GM会議:FA選手、トレード候補、注目ポイント

November 10th, 2025

昔から「ベガスで起きたことはベガスにとどまる」と言われるが、今週のゼネラルマネージャー(GM)会議については当てはまらない。GM会議は毎年、ホットストーブの幕開けを告げる非公式の起点となる。

今週ラスベガスで起きることは、すぐに具体的な動きにはつながらないかもしれないが、編成本部長や代理人にとってオフの方向性を定める好機となり、その多くは今後数週間から数カ月にわたって進んでいく。

来季の選手編成に本格的に取り組むウインターミーティングとは異なり、GM会議は球界トップの編成責任者が集まり、全般的な意見交換を行い、将来の動きへ先手を打つ場になる。

球団幹部たちは滞在中の大半をリーグ関連の課題を話し合うミーティングに費やすが、同時にトレードの可能性について話し始め、今オフのFA市場をめぐって代理人とも面会する時間を必ず捻出する。

以下は、今週のGM会議で想定されるポイントの概要だ。

FA交渉の活発化

フリーエージェント(FA)は先週末に正式解禁となったが、GM会議は契約に向けて球団と代理人が下準備を始める場となるのが通例だ。

30球団の編成幹部がラスベガスに集結し、代理人の大半も出席する。代理人側の年次ミーティングはGM会議終了後の週後半に行われる予定だ。球団幹部たちは他の業務にも追われるが、数多くの代理人と実際に顔を合わせ、探り合いを始める時間は必ず確保する。

毎年の注意点として、30球団の幹部らが金銭面の条件を話し合えるからといって、会期中に契約がまとまるとは限らない。合意までには時間がかかるのが普通で、実務の多くは電話やメールで進むものの、同じ部屋で向き合って話す意義は小さくない。

新任幹部たち

昨年のGM会議では、初参加の新任幹部はバスター・ポージーただ1人だった。

今年はポール・デポデスタ、ハイム・ブルーム、ポール・トボーニの3人が、これまでとは異なる立場でラスベガス入りする。

デポデスタは今週、ロッキーズの編成本部長に就任。過去10年間をNFLクリーブランド・ブラウンズのフロントで過ごしたのち、野球界へ復帰した。1999〜2004年にアスレチックスでビリー・ビーンGMの下、アシスタントGMを務め、その後2シーズンはドジャースのGMを務めている。今回の野球界復帰は今オフ最大級の話題の一つであり、着任してから初めて各球団幹部と顔を合わせる機会となる。

ナショナルズは先月、35歳のトボーニを新たな野球運営部門代表として招聘した。過去10年間をレッドソックスで過ごし、野球運営インターンから昇進を重ね、2年前からアシスタントGMを務めていた。

ブルームは先週、カージナルスの編成本部長に正式就任した。過去2シーズンは顧問として在籍しており、球団への精通ぶりからスムーズにトップ職へ移行できるとみられている。ただし、編成部門の代表として臨むのは今回のGM会議が初めてとなる。

ブルームはレイズで15年間勤務し、アンドリュー・フリードマン、エリック・ニアンダー、マット・アーノルド、ジェームス・クリックらと共に働いた。2019年オフにはレッドソックスのチーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)に就任し、ボストンで4シーズン指揮を執ったが、2023年9月に退任している。

トレード

GM会議で実際にトレードが成立するのはまれだが、前例がないわけではない。2022年の会議では、レンジャーズがブレーブスからジェイク・オドリッジを獲得し、2018年にはレイズがマイク・ズニーノをトレードで加入させた。2015年の会議では、クレイグ・キンブレル、アンドレルトン・シモンズ、アーロン・ヒックス、ジェレミー・ヘリクソンらが移籍し、近年でも特に動きの多い週となった。

今週、最終的にトレードがまとまらなかったとしても、オフのトレードに向けた下地作りが行われるのがGM会議であり、30球団の幹部が同じ場所に同時に集まる数少ない機会でもある。

昨年はサンアントニオでの会議で市場が温まり始め、ギャレット・クローシェやジョシュ・ネイラーらの名前がさまざまな会話の中で取り上げられた。

会議の締めくくりに、ある幹部はこのオフはトレードが多くなり、注目選手の移籍が相次ぐだろうと予測した。

「少なくとも最初の段階では、これまでなら話題にもしなかったような名前について、各球団が話し合う姿勢を見せている。前向きなサインだと思う」とその幹部は語った。

翌月、クローシェはホワイトソックスからレッドソックスへ、ネイラーはガーディアンズからダイヤモンドバックスにトレードされた。昨オフに移籍した他の選手には、カイル・タッカー、デビン・ウィリアムス、コディ・ベリンジャー、ジョナサン・インディア、ヘスス・ルザードらがいる。

クオリファイング・オファー決断の期限が迫る

過去にはGM会議の最中にクオリファイング・オファー(QO)の受諾期限が設定されていた年もあったが、今年の期限は11月18日。球団幹部たちがラスベガスから帰ったおよそ1週間後となる。

制度が始まった2012年以降、QOを提示された144選手のうち、受け入れたのはわずか14人。今季QOを受けた13選手の大半は拒否する見込みで、所属球団もその前提で今後の編成を進める。

関係者によると、グレイバー・トーレス、ブランドン・ウッドラフ、今永昇太(32)の3選手は、1年2250万2500ドル(約34億2000万円)の契約を受け入れる可能性を検討しているが、いずれもFA市場での勝負に出る可能性もある。今週、代理人が各球団と行う交渉が、その最終判断を下す手助けとなりそうだ。