順位に評価されているようだ。しかし、日本で視察するメジャースカウトたちの評価はやや誤差がある。
「OFP」というMLB球団が用いる一般的な評価の指標がある。「Overall Future Potential」の略で「成長予想指数」。攻守別々に20〜80点がつけられ、レギュラーとして毎試合に出場する能力なら「50」が基準となる。スカウトの主観が加味されるため、スコアの振れ幅がある。某球団のアジア担当スカウトによれば、村上の打撃OFPは「45〜50」が妥当なスコアだという。つまり、ギリギリでレギュラーを務められる能力、という評価だ。長打力の評価は高いが、三振の多さなど、やや荒削りな要素が弱点とみられるのか、あるいは伸び代とみられるのか、評価が分かれそうだ。先のスカウトは「岡本は村上よりも上の評価で全球団がほしい、と思う選手。村上は守備と走塁が得意ではないので、どれだけ打てるかは、過去の日本人打者をみても予測が難しい」と説明した。多くの球団が岡本の打撃OFPは「55」と評価し、平均的なレギュラー以上と見込んでいるようだ。
カイル・タッカー(カブスからFA)、アレックス・ブレグマン(レッドソックスFA)ら大物野手が移籍市場に出る。日本の大砲2人が、ストーブリーグを熱くする。どのユニホームを着るのか。1カ月半後には、決まる。
