フィリーズ、初登板エイベルがスキーンズに投げ勝つ

May 18th, 2025

これほど完璧なメジャーデビューは本人も想像していなかっただろう。

フィリーズのMLBパイプライン有望株ランキング8位の右腕、ミック・エイベルが、日曜日のパイレーツ戦(シチズンズバンク・パーク)で6回無失点、9三振の圧巻デビュー。1-0の勝利に貢献した。

念願の昇格に対しこれ以上ない内容で応えて見せたエイベルだが、メジャーのマウンドに立つことができるのか自信を失くした時もあるという。

しかし、デビュー戦の舞台となる南フィラデルフィアの球場の姿が見えた瞬間、実感とともに不安は覚悟へと変わった。ポール・スキーンズとの高レベルな投手戦を制し、メジャー初登板を勝利で飾ってみせた。

デビュー戦での9三振は、1947年のカート・シモンズと並び、1901年以降、フィリーズの投手による最多タイ記録。6イニング以上を投げ、無失点で抑えたのは2015年8月21日のジャレッド・アイコフ以来の快挙でもある。5安打、無四球という完璧な内容で華々しいデビューを飾った。

記録ラッシュはまだ終わらない。MLBの公式記録によれば、デビュー戦で6イニング以上無失点、9三振、無四球を記録したのは1901年以降でわずか3人目。他の2人は今永昇太(2024年4月1日)とニック・キングハム(2018年4月29日)である。

「小さい頃からの夢だったけど、自分で期待していた以上の出来だった。全力で投げることにだけ集中していて、本当に楽しかった」

「彼にとっては長い道のりだったから、(デビューできることに)すごくワクワクしていたよ」とチームメイトのブライス・ハーパーは語る。

エイベルは2020年ドラフト1巡目(全体15位)でフィリーズに指名され、一時は全体トップ50に名を連ねるほどの有望株。昨年の3Aリーハイバレーで苦戦を強いられるも、球団は昨秋、メジャー40人枠に彼を加えることでその「期待」を示していた。

そんな中で、今季の3Aでは8試合で5勝2敗、防御率2.53というピッチング。アーロン・ノラが金曜日に15日間の負傷者リストに登録されたことで日曜日に昇格のチャンスを得た。

ただし、この登板は一時的な昇格であり、月曜日には再び3Aに戻る予定である。

「もしあの内容で投げ続けていれば、間違いなく彼は戻ってくるよ」とロブ・トムソン監督は断言する。

初回、エイベルはワンエル・クルーズをカウント1-2からのカーブで空振り三振に仕留め、奪三振ショーの幕を開けた。2球目には、今季3Aで1度しか記録していなかった99マイル(約159.3キロ)を計測。二回には3者連続三振を奪い、その勢いは加速した。

この日の平均球速は156.6キロと3A時代の153.9キロを上回り、全体で84球中62球がストライク。さらに、空振りは18回を記録し、自身今季最多だった17回を更新するなど、圧巻の投球内容で三振の山を築いた。

同じく9三振を記録し、8回1失点という圧巻の投球をみせたスキーンズもその才能を評価。「彼と投げ合えて高揚した。会ったことはないけど、子どもの頃に同じ大会に出てたかもしれない。高校時代から有名だったし、ベンチに戻ってきたチームメイトも彼のボールを『エグい』と言っていた。今夜また彼の投球を見返すし、次回の登板も見るよ」。

この忘れがたいデビュー戦は、フィリーズの左腕ホセ・アルバラドが薬物規定違反で80試合の出場停止を受けたショックを一時的に和らげるものとなった。アルバラドは8月19日に再登録可能だが、今季のポストシーズン出場資格は失った。

「彼はブルペンの柱だったから、大きな穴ができてしまったよ」とジョーダン・ロマノは語る。

だが今日はその穴を埋めるべく、カーケリング、ストラム、ロマノの3人が3イニング無失点リレーでエイベルに勝利をプレゼント。9回にはロマノが3者連続三振で今季セーブを記録した。

「少しプレッシャーはあったよ。あれだけ完璧に投げたんだから、彼のために絶対に0で抑えないといけないってね」とロマノは笑った。

試合後、エイベルはフィールドで家族や友人と記念撮影。スマートフォンには数え切れないほどのメッセージが届いていた。

「まず最初に母さんにテキスト(ショートメッセージ)した」とクラブハウスで語った。「『15〜20分で出て行くよ』って。とにかく今日は、この瞬間を大事にしたいと思ってる」