ドジャースは今季も昨季と同じく、野球界の頂点でシーズンを終えた。ワールドシリーズ連覇によるオフの幕開けとともに、他球団の目標となる存在であり続ける。一方で他の球団は、これから数カ月でその差を詰める作業がテーマになる。
それは、今季ポストシーズンに到達しながら突き抜けられなかった11球団も同様だ。今季を2026年に向けた足がかりと見なすかもしれないが、年が変われば何も保証されないことを歴史が示している。
以上を踏まえ、来季に前進するために、その11球団が今オフ直面する最大の課題を考える。
トロント・ブルージェイズ(ワールドシリーズ敗退)
2025年のいい流れはオフにも持ち込めるか
4月9日にウラディミール・ゲレーロJr.と14年、5億ドル(約775億円)の延長契約を結んだことは、球団の最重要選手を長期的に確保しただけでなく、フランチャイズ全体の空気を一変させたように見えた。契約発表の日から、ワールドシリーズ第7戦での胸が締め付けられる敗戦まで、ほぼすべてが順調に運んだ。
ただし、オフは現実を突きつける期間にもなり得る。2025年開幕前までブルージェイズを悩ませていたFA市場での不満は今季は表面化しなかったが、今後数カ月で再燃する可能性がある。とりわけ、スター遊撃手ボー・ビシェットと再契約できない場合はなおさらだ。
シアトル・マリナーズ(ア・リーグ優勝決定シリーズ敗退)
2026年の打線はどれだけ入れ替わるか
フリオ・ロドリゲス、カル・ローリー、J.P.クロフォードを除けば、ここ数年のマリナーズの打線は入れ替わりが続いてきた。今季ようやく勝てる組み合わせを見いだしたが、複数の主力打者がFAになる今オフは再整備が必要だ。
最優先はジョシュ・ネイラーとの再契約だと球団は明言している。ただし、ホルヘ・ポランコと両方を引き留められるだけの資金的な余地があるかは不透明だ。三塁は有望株のコルト・エマーソンら球団内の選択肢で臨む見込みで、エウヘニオ・スアレスの復帰2度目の在籍はここで区切りとなる可能性が高い。
ランディ・アロザレーナも残留が確約されてはいない。左翼手としては26年まで球団保有下にあるが、25年に年俸調停で1130万ドル(約18億円)を得た後で最終年の調停を迎えるため、さらなる昇給が見込まれる。来季にFAを控える状況も踏まえ、今オフにトレード市場での可能性を探る選択肢が浮上する。
ミルウォーキー・ブルワーズ(ナ・リーグ優勝決定シリーズ敗退)
“生産的なトレードの循環”は今オフも続くのか
2022年8月のジョシュ・ヘイダー、2024年2月のコービン・バーンズ、同年12月のデビン・ウィリアムズ。28カ月の間に主力3人を放出し、FAで失う前に価値を回収した。ここまでの経過を見る限り、この方針に異論の余地は小さい。
これらのトレードはいずれも“オールスター級”の見返りを直接もたらしたわけではないが、遊撃のジョーイ・オルティス、三塁のカレブ・ダービン、現在の有望株29位ブレイク・バーク、そして球団に残る有望な投手コンビ(D.L.ホール、ロバート・ガッサー)を獲得する結果になった。さらに、ヘイダー放出で得た駒の1人、エステウリー・ルイスは、その後の三角トレードでオールスター捕手ウィリアム・コントレラスを呼び込む原資にもなった。
一方でブルワーズは勝ち続けている。2025年はナ・リーグ中地区3連覇を達成し、球団記録の97勝でリーグ優勝決定シリーズ進出に到達した。
こうした前提、そして先発投手の育成と層の厚みを踏まえれば、今オフにエース右腕フレディ・ペラルタのトレードを探る展開は不思議ではない。29歳のペラルタは、球団が2026年の年俸800万ドル(約12億4000万円)の契約延長権を行使しており、保有期間はあと1年残っている。
デトロイト・タイガース(地区シリーズ敗退)
26年へスクーバル中心に勝負か、トレード検討か
今オフのトレード候補として挙がるエースといえば、タリク・スクーバルの名前が真っ先に挙がる。保有期間が残り1年という事情から、タイガースが放出の可能性を探っているという噂はすでに広がっている。スクーバルは、ア・リーグのサイ・ヤング賞を2年連続で受賞したばかり。26年オフにFAとなれば、山本由伸がドジャースと結んだ12年3億2500万ドル(約502億円)を上回る規模を目指すと見られる。
タイガースがスクーバルの引き留めに自信を持てないなら、今オフのうちに大型パッケージで放出することが、球団の将来にとって理にかなうという見方は成り立つ。一方で、エースを手放せば、26年に再び10月へ戻る可能性は確実にしぼむ。スクーバルを残す場合は、翌年に優勝争いを現実の目標にするため、どこまで踏み込んで戦力を上積みするのかが問われる。難しい決断が、このオフシーズン全体を覆う。
シカゴ・カブス(地区シリーズ敗退)
先発の柱を加えられるか
カブスは2018年以来の充実したシーズンを送ったが、手放しで喜べる状況ではない。まずカイル・タッカーがFAとなり、シカゴ残留より移籍の可能性が高い。加えて、先発ローテは10月に弱点を露呈した。新人ケイド・ホートンが肋骨の骨折で離脱した影響もあったが、仮に健康だったとしても、他の先発陣容では勝ち上がるのは難しかっただろう。
今永昇太がクオリファイングオファー受諾で残留するかに関わらず、カブスには打たせて取るタイプの投手陣に空振りをもたらせる先発の柱が必要だ。先発陣は2025年、プレーオフ進出チームで最も低い奪三振率20.5%にとどまり、全体でも下から8番目だった。タッカー流出は痛手だが、26年のワールドシリーズ制覇という観点では、先発ローテの立て直しの方がより大きな懸案と言える。
ニューヨーク・ヤンキース(地区シリーズ敗退)
ベリンジャー再契約で継続路線か、それともより大きな一撃を狙うか
コディ・ベリンジャーがヤンキースにもたらした影響は大きい。フアン・ソト流出の直後にカブスから加入したベリンジャーは、打っては29本塁打、OPS .813、守っては外野の3ポジションすべてをこなし、2025年はフィールド・ラン・バリューで「+9」を記録した(平均的な外野手よりも約9点を防いだ)。FAで引き留めても非難される余地はない。
ただし、遊撃はアンソニー・ボルピー、三塁はライアン・マクマホン、一塁はベン・ライスを起用する方針。ボー・ビシェット、アレックス・ブレグマン、ピート・アロンソ級の大物FAで置き換える考えがないのなら、打線を劇的に底上げする最善策は、ベリンジャーをより大きな名前で置き換えることかもしれない。外野手の中でベリンジャーは最上位の一人だが、選択肢は多くない。それでも特に狙える名前が一つある。カイル・タッカーだ。
フィラデルフィア・フィリーズ(地区シリーズ敗退)
攻撃陣は現状維持か、それともテコ入れか
フィリーズは岐路にある。2022年のワールドシリーズ進出以降も有力候補ではあったが、再び大舞台には戻ることができていない。直近2年は地区シリーズ敗退だ。
デーブ・ドンブロウスキー編成本部長は、現状を保つか打線を大幅に組み替えるかの決断を迫られている。FAでは捕手J.T.リアルミュートの再契約が有力視され、左翼は有望株ジャスティン・クロフォードに任せる案がある。それでも右翼、三塁、DHの3枠は未解決のままだ。
三塁のアレック・ボームと右翼のニック・カステヤノスは2026年も球団保有下にある。ただ、ポストシーズンで3年連続で結果を残せていない現状を踏まえると、この2ポジションは上積み余地が大きく、しかも今オフのFA市場ではいずれも有力どころが揃っている。一方でその道を選べば、今季56本塁打でナ・リーグMVP投票2位のDH、カイル・シュワーバーと決別する可能性もある。
ボストン・レッドソックス(ワイルドカードシリーズ敗退)
デバース放出は、派手なオフの布石になるか
近年は比較的静かなオフが続いたが、今オフは方針を変え、まず12月にエース左腕ギャレット・クローシェをトレードで獲得し、2月にはアレックス・ブレグマンと契約。アロルディス・チャプマンの補強や有望株ローマン・アンソニーの有望なデビューもかみ合い、2021年以来のポストシーズン進出につながった。
その一方で、今後の編成に影響し得る大きな“引き算”もあった。6月にラファエル・デバースをジャイアンツへ電撃トレードし、11年3億3100万ドル(約512億円)の大型契約の残りも動かした。浮いた原資の一部は、8月にアンソニーと結んだ8年1億3000万ドル(約201億円)の延長に充てられたとみられるが、ブレグマンがオプトアウト(契約破棄)した現状を踏まえても、なお戦力上積みのための予算余力は小さくないはずだ。
GM会議でのクレイグ・ブレスロー編成本部長の発言からは、最優先が打線の核となる強打者(ブレグマン再契約、もしくはピート・アロンソら別の大物FA)と、クローシェとブライアン・ベイヨの間に投げる先発2番手であることがうかがえる。26年にもう一段跳ね上がるには、その両方が必要になりそうだ。
サンディエゴ・パドレス(ワイルドカードシリーズ敗退)
先発ローテーションをどう埋めるか
ディラン・シース、マイケル・キング、ネスター・コルテスはFA。ダルビッシュ有は右肘手術で2026年は全休。トレード期限にはスティーブン・コレックとライアン・バーガートも放出した。6人で今季の先発は合計89試合を占めており、今オフの最優先事項が先発投手の補強であることは明白だ。
一方で、ニック・ピベッタはキャリア最良のシーズンを送り、181回2/3で防御率2.87、190三振を記録して来季も戻ってくる。ジョー・マスグローブもトミー・ジョン手術で2025年を欠場したが、復帰予定だ。ただし、その先が薄い。ランディ・バスケスは今季133回2/3で防御率3.84。ただし、FIP4.85(守備の影響を除いて三振・四球・本塁打で投手の責任失点を推定する指標)とxERA5.34(打球速度や角度などの質から見た予測防御率)はいずれも防御率を上回っており、内容面では厳しめの評価になっている。ほかの先発候補には左腕JPシアーズ、ナックルボーラーのマット・ウォルドロンがいる。救援の1人、メイソン・ミラーを先発に転向させる案を探る可能性もある。
クリーブランド・ガーディアンズ(ワイルドカードシリーズ敗退)
今オフ、打線に大型補強はあるのか
2025年の歴史的な大逆転の陰で、打線の課題は残った。レギュラーシーズン終盤を48勝26敗で駆け抜け、ア・リーグ中地区を制した期間でも、1試合平均得点は4.48、打率.228、出塁率.298、長打率.388にとどまった。続くワイルドカードシリーズではタイガース相手にOPS .583と苦戦した。
ホセ・ラミレスは依然として一級だが、援護が必要だ。チームでOPS+が96を上回ったのはラミレス(137)とカイル・マンザード(110)の2人のみ(打席50未満の選手を除く)。2025年に打席75以上の打者17人のうち、OPS+が80以下だったのは11人で、これは119敗のロッキーズ(12人)に次いでワースト2位だった。
一方で、球団の近年の動きからすると、外部で大物を獲るより内部での解決を優先する傾向が強い。過去3年間のオフで目立つ打者の補強はジョシュ・ベルのみ。2025年開幕前にはカルロス・サンタナと契約したが、それも主力のジョシュ・ネイラーを放出して一塁を空けた後だった。
シンシナティ・レッズ(ワイルドカードシリーズ敗退)
今オフ、大砲を思い切って補強するのか
2025年は2013年以来となる(2020年の短縮シーズンを除く)ポストシーズン進出を果たしたが、打線は物足りなかった。125打席以上の打者が14人いた一方で、OPS+が109を超えた選手はゼロ。総得点はMLB全体14位だった。
レッズには少なくともスター級打者の上積みが必要だ。地元オハイオ州ミドルタウン出身のカイル・シュワーバーは理想的な適材だが、次の契約は球団のFA史上最高額を大きく上回る可能性が高い。参考までに、球団記録は2020年のニック・カステヤノス、マイク・ムスタカスの各6400万ドル(約99億円)で並ぶ。
この路線が難しければ、先発陣の厚みを生かしてトレード市場で強打者を狙う選択肢もある。一方で、将来エース級の資質を持ちながら健康面の不安を抱えるハンター・グリーンを放出する案は、現時点では現実的ではない。
