女子プロ野球リーグ(WPBL)歴史的ドラフトでウィットモアが全体1位指名

November 21st, 2025
From left: Denae Benites, Mo'ne Davis, Kelsie Whitmore, Ashton Lansdell, Ayami Sato. Design by Tom Forget.

20日夜に女子プロ野球リーグ(WPBL)初のドラフト会議で最初の指名が告げられたとき、驚きはほとんどなかった。

女子野球の世界で、ケルシー・ウィットモアは群を抜く存在だ。

「ケルシーはこの瞬間のために人生をかけてきた」とWPBL共同創設者のジャスティン・シーガル(男子リーグで初の女性コーチとなった先駆者)は語った。

「彼女は今世紀の女子プロ野球リーグで最初のドラフト指名選手であり、WPBLはこの機会を彼女に提供できることを光栄に思う。ケルシーはプロ野球選手を夢見る世界中の少女や女性すべてを代表している」

「女子プロ野球リーグ最初のドラフトの全体1位として、この地球上でも屈指のアスリートが永遠に野球史に名を刻むことを、私たちは名誉に感じ、胸が躍っている」と同じくWPBL共同創設者のキース・スタインは語った。

「ウィットモアは世界中の少女たちのロールモデル(お手本)として、キャリアを通じて障壁を打ち破り続け、次世代の選手たちに刺激を与えている」

ドラフトは女子野球にとって歴史的な節目となった。WPBLは1940~50年代の全米女子プロ野球リーグ(AAGPBL)以来、米国で初の女子プロリーグとなる。WPBLは来年8月、ウィメンズ・ベースボール・ワールドカップ(7月22~26日、ロックフォード)終了後に、ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコを代表する4球団で、イリノイ州スプリングフィールドのロビン・ロバーツ・スタジアムを会場に開幕する予定だ。

「本日のウィメンズ・プロ・ベースボール・リーグの初のドラフト開催に関係者の皆さんへお祝いを申し上げます」とMLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは放送の冒頭で語った。

「野球が、女子スポーツが極めてエキサイティングな時期を迎えることを、私たちは大変うれしく思います。フィールド上でもフロントでも、野球は誰にでも開かれた競技だ。近い将来、少女たちがウィメンズ・プロ・ベースボール・リーグをみて、将来プレーし、関わることを目指せるようになることを、とても楽しみにしています」

ウィットモアは27歳にして、すでに栄誉と実績に満ちたキャリアを築いている。2016年、米国女子代表のステイシー・ピアーニョ、アンナ・キンブレルとともにソノマ・ストンパーズでデビューし、1950年代以来となる女子のプロ野球選手となったのが17歳のときだ。その後も歩みは止まらず、二刀流選手としてアトランティック・リーグ(独立リーグ)史上初の女性選手としてスタテンアイランド・フェリーホークスに所属。のちにオークランド・ボーラーズやサバンナ・バナナズでもプレーした。

だが今、長年にわたり男子のチームでプレーしてきたウィットモアは、新たな女子リーグで先頭に立つ立場になる。

「この機会を得られたことに、ただただ大きな感謝の気持ちでいっぱいです。自分のキャリアが全盛期のうちに女子のプロ野球リーグができるかどうか、本当に分からなかったからです」とウィットモアはMLB.comに語った。

「これは私だけのためではなく、多くの少女たちのための、とても素晴らしい機会です。彼女たちは目標にできる舞台と、進むべき道筋を得ることになります」

このリーグは、メイベル・ブレアら、自分たちのリーグを求めてきた多くの女性の夢をかなえるものだ。

「願わくは、このリーグが大成功してメジャーと同じくらい長く続き、いつか私の娘もそこでプレーできるようになることです。現役の女子選手や、これから育ってくる若い選手たちにとって素晴らしい機会ですし、1940~50年代にかつてリーグでプレーした方々にとっても、とても楽しみなはずです」

WPBLの誕生は、女子スポーツの人気が世界的に高まり続ける流れの中で実現した。最近のWNBA(米女子プロバスケットボール)ファイナルは過去25年で最高の視聴率を記録し、女子カレッジ・ワールドシリーズも今年は視聴率記録を更新。AUSL(女子プロソフトボールリーグ)は2025年の初年度シーズンが成功し、来季は6チームに拡大する。ニューヨークの Wilka’s Sports Bar やカリフォルニア州ロングビーチの Watch Me! Sports Bar のように女子スポーツに特化したスポーツバーも登場しており、20日にはWPBLドラフトの観戦会を開いた。

フロリダ州フォートマイヤーズのジェットブルー・パーク(レッドソックスの春季キャンプ本拠地)では、指名選手の約20人が集まったドラフト・パーティーが開かれた。ミシシッピ大(Ole Miss)のソフトボールで主力として活躍し、USWNT(米国女子代表)のスター、HRDX(ホームランダービーX)の常連でサバンナ・バナナズでもプレーするランズデルは、会場でこう語った。

「互いに盛り上げ、支え合って、会場の熱気は本当に最高だった。ここは笑顔でいっぱいだ。家族や友人、そして指名選手本人たちが大勢集まって、本当に素晴らしい時間になった。全員が壇上に上がる時間があって、プロとして初めてサインをして、帽子をかぶって、写真も撮った。ここフロリダでも本格的な催しにできたと思う」

Ashton Lansdell waits for a ball at third base.

女子がリトルリーグ、高校、大学と長年にわたりチームでただ一人の女子として過ごしてきた後に、女子同士で肩を並べてプレーできる意義は、大きい。もう、男性だけのチームの中で自分の実力を証明し続ける必要はない。

「長い間、正直に言えば、プロでプレーしたいと思っていたのは自分一人だけだと感じていました」とウィットモアは語った。

「でも、このリーグができて多くの女性が関心を寄せているのを見て、『ああ、自分だけじゃなかったんだ』と思えました」

ウィットモアは、自分が前例のない道を切り開いているという自覚があり、キャリアの中で苦しむ時期もあった。どこへ行っても、常にチームの他の選手とは違う目で見られた。

「プロのシーズンに入る前は毎回、『このリーグで契約に値することを証明しなきゃ』というプレッシャーがありました」とウィットモアは言う。

「『求められる水準に達したボールを投げられているか』と自問しながら、これから対戦したり一緒にプレーしたりする男性選手たちと自分を比べてしまう。そうすると本来の自分のプレーから外れてしまうので、とてもストレスでした。だから、女子リーグに向かう今はとても穏やかな気持ちです。もう誰かを感心させたり、証明したり、比べたりしなくていい。ここでは自分らしくいられる。ようやく『自分のままで十分だ』と感じられるようになりました」

Kelsie Whitmore throws a pitch at the WPBL tryouts in August.

ロサンゼルスに全体10位で指名された、かつてリトルリーグのスター、モニー・デービスは語った。

「このリーグでプレーできるのは本当にうれしい。とりわけ、すでに指名された選手や、これから指名される女性たちと一緒にプレーできるのがうれしい。みんな野球の世界で素晴らしい実績を残してきた。だから、彼女たちと肩を並べて、このリーグとこの競技を前に進める手助けができるのがうれしい」

ソフトボールとバスケットボールでも実績のあるベテランとなったデービスは、指名時は中堅手として登録された。だが、監督に求められれば、いつでも投げる準備がある。

「全体10位で指名されて、とても驚いた。やるべき準備はたくさんあると分かっているし、早くグラウンドに出て新しいチームメートに会うのが楽しみ」

Mo'ne Davis runs the bases at the WPBL tryouts.

ドラフトは女子野球の世界的な広がりも示した。指名された120人には、米国、カナダ、オーストラリア、韓国、英国、キュラソー、メキシコ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、日本の選手が名を連ねた。

「私は野球選手であることを誇りに思います。今は、同じ情熱を分かち合う女性たちと肩を並べてプレーし、競い合う場があります」
韓国出身の捕手、キム・ヒョンア(ボストンに全体4位指名)は、ビデオ声明でそう語った。

史上最高の女子野球投手の一人とされる里綾実は、ロサンゼルスに全体2位で指名された。

「とてもうれしい。夢がかなった」
里綾実はオンライ取材の画面越しに、満面の笑みで語った。

日本出身の里綾実は、IBL(独立リーグ)のトロント・メープルリーフスで登板し、カナダのプロ野球で初の女性選手となった。次の狙いはWPBLだ。

「こんな日が来るとは思っていなかったので、ただただ幸せ。これまで世界中の女子選手は、野球を続けるために多くの困難と障害に向き合ってきた。今は、その喜びをみんなで分かち合える瞬間です」と里はそう続けた。

全体7位でロサンゼルスに指名されたランズデルは、国際大会で長年しのぎを削ってきた里と、来季は同じチームでプレーする。

「里とチームメートになれる?最高です。各チームに世界中から選手が集まって、今こうして同じチームになれるのが素晴らしい。女子野球の世界は小さい。女子スポーツ全体もそう。だから、私たちはいつだって互いを支え合ってきました」とランズデルは感慨深く語った。

ドラフトを見守った多くの少女たちに向けて、参加者は一つのメッセージを繰り返した。

「女の子たちに、いつかプロ野球でプレーできるという希望を与えられる」
「そのための場が、実際にここにある」

ランズデルはそう語った。

「大きな夢を持って。続けていれば、いつかあなたの番が来る」
「情熱に従って」
「野球は、私たちみんなのもの」

WPBL共同創設者、シーガルはそう呼びかけた。