春季キャンプ中、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのクラブハウスで、思わず二度見する光景に出くわした。
そこにあったのは、まさかの「蒸し器」。選手がふたを開けると、湯気が立ちのぼり、中から出てきたのは、蒸したての肉まん、ではなく、スパイクとグラブだった。
「え、蒸しグラブ?」
「どういうこと?」
興味津々で聞いてみると、「革をなじませるにはスチームがいいんだよ」との答え。乾燥しやすいアリゾナならではの工夫らしい。
さらに選手やスタッフに話を聞くと、ケア方法は実にさまざま。お湯で柔らかくする「湯もみ」、蒸す、冷やす、さらには冷凍、木槌で叩く、洋服の乾燥機にかけるなど同じ道具でも、扱い方は十人十色。それぞれのこだわりが詰まっている。
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先日のヤンキース戦でカラフルなグラブを持っていたエンゼルスの内野手、ヨアン・モンカダに聞いてみると、真顔でこう返ってきた。
「電子レンジで2分」
思わず聞き返すと、「2分。1分でも3分でもダメ。2分」ときっぱり。
カップ麺の時間にこだわる人はいるけれど、グラブも奥が深い。試行錯誤を重ね、自分にしっくりくる革の感触を追い求めた末にたどり着いた最適解が、「きっかり2分」らしい。
4月6日の本拠地でのマリナーズ戦で、3本の本塁打スーパーキャッチを披露したジョー・アデルにも話を聞いた。
「基本はオイル。ケアした後は『グラブキーパー』のケースに入れて、形を保ったままバッグに入れているよ。昔ながらのやり方に、ちょっと現代的な要素を足した感じかな」
そう言いながら、ロッカーの奥にきれいに並ぶ2つのケースを見せてくれた。ケース中央には実際のボールよりも少し小ぶりの球体があり、そこにグラブをはめてサポーターのように巻き、形を整える仕組みだ。子供の頃に、古いタオルでオイルを塗り込み、ボールを入れてタオルなどで巻いていたやり方と同じだ。
電子レンジ使用について聞いてみると、「いや、それはちょっとリスク高いよね」と苦笑いしつつ、「ハイドロキュレーターっていう、カゴに入れてフタを閉めてスチームを当てる器具は使ったことがあるよ」と明かし、「車で踏む人もいるらしくて、それも見たことある」と続けた。
さらりと語ったが、本当にそんな方法があるのかと耳を疑ってしまう。
エンゼルスの一塁手、ノーラン・シャニュエルは、新しいグラブ(ミット)をおろす時は、「最初はスタッフに渡して、実際に使ってもらってなじませるんだ。だいたい2〜3日で革が柔らかくなって、すぐ使える状態になるよ」とのこと。
シャニュエルも電子レンジは未経験派。しかしスチーム系は経験済みだ。
「ホットパックをタオルで包んで、中にボールを入れて蒸す感じ。革がいい具合にほぐれるんだ。面白いでしょ?」
手入れの方法は、動画を見たり他の選手のやり方を参考にしたりと、それぞれが工夫を重ねている。
「熱湯をかける人もいるって聞いたことあるし、本当に人それぞれ。結局は自分に合うやり方を見つけるしかないんだよ。特にグラブは、それが一番大事だと思うよ」と笑顔を見せる。
メジャーリーグでは、乾燥したアリゾナから湿度の高い東海岸まで、天候も大きく異なる。
「アリゾナは乾燥してるから革も少しカサつく。でもニューヨークみたいに湿度が高い場所だと、まったく逆でしっとりする。それもまた面白いよ」
雨天でのプレー後のケアも欠かせない。
「正直、水は革にはあまりよくない。でも試合は止まらないからね。その後はしっかり乾かすこと。どこかに掛けて乾燥させて、カビないようにするのが大事」
プレー中の親友であるグラブへの愛情は選手全員人一倍だ。
かつてアレックス・ロドリゲスが試合後にグラブを冷凍庫に入れていたことで知られるが、その話を振ると「それはなかなかクレイジーだね」とシャニュエルは笑い、こう続けた。
「一番変わったやり方をしてるのは、もしかしたら投手かも。正直どうやってなじませてるのか分からないし、きっと野手とは違う方法があると思うよ」
というわけで、次は「投手のグラブの手入れ」にも迫ってみたい。