MLB機構側の最新労使協定案、最低年俸の引き上げとFA制度の改定を提示

June 26th, 2026

MLBは25日(日本時間26日)、選手会に対し提示したフリーエージェント(FA)権取得などの条件を定める制度案の一部として、一部の選手がFA権を取得するために必要なサービスタイム(メジャー実働年数)の短縮とクオリファイング・オファー(QO)制度の撤廃というMLB選手会の提案を受け入れた。

今回提示されたMLB案の条件では、30歳以上の選手がFAになるまでの期間が6年から5年に短縮される。1976年にFA制度が導入されて以来、FAになるまでの期間が6年未満になる初めてのケースとなる。

またこの提案は、以下を要求している。

  • 最低年俸の歴史的な引き上げ
  • 年俸調停前のボーナスプール(年俸調停権を持たない成績優秀な若手選手らに分配される特別賞与枠)の30%増額
  • 「コーナーストーン・プレーヤー(中心選手)」(NBAの「バード特例」と同様)との再契約を目指す球団への優遇措置
  • および後払い契約の撤廃

この提案は、現在進行中の労使協定交渉において、球界内の戦力均衡に対処するためのサラリーキャップ(年俸総額の上限)およびフロア(下限)を導入するMLBの目標の一つとして行われた。

MLBの広報担当、グレン・カプリン氏は声明で「野球界発展のためにファンが解決を望む最大の問題は、ワールドシリーズ優勝の希望を多くのファンから奪う年俸格差の是正である。他の主要スポーツはすべてこの問題に取り組み、各リーグのより多くの小規模都市のチームが毎年優勝のチャンスがある。サラリーキャップとフロアの提案によって競争条件が平等になり、チケット収入や放映権料などの収益を選手とMLB機構で50%対50%の割合で分配しつつ、選手が求めるFA取得期間の短縮や最低年俸の上昇などへ柔軟に対応できるようになる」と述べた。

選手会に対するMLB機構の最新提案の主要ポイントは以下の通り。

早期のFA権取得

MLBは、30歳以上の選手がFAになるまでの期間を6年から5年に短縮するという選手会の提案に合意した。これにより、現行の労使協定下でサービスタイム5年を持つ選手の48%が1年早くFA権を取得することになり、選手会の目標が実現する。

この条項に基づき、25日(同26日)時点でMLBのベンチ入り26人枠に入っている354人が、1年早くFA権を取得する見込みだ。

選手会の提案では、各球団はサービスタイム5年の選手と、年俸上位125人の平均(2026年は2202万5000ドル=約35億2400万円)と同額の単年契約で再契約することが可能となる。

FAに関するこの変更案は、2027年シーズン後のオフシーズン(新基本協定が完全に適用される最初のオフシーズン)から発効する。段階的な導入期間は設けられない。この条項により恩恵を受け、1年早くFA資格を得る選手の例として、ジャレン・デュラン(29=レッドソックス)、アーニー・クレメント(30=ブルージェイズ)、ビニー・パスカンティーノ(28=ロイヤルズ)らが挙げられる。

最低年俸の歴史的な引き上げ

MLB機構の案では、サービスタイム2年以上の選手を対象に、2027年の最低年俸が78万ドル(約1億2480万円)から100万ドル(約1億6000万円)へと28%引き上げられる。サービスタイムがゼロまたは1年以上の選手は、1年分のサービスタイムを満たせば100万ドル(最低年俸90万ドル=約1億4400万円+年俸調停前のボーナスプールから自動的に支給されるサービスボーナス10万ドル=約1600万円)を受け取る。

この28%の増額は、球史において前年比で最大の最低年俸引き上げとなる。MLBの試算では、今季の開幕でメジャー40人枠に入っている選手の57%がこの変更の恩恵を受けていたことになる。

最低年俸は将来的にサラリーキャップとフロアに連動して上昇する。

年俸調停前ボーナスプール(若手選手向けの特別賞与枠)の増額

現行の労使協定の一部として2022年に導入されたこのボーナスプール(年俸調停権を持たない成績優秀な若手選手へ分配される特別賞与)は、2027年に5000万ドル(約80億円)から6500万ドル(約104億円)へと30%増額される。その後、労使協定期間の終了までに7500万ドル(約120億円)まで拡大する。

MLB機構はさらに年俸調停前ボーナスプログラムに新たな段階を追加し、サービスタイム2年未満でシーズンを迎え、1年分のサービスタイムを満たした(負傷者リスト入りがシーズンの50%未満)全選手に10万ドル(約1600万円)のボーナスを支給することも提案している。このプールはMLB機構が一括して支払う。

この条項が適応されれば、シーズンを通じてメジャーに在籍する調停前の全選手が少なくとも100万ドル(約1億6000万円)を稼ぐことになる。2025年であれば、サービスタイム2年未満の178人が年俸とボーナスを合わせて最低100万ドルを得ていた計算になる。

クオリファイング・オファー(QO)制度の撤廃

選手たちがFAの足かせと見なし、1981年のストライキの原因にもなったQO制度は、今回の提案で撤廃される。これにより1976年の導入以来初めて、ドラフト指名権の補償がなくなる。

2025年から2026年にかけてのオフシーズンには、13人がQOを提示された。4人が受諾し、最終的に1人が単年契約で再契約を結んだ。

「コーナーストーン・プレーヤー」の優遇措置

MLB機構は、各球団がスーパースターを引き留めるという目標に対処するため、NBAの「バード特例」に似た制度を提案している。

他球団からFA選手を獲得する球団は、最長5シーズン、初年度の年俸上限をキャップの15%とする契約に制限される(2027年開始の契約では総額2億200万ドル=約323億2000万円が保証される)。しかし、自球団の選手と契約を結ぶ球団は、FA期間の最大6年をカバーし、初年度の年俸上限をキャップの16%とする契約(2027年開始の契約で総額2億6500万ドル=約424億円)を提示することが可能となる。残りの契約年数においては、年俸の増加は最大5%まで許可される。

契約年数の上限は、契約時点の予測によるFA期間にのみ適用される。そのため、まだFA権を取得していない選手は、引き続き長期契約(コナー・グリフィン(20)、ケビン・マクゴニグル(21)、ローマン・アンソニー(22)らが最近結んだ契約延長など)に合意することが認められる。これらの契約の最大価値は、選手のサービスタイムに基づいて決定される。

例えば、2027年に開始する契約の場合は以下の通り。

契約年数と年俸の上限に関する規定は、スター選手が現在の所属チームと再契約する動機付けとなり、選手とファンの間に長期的なつながりを築くことを目的としている。さらに、契約年数を長くして、意図的に平均年俸を低く見せかけるようなサラリーキャップの抜け道を塞ぐ狙いもある。

年俸総額の上限が決まっている中で、少数のスター選手だけに巨額の資金が偏るという懸念に対処する。同時に、長期契約によって成績に見合わない高給を受け取り続けるいわゆる“不良債権化”を減らし、現在の活躍に応じた適正な年俸が支払われる仕組みを作ることも目標としている。

これらの制限は、NBA(バスケ)、NFL(アメフト)、NHL(アイスホッケー)のキャップ制度で許容されている上限と同等である。

後払い契約の撤廃

新たな契約に後払いを含めることは許可されない。後払いを含む現在の契約は、この変更の影響を受けない。

提案におけるその他の条項

  • MLB機構は年俸調停制度の現状維持を提案。ただし、MLB機構側の懸念を解消する新制度への移行を条件とするなら、対象選手の年俸引き上げに向けた協議に応じる姿勢を示している。
  • 若手選手の早期昇格を促す「有望株昇格インセンティブ(PPI)」制度は拡大される。条件を満たした有望株をメジャーへ昇格させた球団は、恩恵(見返り)として最大2つの追加ドラフト指名権(米国内ドラフトで1枠、新設予定の国際ドラフトで1枠)を獲得できる。
  • 新人王投票で1位または2位に入った資格のある有望株が、1年分のサービスタイムを受け取るかどうかを決定する際、MLBに移籍した日本プロ野球(NPB)や韓国プロ野球(KBO)を含む海外のプロ選手は対象外となる。