MLB(メジャーリーグ機構)とMLBPA(MLB選手会)が本格的な労使交渉を開始するための初期提案を交換してから1週間後、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、リーグが提案したサラリーキャップ(チーム総年俸の上限)とサラリーフロア(最低年俸総額)の制度が選手の給与を削減するという考えに反論した。
MLBPAのブルース・マイヤー暫定専務理事は、もしMLBの提案が2026年に導入されていれば、選手たちは5億ドル(約750億円)以上の損失があっただろうと述べた。マンフレッド・コミッショナーはその主張に強く反対した。
3日(日本時間4日)、マンフレッド・コミッショナーはオーナー会議での記者会見で、「私たちの初期提案は、契約の最初の1年目に、メジャーリーグの選手たちが2026年よりも多くの資金を稼ぐことができるよう明確に構築されました。誰かがそれ以外のことを示唆しているとすれば、それは単に正確ではありません」と反論した。
MLBの初期提案にはサラリーキャップとサラリーフロアが含まれており、どの球団も上限を超えることは許されず、全球団が下限を順守することを求められている。
2027年のサラリーフロアは1億7120万ドル(約256億8000万円)に設定され、フロアを満たすために12球団が合計で6億1700万ドル(約925億5000万円)の年俸総額を増やす必要がある。2027年のサラリーキャップ案は2億4530万ドル(約367億9500万円)となり、8球団が合計で5億7800万ドル(約867億円)の年俸総額を削減する必要がある。
チームの年俸総額が上限や下限のルールに収まっているかを判定する際は、現行のぜいたく税(CBT)と同じ基準。つまり、純粋な選手の給与だけでなく、球団が負担する福利厚生費(年金や保険など=2027年は1球団あたり約2300万ドル=約34億5000万円になる見込み)も含めた総額で評価される仕組みだ。
MLBPAは新協定の一部としてサラリーキャップ制度に同意しないと繰り返し主張してきた。しかし、マンフレッド・コミッショナーは交渉プロセスによってほぼすべての問題が流動的になると指摘した。
同コミッショナーは「お互いに提案を出し合うのが交渉というものです。仮に私が『最低年俸の引き上げには絶対に応じない』と言ったとしても、選手会が『分かりました。それで結構です』とすんなり納得するわけがありません。今回は、機構として最大のビジネス上の課題を解決するための提案を行いました。この問題をクリアにすることは、オーナーだけでなく選手たちにも非常に大きなメリットをもたらすと信じています」と語った。
MLBのCBT(ぜいたく税)は全30球団を公平な競争条件に保つように設計されたが、マンフレッド氏は約20年前に導入されて以来、望ましい影響をもたらしていないと認めた。
過去10年間、MLBのレギュラーシーズンとポストシーズンは大規模市場のチームに支配されており、リーグ優勝決定シリーズ進出チームの約80%、ワールドシリーズ進出チームの85%、そして優勝チームの90%が、市場規模の上位15都市をホームにしている。
2012年以降、下位15市場のチームでワールドシリーズを制したチームは唯一、2015年のロイヤルズ。だが、NFL(5チーム)、NBA(7チーム)、NHL(7チーム)では、サラリーキャップ制度下で小規模市場のチームが優勝している。
「私たちはこれまで何度も交渉を重ね、ぜいたく税(CBT)を通じて資金力による不公平をなくそうと尽力してきました。ですが、時には制度の失敗を認めなければなりません」と同コミッショナーは明かした。
「これほどの莫大なぜいたく税が支払われてきた事実を見れば、私たちが単にお金を集める目的でこの制度を作ったのではないとお分かりいただけるはずです。しかし、球団が納めるぜいたく税がどんどん増え続けている現状を見れば、ぜいたく税というルールが(大都市球団や金持ち球団が)補強資金の使いす過ぎを防ぐブレーキとして機能しておらず、結果的に戦力均衡への役目を果たしていないのは明らかです」
提案されたサラリーキャップは、現在のCBT(ぜいたく税)の基準額である2億4400万ドル(約390億4000万円)よりもわずかに高くなる。
「私たちは合意を目指しています。そのため、交渉の出発点として一連の提案を提示しました。双方(MLBと選手会)のあらゆる意見を受け入れるオープンな姿勢でいますが、戦力の偏りを危惧するファンの声に応えるためには、より現実的なルール作りが不可欠です。単なる罰金制度(ぜいたく税)では戦力均衡という本来の目的を達成できなかった事実を無視するわけにはいきません」
MLBとMLBPA間の次回の交渉日程は決まっていない。
だが、初期提案を交換したことで、マンフレッド・コミッショナーは対話の継続を熱望している。
同コミッショナーは「最終的に成立する(新たな)協定は、私たち機構側が目指すものと、選手会側が目指すものの両方をある程度満たすものでなければなりません」と話した。
「すべての提案の裏には、達成すべき目的があります。機構としては選手会の提案を精査し、選手たちが何を成し遂げようとしているのかを理解したうえで、その目的を一部満たしつつ、機構としての要求も達成できる道を探ろうとしています」
現在の労働協約は12月1日(日本時間2日)に失効する。
「機構が提示した提案は、ファンの最大の関心事である『戦力均衡の欠如』にどう対処するかについて、MLBPA(選手会)と前向きな対話を深めるための土台になると考えています。私たちは再び交渉の席につき、すでに提示した課題について、いい話し合いを行い、このプロセスを完了させたいと願っています。まだ手を着けていない議題も山積しており、一刻も早く交渉の場に戻りたい思いです」
