【メッツ6−1パドレス】ニューヨーク/シティーフィールド、9月18日(日本時間19日)
パドレスとメッツの3連戦は、ポストシーズン野球の前哨戦のようだった。 そして、もしかするとパドレスは、この経験をロードでのワイルドカード・シリーズ(3戦先勝方式)で生かせるかもしれない。どうやらその展開に向かっているように見えるからだ。
パドレスは3連戦を1勝2敗で終え、この試合は6−1で敗れた。試合終了時点でドジャースとは2.5ゲーム差に広がり、しかもドジャースがタイブレークの優位を握っている(162試合が終わり勝敗で並んだ場合は、直接対決で勝ち越した方が上位)。一方、カブスはワイルドカード首位を独走している。
ナ・リーグ西地区の優勝争いで予想外の展開がない限り、パドレスは敵地でポストシーズンをスタートする運命にありそうだ。おそらくはリグレーフィールドでのカブス戦になるだろう。ドジャースが最近調子を落としたことで、パドレスには19年ぶりの地区優勝を狙うチャンスが開けたものの、その機会を生かすことができなかった。
「間違いなくチャンスを逃したね」とフェルナンド・タティスJr.は語った。
「努力不足とは言わないよ。僕たちはすべてを出し切っているから」
その言葉どおり、この試合でも全力を注いだ。マイク・シルト監督は、もともと積極的なリリーフ起用で知られるが、この日は今季で最も思い切った采配をした。右腕ランディ・バスケスがわずか48球で2回1/3を無難に投げ終えたところで、シルトはベンチを出てビジターブルペンを指さし、投手交代を指示した。
10月の試合(プレーオフ)でしか見られないような采配だった。だが、この日のパドレスのブルペンは比較的フレッシュだった。しかもチームはポストシーズン進出目前(最短で20日にも決定する可能性があった)。一方で、左打ちのブランドン・ニモが一、三塁の場面で打席に控えていた。左腕ワンディ・ペラルタはゴロを打たせる傾向が強い。
「実際、僕にとってそれほど複雑な決断ではなかった」とシルト監督は試合後に語った。「思いどおりにはいかなかったけれどね。昨夜も話したが、これはプレーオフのような雰囲気の試合だ。左投手の方がハマりやすい打線でもあるし、もちろんランディを信頼している。あの場面では、イニングを切り抜けて試合をそのままの状況に保つためのベストな対戦を選んだまでだ」
しかし、その采配は裏目に出た。しかもあっという間に。ペラルタの投じた1ボール2ストライクからのチェンジアップが甘く入ると、ニモがそれを捉えてタティスの頭上を越え、右翼ブルペンへ運んだ。メッツが一気に4点リードを奪い、その後逆転は許さなかった。
「まさに最悪のシナリオが起きてしまった」と指揮官は語った。
この采配は、バスケスの起用法にあらためて注目を集めることになった。今季ほとんどの登板で安定した投球を続けてきたが、チームは試合終盤の深いイニングまで任せることがほとんどなかった。バスケス自身は、そうした判断に不満はないと強調している。とはいえ、先発投手であれば誰しも長いイニングを投げたい、という思いが本音だ。
「もっと長いイニングを投げたかったです。でも、それは監督の決断ですから」とバスケスは通訳のホルヘ・メルロスを通じて語った。
シルト監督が早めの交代を決断した要因の一つとして挙げたのが、パドレスのポストシーズンに向けた立ち位置だった。5月ならまず選ばない采配であり、ブルペンが消耗している状況でも選ばなかっただろう。だが、わずかな地区優勝の可能性にすがり、同じくプレーオフ争いをしている相手と戦うこの場面では、勝負に出るタイミングだった。
「このチームは地区優勝を狙っている。そして、いま自分たちが地区で2位にいることも分かっている」とシルトは語った。「現状どうかといえば、2.5ゲーム差をつけられていて、しかもタイブレークの権利もない。それが事実だ」
望んでいた現実ではないが、過酷すぎる状況でもない。ここ数日でパドレスがポストシーズン進出を決めることはほぼ間違いない。現在、ワイルドカード争いで4位のダイヤモンドバックスに対して6ゲーム差をつけており、残り試合は9だ。
地区優勝は可能性が低いものの、まだ望みは残っている。もし追い上げのチャンスがあるとすれば、それは19日(日本時間20日)からシカゴで戦うア・リーグ中地区最下位、ホワイトソックスとの対戦だろう。もっとも、仮に地区優勝を果たしても、プレーオフ第1ラウンド、ワイルドカード・シリーズ(3回戦制)の特典はついてこない。
その権利はフィリーズとブルワーズが手にする公算が大きい。したがって、パドレスが現実的に目指すのはホームでのワイルドカード・シリーズだ(カブスを勝率で上回ること)。今季ペトコパークでの戦いぶりを考えれば十分に価値のある目標だが、最終目標ではない。
こうした状況を踏まえ、タティスは「今週のシリーズが10月の野球のようだった」という見方に少し異を唱えた。9月中旬の大事な試合? それなら分かる、と。
「誰と戦っているかは分かっていた」とタティスは語った。「でも、プレーオフシリーズのようには感じなかった」。
そして一言、こう付け加えた。
「まだ、ね」。
