【ブルワーズ9−3カブス】ミルウォーキー/アメリカンファミリーフィールド、10月4日(日本時間5日)
マシュー・ボイドは、ワイルドカードシリーズ第1戦ででカブスのポストシーズン初先発を終え、すぐにナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)を見据えていた。宿敵ブルワーズとの対戦に進めば、短い登板間隔でも先発したい。ベテラン左腕はそう志願していた。
クレイグ・カウンセル監督はその大役をボイドに託したが、判断は序盤から裏目に出た。5日間の休養明けだったブルワーズ打線が初回に6点を奪い、アメリカンファミリーフィールドの熱気は一気に最高潮へ。5戦3勝方式シリーズの初戦は、カブスが3-9で落とした。
「いつだってマウンドに上がりたいし、いつだってチャンスが欲しい」
ボイドはそう語った。
「でも彼らはきょう、明確なプランを持って臨んできたし、序盤に自分は何度かミスをした」
カブスは5日(日本時間6日)にオフがあり、立て直してミルウォーキーの威圧的な雰囲気に再び臨む準備を整えられる。大差がついたとはいえ、1試合に過ぎない事実にも目を向けられるだろう。年配のカブスファンなら、1984年のナ・リーグ優勝決定シリーズを覚えているはずだ。あのときは第1戦でパドレスに13-0で大勝しながら、その5戦シリーズに敗れている。
カブスは今季、敗戦後の試合で46勝24敗と粘り強いチームの条件を備えてきた。数日前も、パドレスとのワイルドカードシリーズ第2戦の悔しい敗戦を振り払い、第3戦の勝負をものにしている。
「この時期の素晴らしさは、1敗はあくまで1敗に過ぎないという点だ」
カブスの遊撃手ダンズビー・スワンソンはそう語った。
「やるべきことは変わらない。きょうは望んだ結果ではなかったが、チームは驚くほど自信がある」
二塁手ニコ・ホーナーは語った。
ブルワーズとファンは、カブスを灼熱のるつぼに踏み込ませるためにできる限りのことをした。
アメリカンファミリーフィールドでの練習では、バッティング練習の間、ソフトロックのプレイリストが大音量で流れ続けた。試合前には、意図的かどうかは別として、球場の開閉式の屋根が一部開けられ、ビジターベンチは直射日光を浴びる一方で、ブルワーズのベンチは日陰になっていた。
試合前紹介でカブスの名が呼ばれると、ブーイングは途切れず、クレイグ・カウンセルが紹介されてフィールドに駆け出すと音量はさらに上がった。序盤の投手交代が重なり、ミルウォーキーのファンは前監督にいっそうブーイングを浴びせる機会を得た。
「ものすごい音量だった。だいたい予想どおりで、そう見込んでいた。最高のファンだし、きょうも見事だった」
ブルワーズの三塁手ケイレブ・ダービンはそう語った。
ボイドの志願だった。9月30日のワイルドカードシリーズ第1戦でパドレスと対戦し、4回1/3、58球の好投で降板。カウンセル監督によれば、左腕はすぐさまNLDS第1戦の先発を直訴し、2日の第3戦の九回には登板間のブルペン投球を兼ねて、肩を作っていたという。
「おそらくマシュー(ボシド)は第1戦でベンチに戻った時点から、きょうの登板のことを考えていた」と指揮官は試合前に語った。
「もし通常の先発で90球も投げていたら、この案は検討しなかっただろう。だが球数が少なかったので回復できると彼自身も分かっていたし、私たち(首脳陣)も早く回復できると踏んでいた」と続けた。
マイケル・ブッシュが一回、エース右腕フレディ・ペラルタの初球を右翼スタンドへ運び、ミルウォーキーの観客を一瞬、静まり返らせた。三塁側ベンチ裏のカブスファンの一団が歓声を上げ、他の観客は唖然とした表情で見つめた。だがその直後、ペラルタは3者を打ち取り、球場の空気はすぐに反転した。
ブルワーズはその裏、ジャクソン・チューリオ、ブライス・トゥラン、ウィリアム・コントレラスの3連打で反撃。左翼線、右翼線、左中間への二塁打が続き、カブスはわずか数分で逆転を許した。さらに、普段は堅守を誇るニコ・ホーナーの失策で追加点を奪われ、流れは完全にブルワーズへ傾いた。
サル・フレリックの緩いライナーがニコ・ホーナーの前に落ち、正確にさばけなかった。
「普段通りあの場面でアウトを1つ取れていれば。マティ(ボイド)が2失点でイニングを切り抜けて、今季何度も見せたように立て直せたはずだ」
ホーナーはそのシーンを振り返った。
ボイドは8人と対戦して30球で降板。スコアは1-4の劣勢で、最後の一打はブレイク・パーキンス。11球の粘り(うち6球ファウル)を経て、センター前へのタイムリーヒットでとどめを刺した。
「勝負の分岐点はパーキンスの打席だと思う」ボイドは語った。
「彼は食らいつき、戦い続け、10球超の末に打ち勝った。とはいえニコ(ホーナー)は、本当に重要な選手。あそこで立て直すのが自分の仕事だった。あの打席は、パーキンスが自分より上回っていた」
その後、救援のマイケル・ソロカからチューリオが2点タイムリー。この回だけで6得点のビッグイニングでブルワーズのポストシーズンでの1イニング最多得点に並んだ。二回が終わる頃には、ブルワーズが9-1と大きくリードし、球場は大騒ぎとなった。
右腕アーロン・シバーレが救援で4回1/3を投げ、敗戦の中で主力救援陣を温存することができた。これはカブスのポストシーズン史上、救援では最長の無失点登板。しかし、試合の流れはすでに大きく傾いていた。
ボイドの登板は、カブスのポストシーズンで先発が1イニング未満で降板するケースとしては通算4度目。1945年のワールドシリーズ第7戦でハンク・ボロウィが1死も取れなかったとき以来だった。
それでも、ボイドがこの登板を切り替え、今シリーズで再びマウンドに上がろうとしていることをチームメートはよく分かっている。
イアン・ハップは語る。
「彼はマウンドに立ちたがっている。チームのために投げたがっている。求めるものはそれで十分だ。自らボールを受け取りにいく選手、グラウンドに立ち続けようとする選手。そして彼はシーズンを通してそれをやってきた。私たちは彼を全面的に信頼している」
なお、「4番・ライト」で出場した鈴木誠也(31)は4打数ノーヒットだった。
