ケビン・ゴーズマンはドラフト1巡目指名を受け、今年でメジャー13年目を迎える。しかし、その道のりは順風満帆ではなかった。かつてはトッププロスペクトとして期待され、「次代のエース」と呼ばれた一方で、挫折も経験し、移籍を繰り返し、戦力外通告も受けた。ここまでの道のりは長く、複雑で、決して平坦ではなかった。
だが、こうした紆余曲折こそが、ゴーズマンを偉大な投手にした理由の一つだ。ワールドシリーズ第2戦の先発を任される右腕は、第1戦に登板してもおかしくない実力者だが、ブルージェイズは新人トレイ・イェサベージの登板間隔を維持しつつ、ベテランのゴーズマンに1日多く休養を与える判断をした。
伝家の宝刀スプリットを武器に大きな飛躍をとげたゴーズマンは、2022年にブルージェイズと5年総額1億1000万ドル(約165億円)の契約を結んだ。しかし、ベテラン右腕が、トロントのファンに愛されているのは成績だけが理由ではない。これまで数多くの名選手を見てきたファンは、スター選手がチームと地域に根付いてくれることを求めている。ゴーズマンはその姿勢でカナダの野球ファンの心をつかんできた。
「ここにサインした当初は、カナダ全体のたった一つのチームだということを正直そこまで理解していなかった」とゴーズマンは語る。
「でも4年経った今、それがどれほど特別なことかがわかるようになった。ファンがどれだけ僕たちを愛し、支え、成功を願ってくれているか。トロントで活躍すれば、2015年や2016年のチームのように、今も始球式で呼ばれる存在になれる。彼らはみんな伝説なんだ」
もちろん、ポストシーズンでは悔しい経験もしてきた。2022年と2023年にブルージェイズはプレーオフ進出を果たしたが、いずれもワイルドカードシリーズであっけなく敗退した。
2025年のブルージェイズは、そうした苦い経験の積み重ねの先にたどり着いた「完成形」だ。34歳となったゴーズマンは現実的に物事を見ている。自身でも「年を取った」と冗談を飛ばすが、40代になっても一線で投げ続けるマックス・シャーザーのような存在は例外だ。契約は2026年まで残っているが、13年目で初のワールドシリーズ登板となる今こそ、自身にとって最大のチャンスだと理解している。
「最初の数年は本当に厳しく辛かった。2年連続でポストシーズンをスイープで敗退するなんて、きつかった。昨年は特に、チームとして自信があったのに、全然うまくプレーできなかった。まるで顔面にパンチを食らったような気分だった」とゴーズマンは悔しさを語る。
「でも球団はそこから本当に素晴らしい対応をしてくれた。チーム内のことも考えながら、必要な補強や決断をしっかり進めてくれた。ここまで来られたのは、たくさんの人たちの努力の結果だ」
最終的に、第1戦をイェサベージ、第2戦をゴーズマンに任せる決断の差はほとんど意味を持たない。両者ともシリーズ中にもう一度先発登板できる見込みであり、場合によっては、ア・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)第7戦のようにゴーズマンがリリーフとして登板する可能性もある。温存する必要などない。全てを出し切るだけだ。
両者とも決め球はスプリットで、2ストライクからの勝負では同じ武器を使うが、ジョン・シュナイダー監督は全く心配していない。
「似たタイプの投球ではあるけれど、軌道も角度もまったく違う」と説明する。
イェサベージのスプリットはゴーズマンより横に逃げる軌道を描く。一方でゴーズマンのスプリットは真下に落ちる。さらにイェサベージはリリースポイントが非常に高く、まるで球場の屋根から投げ下ろすように見える。そのため、同じ球種でも、打者にとっては異なる見え方をする。
かつてブルージェイズは、スプリットが似ていることを理由にゴーズマンの後にエリック・スワンソンのような投手を続けて使うのを避けていたが、イェサベージの特徴的な球質によってそうした懸念は解消された。
ここまでの道のりは、ゴーズマンが思い描いていたものとは違ったかもしれない。しかし、今、確かにそこにゴーズマンは立っている。野球人生のすべてを懸けて待ち望んだ舞台。トロントのマウンドで迎える。
