2025年シーズンが終わりに近づく中、「ゴーストフォーク」で有名な男は幽霊のようにメッツを追い続けた。
千賀滉大は9月上旬にマイナー3Aシラキュースへ降格。その後、マイアミでのシーズン最終カードでメッツに合流したが、球団はメジャーのロースターに復帰させず、その予定もなかった。事情に詳しい関係者によると、メッツはポストシーズン進出後に先発投手に負傷者が出た場合に備え、千賀を呼び寄せていただけだった(実際はポストシーズン進出を逃した)。その時点でメッツは千賀、ジャスティン・ヘイゲンマン、ブランドン・ワデルの誰を起用すべきかを検討していたようだ。
2023年の同時期と比較してみよう。
5年7500万ドル(約114億5000万円)の契約は「お買い得」のように思われた。千賀はメジャー1年目からオールスターに選出され、ナショナル・リーグの新人王投票では2位にランクイン。しかし翌年、千賀は負傷に悩まされ、わずか1試合の先発登板に終わった。ポストシーズンで復帰したものの、本来のピッチングではなく、5イニングで7失点を喫した。
今季は、球団がスプリングトレーニングで慎重な姿勢を見せたにもかかわらず、再び好調なスタートを切った。しかし、6月中旬に右ハムストリング(太もも裏)を負傷したことで本来のピッチングを見失い、リハビリ登板とメカニクス(投球フォーム)の不安定さを繰り返す悪循環に陥った。負傷離脱前、千賀は13度の先発登板で防御率1.47を記録。ところが、復帰後は9度の先発登板で防御率5.90に終わり、マイナー降格となった。千賀の将来は短期的にも長期的にも不透明となっている。
シーズン最終戦のあと、千賀は「やっぱりケガをして以降、自分の身体が思うように動かなくなったというのは強く感じたし、それが結果に出てしまった部分もあった。なかなか最後のほうは苦しいシーズンだったし、後半1カ月は役に立たなかったというところは、いろいろ思うところはある」と語った。
千賀の契約は残り2年3000万ドル分が残っている。直近2シーズンでは合計118回2/3しか投げておらず、メッツは先発ローテーションの座を確約しないだろう。ノーラン・マクリーン、ブランドン・スプロート、ジョナ・トン、ショーン・マナイア、クレイ・ホームズ、デービッド・ピーターソンと先発のコマが揃っているだけでなく、今オフはさらなる先発投手の補強に動く可能性もある。
デービッド・スターンズ編成本部長は「コウダイは2年連続で非常に不安定で厳しいシーズンを過ごしている。彼には才能があり、ポテンシャルを秘めた選手であることはわかっている。その才能を引き出すために、私たちはあらゆる手を尽くすつもりだ。しかし、来季30試合に先発するという目標を彼に課すことができるだろうか。それは愚かな行為だと思う」と千賀が置かれている状況を総括した。
では、どちらのバージョンの千賀が本物なのだろうか。メジャー通算52先発で防御率3.00をマークし、9イニングあたり10個以上の三振を奪っている千賀なのか。それとも、果てしないリハビリとメカニクスの調整で球団関係者をイラ立たせる千賀なのか。
契約状況を考えると、メッツは以前のような千賀が戻ってくることを期待する以外の選択肢はないだろう。今オフの補強にかかわらず、千賀はコンディションさえ万全であれば、先発ローテーションに復帰できるはずだ。しかし、ハムストリングを負傷したあと「身体が変わった」と話す33歳の右腕にとって、完全復活は保証されたものではない。千賀は「ケガをしたあと、身体は変わっていると思うので、そこはまた前向きに捉えていきながら、しっかり自分を強くして、良いパフォーマンスを来年出せるように準備したい」と話している。
今のところ、メッツは千賀をアテにすることはできないというのが現実だ。だからといって、千賀が戦力になるという期待が全くないわけではない。
「濃いオフを過ごせたらなと思っている」と語った千賀。メッツにできるのは、千賀と協力して希望を持ち続け、復活を待つことだけだ。
