My Game, My MLB ー私にとってのMLBとはー
暑い夏から季節はすっかり秋へと移り変わったが、世界でいちばん熱い瞬間を迎えている場所がある。それは、ポストシーズンで連日のように激闘が繰り広げられ、ワールドシリーズ直前のMLB。
今シーズンもいよいよ大詰めを迎え、「世界一」を目指すチームと選手たちがぶつかる最終決戦の先には、きっとドラマのような結末が待っているのだろう。そんな今こそ、さまざまな人の熱いMLBへの思いを解き明かそう。
ゲスト：藤木直人／後編
6回目のゲストは、俳優・アーティスト・ラジオパーソナリティなど多岐にわたって活躍する藤木直人さん。生粋の「MLBファン」としての目線でMLBとの出会い、心に残る試合、現在の日本人選手の活躍ぶりまで、MLBへの熱い思いを語ってくれた。
＜前編はこちら＞
プロフィール：藤木直人さん
1972年7月19日生まれ、千葉県出身。俳優・アーティスト・ラジオパーソナリティ。デビューから現在まで数多くの話題作に出演。2014年からは10年以上、TOKYO FM『SPORTS BEAT supported by TOYOTA』のパーソナリティとしてアスリートの声を訊き続けている。
【イチローさん、大谷選手が「それぞれのスタイル」でMLBで通用する姿を見せてくれた】
――藤木さんは、MLBの試合を現地で観戦した経験があると伺いました。
2試合だけなんですけど、2004年にイチローさんの試合をどうしても見たくて、早い段階からスケジュールを調整して8月に行けることになりました。ちょうどその年、イチローさんは驚異的なペースでヒットを打っていて、僕が飛行機に乗る前にすでにシーズン199安打まで到達していたんです。搭乗中にもう１試合あるので「これはアメリカに着く頃には200安打を達成しているだろうな……」となかば諦めていたんですけど、その試合がノーヒットに終わって。僕は翌日から2試合みられることになっていたので、「これは200本目を生でみられる！」と確信したんですけど、最初の試合が4打席目までノーヒット。「あれ、もしかして明日も打てなかったら、せっかくアメリカに来たのにイチローさんのヒットを１本もみられずに帰国するのか……」と不安になった瞬間、5打席目でホームランを打って、シーズン200安打を決めてくれたんです。
――イチローさんのホームランをスタジアムでみることができた。
イチローさんは「ホームランは狙って打つ」と仰っているように、節目のヒットはけっこう狙うことが多くて、まさにその一打をこの目で見ることができた。あれは一生の思い出です。ちなみに、その年はヤンキースが日本で開幕シリーズを行っていて、京本政樹さんから「ヤンキース戦、観に行かない？」と誘われて巨人との練習試合に連れて行ってもらって、そこで松井秀喜さんのホームランもみています。だから僕は2004年、イチローさんと松井さんのホームランを、生でみているんです。コレは、なかなか貴重な体験なんじゃないかな（笑）。
――生でMLBの試合を観戦して、なにか感じることはありましたか？
まず、スタジアムがシンプルにカッコいいですよね。おそらく広告に使っていい色も制限があるんじゃないですかね？全体的に統一感があって、その場にいるだけで言い知れぬ高揚感に包まれる。あとは、鳴り物や応援歌のない環境そのものが、NPBとは全く違う雰囲気だなって。僕は子供の頃から阪神ファンで「選手の応援歌をおぼえて、みんなで歌って踊る」のが野球だと刷り込まれてきたので、本当にカルチャーショックを受けました。MLBとNPBのどちらも、違うスタイルという意味ですごく楽しめると思います。
――野茂投手、イチロー選手が日本人選手としての扉を開いて、現在は多くの日本人選手がMLBでプレーして、なおかつ結果を残しています。
考えられない、信じられないことが今、起こっていると感じます。もちろんワールドベースボールクラシックなどで日本野球のレベルの高さはすでに示されているけど、それでもMLBの舞台で各球団に日本人選手が主力としてプレーしている。本当にすごい時代だなぁと。そのうえで、やっぱり全員が通用するわけではない厳しい世界であることもMLBの魅力だし、すごさなんだろうなと思いますね。
――MLBでは今まさに、ポストシーズンという最高峰の戦いが繰り広げられ、日本時間10月25日（土）からはワールドシリーズが開幕します。
どんな対戦カードになるかは分かりませんが（※インタビュー時点ではリーグ優勝決定シリーズを開催中）、ドジャースは進出できそうですよね。大谷翔平（31）選手、山本由伸（27）投手、佐々木朗希（23）投手の3人がワールドシリーズの舞台で戦う姿をみられるのが楽しみです。僕自身の希望を言っていいならドジャース対マリナーズの「日本人対決」がみたいです。マリナーズにはイチローさんがいますから（※会長付特別補佐兼インストラクターとしてチームに帯同）。ただ、ブルージェイズも強いですよね……どちらが上がってきても、盛り上がる戦いになることは間違いないと思います。
ドジャースのキーマンはやはり佐々木投手じゃないでしょうか。１年目の今シーズンは苦しみながら、最後に復活して、今やドジャースの守護神と言ってもいい存在になりました。世界一を決める九回のマウンドに佐々木投手が上がる瞬間をみたいです。そのうえで「ロバーツ監督、頼むからランナーが出ても佐々木を途中で代えないでくれ！」と祈りたいですね（笑）。
――最後に、これからMLBをみはじめるファンの方にメッセージをお願いします。
やはり、「日本人選手の活躍」から注目し始めるのが一番じゃないでしょうか。僕自身、野茂さん、イチローさんから入って、今も応援を続けています。野茂さんが扉を開いて、イチローさんがそれまでのMLBの常識を打ち破って「日本野球の真髄」がMLBでも十分に通用することを示してくれました。そして今、大谷選手がイチローさんとはまた違う形で「日本人が、MLBの王道スタイルでも通用する」ことを示し続けてくれています。多くの日本人が海を渡って、さまざまな魅力を僕らに伝えてくれる。僕はこれからもひとりのファンとしてMLBを楽しんでいきたいと思っています。
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