最強左腕スクーバルとの大一番、第5戦を左右するマリナーズ3つのカギ

October 11th, 2025

ア・リーグ地区シリーズ第5戦。

すべてを懸けた一戦でタリック・スクーバル率いるタイガースが、カル・ローリー擁するマリナーズと激突する。

負ければ終わり。そんなポストシーズンの一発勝負でスクーバルと対峙するのは容易ではない。だが、マリナーズは最強左腕の“天敵”として立ちはだかってきた。今季、デトロイトのエースであるスクーバルと3度対戦し、いずれも勝利している。その中にはこの地区シリーズ第2戦も含まれている。

果たしてシアトル打線は、1年で4度目となるスクーバル攻略という離れ業をやってのけるのか。それとも、ア・リーグ優勝決定シリーズ進出を懸けたマウンドで、スクーバルが圧巻の投球を見せるのか。

第5戦の勝敗を左右する3つのキーポイントは以下のとおりだ。

1. マリナーズはスクーバルのわずかなミスを再び逃さず仕留められるか

マリナーズがスクーバルを打ち崩してきた最も単純な理由。それは、本塁打を打っているからだ。

今季、スクーバルと対戦した3試合すべてで本塁打を放っており、合計4本。そのうち第2戦ではホルヘ・ポランコが2本のソロ本塁打を放ち、タイガースのエースから奪った得点はその2点のみだった。今季、スクーバルからこれほど多く本塁打を放ったチームは他にない。

そして、マリナーズがスクーバルから本塁打を打てている理由は、わずかなミス球を逃さず仕留めているからだ。

4本すべての本塁打が、ストライクゾーンの真ん中に甘く入った球を捉えたものだった。4月2日のディラン・ムーアへのスライダー、7月11日のフリオ・ロドリゲスへのチェンジアップ、そして第2戦でポランコが打った2本。どちらもど真ん中に入ったスライダーとシンカーだった。

スクーバル相手にダメージを与えられる機会は、そのわずかな失投だけだ。スタットキャストの定義でいう「ゾーン真ん中(ストライクゾーン内でボール1個分以上の余裕がある位置)」に投げ込まれたとしても、スクーバルは依然として球界屈指の投手である。ましてやコースの角やゾーンの外に行けば、抜きんでて最強の投手になる。

この点は、マリナーズが得意としている。今季、ストライクゾーン真ん中の球に対して162本の本塁打を放っており、全チーム中4位タイだ。これを上回るのは強力打線のヤンキース、ドジャース、フィリーズだけだ。

一方で、スクーバルはストライクゾーン真ん中でさえ打つのが極めて難しい。今季、ストライクゾーン真ん中の球で144回の空振りを奪い、空振り率はほぼ20%に達しており、いずれもリーグ上位に入る。つまり、マリナーズはまずその球をミートするだけでも容易ではなく、ましてやスタンドまで運ぶとなれば、さらに難易度は上がる。

2. ローリーとポランコは右打席で何ができるか

マリナーズの打線には、カル・ローリーと復調したホルヘ・ポランコ、2人の両打ち打者がいる。どちらも今季、右打席で大きく成長を遂げており、メジャー最強の左腕スクーバルと対戦するうえで極めて重要な要素となっている。

昨季、ローリーは左投手に対して打率.183、OPS.696だったが、今季は打率.281、OPS.1.032、22本塁打。これはカイル・シュワーバーに次ぐ数字だ。ポランコも昨季は左腕相手に打率.250、OPS.664だったが、今季は打率.305、OPS.888と大幅に改善している。

ただし、スクーバルは「普通の左腕」ではない。特別な左腕だ。マリナーズ最強打者のローリーでさえ、チームが勝った試合でも打ち崩せていない。MVP候補対サイ・ヤング候補の対決で、ローリーは9打数1安打、5三振、スイング22回中16回の空振りで空振り率は驚異の73%。スクーバルに完全に抑え込まれており、この対戦が第5戦での大きな鍵になる可能性がある。

一方のポランコは、スクーバルを見事に攻略している。プレーオフで放った2本の本塁打だけではない。今季、ポランコはスクーバルに対して1度も空振りしていない。スイング12回で空振りゼロ、5打数で三振ゼロという驚異的な数字を残している。

今季、スクーバルは550回の空振りを奪い、これは全投手中最多だ。それでもポランコからは1度も奪えていない。だからこそ、ポランコは第5戦で勝敗を左右するキーマンとなる可能性が高い。

3. スクーバル本来の支配力は、結果につながるのか

「マリナーズ戦で未勝利」というスクーバルの数字は、見た目ほど悪くはない。実際の内容は結果以上に優れている。

まず、今季マリナーズ戦3試合での空振り率は36%。これは全対戦相手の中で5番目に高い数字だ。さらに三振率は30%で、これは明確にエリート級といえる水準である。第2戦でも7回2失点9奪三振という内容で、マリナーズは必死にもぎ取るようにして勝利を手にした。

また、スタットキャストによるマリナーズ戦でのxwOBA(投手が許した打球の質を総合的に示す指標)は.283。これは確かにスクーバルの今季平均値(ポストシーズンを含めて.260)よりやや高いが、.283がシーズン全体の数値だったとしても、メジャートップ10先発投手に入る。

したがって、第5戦ではスクーバルが再び三振を量産し、マリナーズ打線を封じてタイガースをア・リーグ優勝決定シリーズへ導く光景が容易に想像できる。だが、もし何かが少しでもかみ合えば、マリナーズにも、もう1勝の可能性は残されている。