千賀滉大が、思わぬ形で存在感を高めている。
先発ローテーションを外れ、リリーフに回った右腕が、今度は試合終盤を任される存在になりつつある。7月を迎えた時点で千賀は0勝7敗、防御率9.09。32回2/3で自責点33と、投球回を上回る失点を喫していた。
ところが、リリーフに転向してから流れが変わった。7月の救援登板7試合で防御率2.45。23日(日本時間24日)のホワイトソックス戦ではサヨナラ本塁打を浴びたものの、ここまで4度のセーブ機会をすべて成功させている。
なぜ、これほどまでに変わったのか。
ポイントは、球種を絞ったことにある。
千賀はフォーシーム、ツーシーム、シンカーなど3種類の速球系に加え、スライダー、スイーパー、そしてフォークを持つ。先発なら多彩な球種を使い分ける必要があるが、1イニングなら話は違う。
「千賀には100マイル級の腕と、えげつないフォークがある。この組み合わせなら、終盤を任せるリリーフとして十分に機能する」と、アンディ・グリーン監督代行も、千賀の持つ武器に太鼓判を押す。
トレード期限後、千賀はフォーシームを64%、フォークを25.1%投じている。この2球種だけで89.1%。実質的に「速球とフォーク」の2本柱で勝負している。
この変化には理由がある。
今季、千賀はスイーパー、スライダー、シンカー、カットボールで痛打されている。これらの球種で打席が終わった場合、相手打者の打率は.364、長打率は.742。38歳で45本塁打を放った2003年のバリー・ボンズの長打率.749に迫る数字だ。
一方、千賀が誇るフォークは別格だ。その落差と球速から「ゴーストフォーク」と呼ばれる決め球は、投球の威力を数値化する「Stuff+」で118を記録。平均が100で、千賀の他の球種がすべて平均以下なのに対し、フォークだけが突出している。
ただ、フォークはいつでも投げられる球ではない。基本的には2ストライクからゾーンの外へ落として空振りを奪う球。だからこそ、その前に打者の目線を上げる速球が必要になる。
そこで鍵を握るのがフォーシームだ。
千賀のフォーシームは、球速が上がるほど威力を増す。
97マイル以上では被打率.226、長打率.258、空振り率25.4%
97マイル未満では被打率.300、長打率.720、空振り率11.5%
その差は明らかで、リリーフ転向後、千賀は1イニングを全力で投げることで球速を引き上げ、8月のフォーシーム平均は96.8マイル(約155.8キロ)に達している。
もちろん、まだ課題もある。制球は安定せず、ホワイトソックス戦ではフォーシーム7球のうち4球がゾーン外。平均球速も95.4マイル(約153.5キロ)まで落ちた。
ただ、千賀にとってリリーフ転向はまだ始まったばかり。メジャーで初めて連投にも挑戦するなど、未知の領域に踏み込んでいる。だからこそ、メッツにとって今後の登板は重要になる。
2027年、千賀をどこで起用するのか。先発に戻すのか。それとも、試合終盤を託すのか。
答えを出すには、もう少し時間が必要だ。ただ一つ言えるのは、苦しいシーズンを過ごしていた千賀に、「クローザー」という新たな選択肢が生まれつつあることだ。
