匿名アンケートで聞いた、選手たちが学んだABSの4つのポイント

March 23rd, 2026

2026年シーズンの開幕戦がすぐそこに控えている。今シーズンが特別なのは、T-Mobileが提供する自動ボール・ストライク(ABS)チャレンジシステムにより、レギュラーシーズンの試合で初めて、選手がボール・ストライクの判定にチャレンジできるようになることだ。

なお、ABSは新しい仕組みではあるが、完全に未知というわけではない。昨季3Aで導入され、過去2年のスプリングトレーニングでもメジャー選手たちが使用してきた。そのため、多くの選手はすでにこの新しい仕組みに慣れている。

では、彼らは何を学んだのか。MLB.comの各担当記者がクラブハウスで選手に匿名で意見を求め、ABSに関するさまざまなテーマについて調査を行った。

ここでは、その中でも特に重要な4つのポイントを紹介する。

1. チャレンジのタイミングを見極めること

ABSの戦略において最も重要な要素かもしれない。どの球にチャレンジするかではなく、いつチャレンジするかが重要だということだ。

ア・リーグ東地区のある選手は「当然だけど、九回の重要な場面でチャレンジを残していない状況は避けたいよね」と語る。

実際、多くの選手がそれを痛感している。

ナ・リーグ中地区のある投手は、「これまでチャレンジは4回中、3回成功しているけど、外した1回は初回に感情的になってやってしまったものだった。『なんであんなことしたんだ、バカだった』って後からって思ったよ」と振り返る。

チームに与えられるABSのチャレンジ権は1試合につき2回のみ(延長戦では追加あり)で、判定が覆らなかった場合はその権利を失う。

「序盤で無駄にしちゃいけない」とア・リーグ東地区の選手は語る。

同地区の別の選手もこう付け加える。「無死走者なしならチャレンジしない。明らかにおかしい判定のために使うべきだ」

各チームはABSの戦略についてミーティングを行っている。例えばフィリーズは、カウントやアウト数、イニングなどを基準にした最適な使い方を分析部門が提示しており、他のチームも同様の取り組みをしていると考えられる。

2025年の3Aのデータが示すように、チャレンジは実際に試合終盤まで温存される傾向がある。ただし、それには相当な規律が必要となる。

「自分の状態や状況を理解する責任がある。それをしっかり守る強さが必要なんだ」とナ・リーグ中地区の選手は語った。

2. 感情を持ち込まないこと

先ほどのナ・リーグ中地区の匿名投手が「感情的だった」と後悔したチャレンジは決して珍しいケースではない。

ア・リーグ東地区のある選手は「チャレンジするかどうかを感情で決めてしまう選手が多い」と語る。

しかし、それを抑えるのは簡単ではない。ABSは「ロボット審判」と言われることもあるが、決して野球から人間的要素を排除するものではない。

あるナ・リーグ中地区の選手は、「自分にも経験がある。調子が悪いと『あれがストライクのはずがない』と思ってしまうけど、ただ感情的になっているだけで、実際はストライクなんだ」と説明する。その場合は貴重なチャレンジ権を無駄にすることになる。

では感情を抑えることは可能なのか。このテーマについては各チームがスプリングトレーニングを通じて話し合っており、全員が意識しているポイントだ。

「自分をコントロールしなければならない。際どい球をストライクに取られると、どうしても感情的になってチャレンジしたくなる」とフィリーズの捕手ギャレット・スタッブスは語った。

3. 判定が難しい球種がある

これは球速にも関係するが、それ以上に球の変化量が影響する。大きな変化と高い球速を兼ね備えた球は、チャレンジの判断を極めて難しくする。

あるア・リーグ西地区の選手は、特にシンカーは難易度が高いと言う。

「ゾーンの下をかすめているかどうか見極めるのが難しい」

別の同地区の選手もこう付け加える。「テレビでは『今のはチャレンジすべきだった』って言われるけど、96マイル(約154キロ)の球を瞬時に判断するのは難しい」

これらは一瞬で下さなければならない判断であり、1試合に2回しかないチャレンジではミスは許されない。

またABSによって、これまで見逃されがちだった球種でもストライク判定を得やすくなる可能性がある。

ア・リーグ東地区の捕手は「バックドアのスイーパーは外から入ってくるので見逃しがちだった。でも今は五分五分の判定がもらえるかもしれない」と話す。

特定の選手も得をする可能性がある。例えば昨季は、フランバー・バルデスのシンカーが、ストライクゾーン内にもかかわらずボールと判定された回数で最多だった。

4. 捕手のフレーミングは依然として重要

過去10年でさまざまな技術革新が進み、これまで過小評価されてきた捕手のフレーミングが正当に評価されるようになった。

ではABS導入後、フレーミングはどうなるのか。前述の通り、人間的要素は依然として残る。ABSは完全なロボット審判ではないため、フレーミングが消えることはない。むしろ、より高度な駆け引きへと進化する可能性がある。

ア・リーグ西地区の捕手は「これまでとは違う。審判をだますのではなく、打者に“ボールだ”と思わせてチャレンジさせることもある」と語る。

つまりABSによって、フレーミングに新たな戦略的要素が加わる。

調査に答えた多くの選手は、ABSは投手よりも捕手の担当だと捉えており、多くの投手はチャレンジの判断を捕手に委ねている。加えて、捕手は新たな戦術も手にしている。例えば、フレーミングで打者を誘導し、実際には際どくない球にチャレンジを使わせるといったケースだ。

ただし、ア・リーグ西地区の捕手は「それは難しく、頻繁に起こるものではない」と指摘する。

“味方同士の影響”が増える可能性がある。

ナ・リーグ西地区の選手は「捕手のフレーミングが上手すぎて、投手としてマウンドにいると本当にどこを通過したか分からないことがある」と語る。

実際、多くの選手は「チャレンジは投手ではなく捕手が行うべきだ」と考えている。理由は、捕手の技術があまりにも高いからだ。

ア・リーグ東地区の選手は「多くの捕手はどんな球でもストライクに見せる」と語る。

フレーミングが消えることはない。ただ、今までとは少し変わるかもしれない。